お金と仕事
すべて手描き!6328枚の黒板アート動画 作り手の思いや苦労とは
チョークを使って黒板に描く「黒板アート」。現役の美大生ら34名が描いた6328枚をつなぎ合わせてつくった動画が話題になっています
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チョークを使って黒板に描く「黒板アート」。現役の美大生ら34名が描いた6328枚をつなぎ合わせてつくった動画が話題になっています
チョークを使って黒板に描く「黒板アート」。現役の美大生ら34人が描いた6328枚をつなぎ合わせた動画が話題になっています。かかった時間は2623時間。受験生への応援メッセージを込めたという制作者は、こう話します。「誰かに頑張れと言うときには、その頑張ってる誰かと同じぐらい頑張ってエールを送らないと、気持ちは伝わらない」。制作の狙いや苦労した点などを詳しく聞きました。
動画の主人公は受験直前の女子高生。緊張で自信を失いそうになる中で、黒板に映し出される高校生活や、家族とのやり取りなどを振り返りながら受験に挑むというストーリーです。
大塚製薬のカロリーメイトのCMとしてつくられたもので、受験当日の朝、母が娘に手渡す場面がしっかり登場します。
動画制作には、東京藝術大や多摩美術大などの現役学生に加え、「れなれな」さんも参加。ツイッターにアップした黒板アートが話題となり、直木賞作家・宮部みゆきさんの「過ぎ去りし王国の城」(角川書店)の装画も手がけました。
なぜ黒板アートだったのか? 制作する上で大変だったことは? 今回の動画でシニアクリエイティブディレクターとコピーライターを務めた「catch」の福部明浩さんに話を聞きました。
――なぜ黒板アートだったんですか
「とにかく受験生を全力で応援したい、頑張ってきた日々を肯定したいという思いがありました。かといって、頑張ってきた日々を単純に映像にして見せられても、受験生にはつらいだけじゃないか? 大人が都合の良い設定でCMを作っても、どこかウソ臭さが残るのではないか? そんな悩みの中で、最近『黒板アート』が注目されていたことを思い出したんです」
――黒板アートのメリットとは
「黒板は勉強のカンバスであり、卒業式やイベントなどで学生や先生たちがメッセージを書くカンバスでもあります。何か特別なメッセージを込める場所にはピッタリですし、黒板アートで描けば、努力の日々が良い具合に抽象化されて、見ている受験生が自分と重ね合わせやすくなるかもしれないと思いました。しかも動く黒板アートは誰も見たことがないはず。大変な作業になるのは目に見えていましたが……」
――どうやってメンバーを集めたんですか
「大学の広報に公募をかけてもらいました。参加が決まった学生に友達を紹介してもらったり、我々制作陣の後輩にも声をかけたり。集まったメンバーに、CMに出演する平祐奈さんの絵を黒板に描いてもらい、オーディション形式で選びました」
――ストーリーはどうやって決めたんですか
「昨年、受験生だった大学1年生たちにインタビューし、今のリアルな受験生の気持ちを聞きました。実際に彼らの声を聞いてみると、受験勉強中はケータイの電源を切ったり、紙の辞書を使っていたり。本質的には自分たちのころと、あまり変わってない印象でした」
――描かれているのは受験期間中の母と娘です
「インタビューの中で印象的だったのは、『受験生の時、母親に結構当たっちゃいました』という女子たちの声です。『この時期、当たらない子なんていないんじゃないかな~』とも言ってました。そこで、母と娘の受験勉強という切り口で、時代に関係ない普遍的なストーリーを作ろうと思ったんです」
――制作にあたって苦労した点は
「何と言っても、『動く黒板アート』という企画の難しさです。求められる精度と、枚数の多さが尋常ではありません。これに関しては学生や、れなれなさんたちの頑張り以外の何ものでもありません。黒板アートは、立った状態で描いてもらっていたので、足がパンパンになったそうです。『疲れるのは手じゃないんだ!』と驚かされました」
――思いがけず、うまくいった点などありますか
「実写の映像を撮るときは、『奇跡の瞬間』みたいなものが偶然フィルムに収まることはあるのですが、今回はそれが一切ありません。意図して描いたことしか、絵になってくれません。そういう意味で、思いがけずうまくいったことはなかったかもしれません。ただ、世の中に出した後の、CMに対する好意的な反応は、思いがけずうまくいったことかな、と思います」
――今回の動画で伝えたいメッセージは
「誰かに頑張れと言うときには、その頑張ってる誰かと同じぐらい頑張ってエールを送らないと、気持ちは伝わらないのではないか、と言うことです。今回、34人の学生たちは、いま頑張っている受験生たちと同じくらいの熱意と集中力で、黒板アートを描いてくれました。きっとそのことは、描かれたもの以上の熱量をもって伝わったと思います。すべてを出し切ったあとの『底力』みたいなものが人を動かすんだなと、私たちに気づかせてくれました」
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