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感動

岩手発の泣ける動画、衰えぬ人気 広告賞を得て続編も 作り手に聞く

岩手で音楽教室などを手がける会社が公開したCM動画。1年前の公開直後から「泣ける」と話題になり、いまだに人気が衰えません。

父親のピアノ演奏に涙する場面
父親のピアノ演奏に涙する場面 出典: 動画「TOSANDO music CM 披露宴編」より

目次


 岩手で音楽教室などを手がける会社が公開したCM動画。娘の披露宴で父親が突然ピアノを弾き始めるというストーリーで、1年前の公開直後から「泣ける」と話題になり、いまだに人気が衰えません。今年3月には、アジア太平洋地域の広告祭で銀賞を受賞。続編として、この動画をもとにしたドキュメンタリーも作られました。手がけたのは、いずれも同じ地元の制作会社。「地方広告と思われない、誰の心にも届くCMをつくりたい」。そんな思いが込められていました。

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披露宴で父が突然ピアノ演奏


 動画は、ピアノとは縁遠いはずの新婦の父が、披露宴で突然演奏する場面から始まります。曲はパッヘルベルの「カノン」。新婦が小さいころ、今は亡き母親と一緒に練習した思い出の曲です。いぶかしげに父を見つめていた娘の表情は、みるみる崩れていきます。

 父のぎこちないメロディーにあわせて、母娘がピアノを演奏していたころの回想や、夜の音楽教室で父がピアノを学ぶシーンが挿入されます。最後にあらわれるメッセージは「音楽は、言葉を超える」。


第二弾はドキュメンタリー


 動画を公開したのは、岩手で音楽教室などを手がける「東山堂(とうさんどう)」。それまで大人の入会者は100人ほどだったのが、一気に400人にまで増えたそうです。

 音教事業部長の鹿糠(かぬか)幸康さん(36)は企画の意図をこう話します。「音楽教室のCMというと、入った後の様子を描いたものがほとんど。あえて入る前の物語にすることで、そんなに敷居は高くないんですよと訴えたかったんです」

 昨年3月の公開直後から、ネットを通じて話題に。その後も、マツコ・デラックスさんが出演する番組などで取り上げられ、人気が広がっていきました。YouTubeでの再生回数は250万回を超えました。

 今年2月には続編も公開。父親が内緒で練習したサックスを息子の披露宴で演奏するという内容ですが、前作と異なるのは、演技ではなく実際のサプライズ演奏を映像化したドキュメンタリーである点です。

 主人公は、CM動画を見て東山堂の音楽教室に入会した千葉次郎さん。新郎新婦に内緒で、両家や披露宴会場の協力を得て撮影しました。サックスに合わせて流れるピアノの調べは、実は新婦の妹たちが事前に収録していたものだったという二重のサプライズに、参加者も涙します。

息子の披露宴でサックスを演奏する千葉さん
息子の披露宴でサックスを演奏する千葉さん 出典: 動画「千葉次郎の挑戦」より

岩手でしかできない広告


 これらを手がけたのは地元の制作会社「マエサク」の佐々木昌彦さん(36)。東京の会社で4年間CM制作を学び、地元で同業に就いたものの、会社がつぶれてしまいました。その後、当時の同僚らと立ち上げた会社がマエサクです。

 第1弾のCMは、今年3月にタイであった「アジア太平洋広告祭(ADFEST)2015」のフィルム部門で銀賞を受賞。「音楽をやっている人にも、そうでない人にも、すべての人に音楽のすばらしさを伝えたい。そんな思いでつくった作品で、国際的な賞がもらえたことがうれしいです」と話します。

「アジア太平洋広告祭2015」の授賞式に参加した佐々木昌彦さん(中央)=佐々木さん提供
「アジア太平洋広告祭2015」の授賞式に参加した佐々木昌彦さん(中央)=佐々木さん提供


 制作する際、依頼主である東山堂の鹿糠さんから伝えられたのは「音楽のすばらしさ、学ぶことのすばらしさを伝えてほしい」ということだけ。

 佐々木さんが「その内容だと東山堂だけでなく、他の音楽教室のお客さんも増えかねませんが」と聞くと、鹿糠さんは「盛岡が盛り上がるなら、それでいいです」と答えたそうです。

 このおかげで、最後に企業名が出るまで何のCMなのか分からない、広告っぽさを感じさせない動画が完成しました。依頼する側、された側、ともに36歳の2人は、こう口をそろえます。「東京発ではなく、岩手でしかできない広告ができたと思います」

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