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ザハ競技場、64年五輪の写真1千枚で再現 インパクト+批評を表現

1964年の東京五輪の過去写真を使って、2020年の東京五輪の風景を再現する。そんなモザイクアートを、首都大学東京と宮城大学の学生が作り上げました。

1千枚の写真で作ったザハ競技場のモザイクアート
1千枚の写真で作ったザハ競技場のモザイクアート

目次

 1964年の東京五輪の過去写真を使って、2020年の東京五輪の風景を再現する。そんなモザイクアートを、首都大学東京と宮城大学の学生が作り上げました。約1千枚の写真、2億画素、1枚のファイルサイズは100メガバイトになります。幻となった、新国立競技場のイメージ図を半世紀前の写真で表現するなど、批判精神も合わさったプロジェクトになりました。

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半世紀前の五輪、次の五輪へ

 モザイクアートを作ったのは、首都大学東京ステムデザイン学部(田村賢哉さん、 姜丹琦さん)と、宮城大学事業構想学部(木島慧太さん、平実優季さん、剱地一見さん、ディンフンチュンアンさん、方尚さん)の学生7人です。朝日新聞が提供した1964年の東京五輪の写真を使っています。

 両大学と慶應義塾大学の学生が取り組んだプロジェクト「64年五輪の東京の記憶を2020年につなぐ」の作品として発表されました。

モザイクアートで作った1964年の東京五輪の公式ポスター第2号を発表する学生たち
モザイクアートで作った1964年の東京五輪の公式ポスター第2号を発表する学生たち
モザイクアートの選手を拡大。1千枚の1964年の写真で再現されている
モザイクアートの選手を拡大。1千枚の1964年の写真で再現されている

「隠されたエピソード、表現したい」

 「1964年の東京五輪には、開会式の写真やポスターなど、象徴的な場面があります。でも、その場面に至るまでにはたくさんの隠されたエピソードがあるはずです。それを表現したかった」

 首都大学東京の田村賢哉さんは、制作の狙いをそう語ります。

 メンバーがこだわったのは写真の枚数です。1千枚を超える写真をすべて使うことで、モザイクアート自体にメッセージ性を持たせました。

1千枚の過去写真を使って作った、取り壊された国立競技場のモザイクアート
1千枚の過去写真を使って作った、取り壊された国立競技場のモザイクアート

パソコン4台で並列処理

 メンバーは、まず象徴的な場面を写した写真を選びました。次に、見本となる写真に合うよう写真を並べるプログラムを使って、自動的に1千枚の写真を選びます。パソコンは4台を同時に使って、半日かけて並列処理をしました。

 並べただけでは、見本の色合いと違ったりするため、画質も調整しています。

モザイクアートの聖火台付近を拡大すると、様々な写真が使われていることがわかる
モザイクアートの聖火台付近を拡大すると、様々な写真が使われていることがわかる

ザハ案、過去写真で再現

 こうしてできたのが、1千枚のアーカイブ写真を使って作り上げた旧国立競技場のモザイクアートです。建設費などの問題で計画が撤回されたザハ・ハディド氏のイメージ図も、1964年の写真で再現しました。作られることのない競技場を過去の写真で表現した作品からは、五輪に対するイメージを揺さぶるメッセージを感じることができます。

 膨大な写真をまんべんなく目にできるように、モザイクアートには小さな文字も隠されています。鑑賞者は、文字を探しながら、作品の細かい部分も注意が向くような仕掛けになっています。

 講評した写真家の大山顕さんは「五輪をテーマにしながら、批評性も獲得している。ポスターの裏に様々な物語があるというメッセージにぐっときた」と絶賛。田村さんは「全体を見渡せながら、拡大して楽しむこともできる。テクノロジーによって、そんな表現が可能になりました。次は、鑑賞者が1枚1枚、写真を貼ってもらうような企画も考えていきたい」と話していました。

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