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名無しさんからの取材リクエスト

「難民」と「移民」、一体何が違うの?



「難民」と「移民」、何が違う? 「簡単なように見えて色々な解釈」

シリアなどからの難民受け入れがヨーロッパ各国で議論を呼んでいます。ところで、そもそも「難民」と「移民」ってどう違うのでしょうか。

スロベニアから列車で山を越え、オーストリア南部フィラハに到着した難民の母子
スロベニアから列車で山を越え、オーストリア南部フィラハに到着した難民の母子 出典: 朝日新聞

目次

取材リクエスト内容

ニュースで難民申請が過去最多と報じられましたが、その一方、難民認定はあまり増加していないとのこと。
一体と難民で日本に住むことと、移住して日本に住むことの違いは何でしょうか? 名無し

記者がお答えします!

 シリアなどからの難民受け入れがヨーロッパ各国で議論を呼んでいます。ところで、そもそも「難民」と「移民」ってどう違うのでしょうか。「簡単なように見えて実は色々な解釈ができます」。日本で難民支援あたっている団体に聞いてみました。

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「移民」「難民」 共通すること・異なること

 日本も加盟する「難民条約」では「人種や政治的な理由で迫害される恐れがあり母国を逃れた人」を難民の定義としています。

 しかし、認定NPO法人「難民支援協会」(東京)広報部コーディネーターの田中志穂さんは「『移民』『難民』という定義は簡単なように見えて実は色々な解釈ができます」と話します。「一つの考え方」として、「国境を越えて国外に移動する人を移民とすると、難民もその中の一グループと言える」と田中さん。確かに、言葉や環境が異なる移動先での経験は、移民・難民に共通する部分が多いと思われます。

 ただ、出国するにいたった理由は違います。「難民は命の危険があって母国を逃れざる得ない人たち。強制的に移動を強いられるという点は、移民と異なります」

バスから降りて書類のチェックを受ける若い難民の夫婦。赤ちゃんを抱いていた=オーストリア南部カラワンケン・トンネル、喜田尚撮影
バスから降りて書類のチェックを受ける若い難民の夫婦。赤ちゃんを抱いていた=オーストリア南部カラワンケン・トンネル、喜田尚撮影 出典: 朝日新聞

 しかし、これも簡単に言い切れる話ではないようです。田中さんは言います。


 「『難民の人たちは主体性がまったくなく、ただ強制的に移動させられた』と単純に解釈できる訳ではありません」

 「今のシリア難民の方々に見られるように、少ない選択肢の中でもよりよく生きて行くとか、子どもによりよい教育を受けさせるために自ら選んでドイツを目指すとか、スウェーデンを目指すとかといった主体的な側面もあります。そういった意味で、必ずしも移民と難民はきれいに区別できるものではなく、一続きになっている現象と思います」

加盟国の義務

 法的な観点から考えた場合、難民条約の加盟国の「義務」が浮かび上がってきます。田中さんは「人道的役割」について、次のように説明します。


 「難民の人たちは自分の生まれた国籍国から迫害を受けているということが一般的にあります。本来ならその国の国民として何かあったらその国に守ってもらえるというのが国民としての権利であったわけです。それが難民の場合は得られないので、別の国が難民を保護してあげるということをしてあげなければならない。この点が法的に見た場合の移民との違いです」

 「難民条約に入っている国々は、自国を追われた難民の方々を、条約に入っている国として保護をするというのが義務になっているわけです。日本も難民を受け入れるべきか否かというよりも、条約国として難民を受け入れる義務があると考えます」

 「また、国際社会の一員として、安心や安全を提供できる日本社会が難民を保護し、受け入れるという人道的役割を果たしていくことも期待されています」

国内の難民申請は過去最多

 国内の事情を見てみましょう。昨年、日本で難民申請をした外国人の数は過去最多の7586人。一方で、難民認定は27人と低い水準のままです。

難民認定申請と認定数などの推移
難民認定申請と認定数などの推移 出典: 朝日新聞

 難民認定された人は制度的には「定住者」としての資格がもらえるので、母国にいる家族を呼び寄せることができます。「迫害の待つ母国に送り返されるかもしれない恐怖から解放され、安心して生活することができます。また、国民健康保険への加入や仕事の紹介、半年間の日本語学習プログラムなど、日本で生活していくにあたって必要なサービスを受けられるようになります」と田中さん。

難民に認められないと…

 ただ、上の数字から分かるとおり、難民認定が下りるのはごくわずか。田中さんは、日本で難民申請をした人の生活には「先の見えない厳しさ」があると指摘します。

 「日本では難民認定を受けることも難しいですし、経済的な自立可能性の面から家族を呼び寄せることも非常に労力をかけないと難しいのが現実です。6年、7年と時間をかけてようやく呼び寄せることができた人や、もう諦めてしまった人もいます」

東京スカイツリーが見える公園のベンチで休む難民申請中の男性。木製のベンチの中央にはひじ掛けがあり、横になることはできない=2015年
東京スカイツリーが見える公園のベンチで休む難民申請中の男性。木製のベンチの中央にはひじ掛けがあり、横になることはできない=2015年 出典: 朝日新聞


 「難民として認められなかった場合、日本に在留する資格がないため、母国に送り返されてしまいます。実際には難民である人が、日本で不認定となって送り返された場合、それはつまり迫害の待つ母国に帰るということです。『帰国するということは、つまり死ぬことだ』という難民も少なくありません」

 「過去には、難民不認定となり送還された方の遺体が母国で見つかったこともあります。 一定の期間内に再申請をした場合、結果が出るまでの間は日本にいることが許可されますが、その間に働くことができない場合もあります」

 一方、急増する日本での難民申請の背景には、就労や定住目的から、難民でないのに申請する外国人が増えているためとの指摘もあります。

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