IT・科学
道路の穴、アプリで直る?相次ぐ導入自治体、犬フン被害に対応も…
公共の道路にまつわるトラブルについて、気づいた市民にスマホアプリで通報してもらう仕組みを導入する自治体が増えてきています。
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公共の道路にまつわるトラブルについて、気づいた市民にスマホアプリで通報してもらう仕組みを導入する自治体が増えてきています。
道路にできた穴、破損したカーブミラー、外れそうになった側溝のフタ…。そんな公共の道路にまつわるトラブルについて、気づいた市民にスマホアプリで通報してもらう仕組みを導入する自治体が増えてきています。「迅速な補修工事につながっている」と手応えを感じている導入自治体。利用者の市民からも「行政に声が届く感じが凄い」といった声が出ています。
相模原市は昨年4月、市内のIT企業と共同開発した道路通報アプリ「パッ!撮るん。」の運用をスタート。昨年末までにアプリは1768回ダウンロードされ、道路に関係する通報は269件ありました。
寄せられるのは「車道に穴がある」「段差がある」「ガードレールが壊れている」といった情報です。通報の手順は、
①スマホのカメラ機能で、壊れている箇所の近景・遠景の写真計2枚を撮影
②表示されるグーグルマップで通報場所を指定
③破損状況を選択肢から選ぶ
④Eメールで送信
と簡単です。市路政課の担当者は「大規模な修繕にならなければ、通報を受けてから2~3日で対応できています。以前だと『大きな穴』との通報を受けても実際にどれほどの大きさなのかは個人差があって分かりにくく、どのような対策が必要かすぐに判断できないこともありました。このアプリでは画像と位置情報があるので、迅速な対応につながっています」と手応えを感じている様子です。
ツイッターでは、4年も放置されていたという道路の穴を「試しに通報した」と言う人が「3日で修繕された!行政に声が届く感凄い」と投稿。6千件以上リツイートされ、「素晴らしいシステムだ」などのコメントが相次いでいます。
こうしたICT(情報通信技術)を活用した通報システム、先鞭をつけたのは千葉市の「ちば市民協働レポート」(ちばレポ)です。同市は13年から実証実験を始め、14年9月に本格運用を始めました。
熊谷俊人市長は14年の朝日新聞の取材で「市民のエネルギーと英知を生かせる街づくりをしたい。多くの方々に導入して頂き、行政との関係を抜本的に変えるツールにしていければ」と話しています。
1995年、神戸市で阪神大震災を経験した当時高校2年生の熊谷さん。道路などのインフラの整備がいかに重要かを知ったそうです。「阪神大震災で気づかされたのは、道路や水道などのインフラという無機物も、いろんな物語のうえに存在しているということ。ちばレポを浸透させることで、街の歴史や変化の過程を全部『見える化』したいんです」
静岡県浜松市は昨年4月から通報アプリ「いっちゃお!」を運用開始。道路のトラブル以外に河川や冠水に関する情報を受け付けています。山口県宇部市が始めたアプリ「ネイティブ宇部」は、「公園施設の異常」や「ごみの不法投棄」の情報も収集。大阪府泉佐野市の「まちレポ泉佐野 おせチョ~」は「犬のフン被害」も対象にしています。泉佐野市の担当者は「通報があった場合は職員2人が駆けつけ、現場確認をしてから委託先に清掃してもらっています」。
上の例はいずれも自治体が独自にシステム開発したものですが、複数の自治体に通報システムを提供する企業もあります。
「FixMyStreet Japan」(フィックス・マイ・ストリート・ジャパン)というサイト・アプリを運営している、札幌市のIT企業「ダッピスタジオ」。サイトには「公務員だけじゃない。いつでも誰でも自分の町を良くできる。」とのキャッチコピーが掲げられていて、「竹が倒れそうになっている」「防犯灯の電球が切れている」といったレポートが各地のユーザーから2400件以上寄せられています。
一般ユーザーがレポートを投稿するのは無料。自治体がお金を払って「自治体機能」を導入すると、レポートに対して職員が対応状況をコメントしたり、市民からのレポート投稿時にメール通知を受けたりできるようになります。
同社によると、愛知県半田市・大分県別府市・福島県郡山市がこうした自治体機能を導入。北海道室蘭市などが導入を検討しています。同社の川人隆央代表(40)は「市域が広くて道路も多く、なかなか道路の瑕疵(かし)にすぐ対応することができないといった声が自治体から出ています。ふだんからその道路を使っている人たちの情報が集まることで、そうした問題点が解消できるのでは」と話しています。
同社には、通報システムを開発したくても予算が限られているといった事情を抱える自治体からの問い合わせが多く寄せられているそうです。
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