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紛糾の安保国会、23年前のPKO重なる 徹夜・怒号・プラカード

安全保障関連法案に対する与野党の攻防が大詰めです。「徹夜国会」も想定されるなか思い出されるのは、安保関連法案の議論で共通点の多いPKO協力法案成立をめぐる「マラソン審議」です。

PKO協力法案を巡り紛糾する参院特別委員会=1992年6月5日
PKO協力法案を巡り紛糾する参院特別委員会=1992年6月5日 出典: 朝日新聞

目次

 安全保障関連法案の審議が参議院で大詰めです。今週中に法案を成立させる方針の自民・公明両党は、参院特別委員会での早期の採決を目指しています。一方、民主などの野党は内閣不信任決議案などを提出し、抵抗する構え。「徹夜国会」も想定されるなか思い出されるのは、安保関連法案の議論で共通点の多い1992年の国連平和維持活動(PKO)協力法案での「マラソン審議」です。

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ヤマ場の特別委採決、92年は徹夜可決

 自衛隊の海外派遣を可能にしたPKO協力法案の審議は、92年6月4日にヤマ場を迎えました。参院特別委の採決を目指す自民・公明・民社(当時)3党に対し、反対の姿勢を崩さない社会(当時)・共産両党。4日午後から始まった審議は再三中断し、採決は日付をまたぎました。事態が動いたのは5日午前3時22分。自民議員が質疑を打ち切る動議を読み上げると、「審議を約束したではないか」「話が違うぞ」などと抗議する社会・共産両党の委員や同僚議員。「質問権を奪うのか」などと委員会室に怒号が飛び交うなか、約20分後に委員長が「動議賛成の諸君の起立を求めます」。自公民3党の委員が起立し、特別委での法案が可決されました。
 

参院本会議のPKO協力法案の採決を見守る大勢の傍聴人=1992年6月9日
参院本会議のPKO協力法案の採決を見守る大勢の傍聴人=1992年6月9日 出典: 朝日新聞
参院国際平和協力特別委員会は、5日未明に自民、公明、民社の3党が国連平和維持活動(PKO)協力法案を、可決した。しかし、社会、共産両党は「無効」とし、国会は緊張が続く。PKO協力法案の大詰めを追った。
 5日午前0時29分 宮沢喜一首相、参院第1委員会室に戻る。
 0・51 下条委員長、委員会の再開を宣言。下条氏は角田義一氏(社会)の質問について「7日間の(国会承認期間の)問題、維持隊(PKF)の問題は、質疑の終了を見て検討する」と表明。社会党委員が「約束が違う」と抗議、下条氏は「今の件は引き続き理事会でも協議し、質問は留保する」と言い直す。
 3・10 喜屋武真栄氏(参院クラブ)が質問の冒頭、下条委員長に「強行採決はしないと約束してほしい」とクギを刺す。委員長は「審議は粛々とやっていきます」と答弁。傍聴席から「答弁になってないよ」とヤジ。
 3・22 合馬敬委員(自民)が質疑打ち切り(終局)動議を読み上げる。社会、共産両党の委員や同僚議員が委員長席に駆け寄り、「審議を約束したではないか」「話が違うぞ」などと抗議。
 3・25 深田肇議員(社会)が「話が違う」と、委員長席の机をたたく。翫正敏委員(社会)が「暴挙」の横断幕で委員長を覆い隠す。角田義一委員(社会)が「質問権を奪うのか」と叫ぶ。
 3・30 衛視約20人が委員長席に近付き、社会党議員に押し戻される。傍聴席から「帰れ」コール。
 3・41 下条委員長が「合馬君の動議賛成の諸君の起立を求めます」と言う。「皆立ってるじゃないか」の声。自民、公明、民社3党の委員が起立し、法案賛成の意思表示。社会党などの議員、傍聴席から「質問させろ」コール。
 3・45 藤井孝男理事(自民)が公明、民社両党に引き揚げを呼びかける。閣僚と自公民各党の委員、委員会室を出る。
1992年6月5日:未明の採決ドキュメント PKO法案参院委可決:朝日新聞紙面から

PKOでは野党が牛歩徹底 1議案に13時間かけた採決も

 その後、6日午前0時半に参院本会議が開かれました。まずは社会、共産両党が提出した参院議院運営委員長の解任決議案への審議。この議案の採決は、反対側が仕掛けた投票箱まで極端にゆっくり歩く「牛歩戦術」によって、20分程度で終わるはずが11時間半以上かかることに。さらに参院特別委員長の問責決議案の採決は13時間かかるなど、2党の抵抗で本会議での徹夜審議は3日連続で行われました。しかし、社会党が8日夜に牛歩戦術をとりやめることを決断。4回目の深夜採決となった9日午前1時57分にPKO協力法案は可決されました。

当時の野党側が入手した、自民党議員が持っていたPKO法案採決のシナリオ=1992年6月5日
当時の野党側が入手した、自民党議員が持っていたPKO法案採決のシナリオ=1992年6月5日 出典: 朝日新聞
国連平和維持活動協力法案(PKO協力法案)は9日未明の参院本会議で、自民、公明、民社3党の賛成多数で可決され、衆院へ送付された。採決は9日午前零時過ぎから。社会党、連合参議院がこれまでの牛歩戦術をとりやめ、共産党が1人5分程度の牛歩をしただけで、同1時57分に、賛成137、反対102で可決、衆院へ送られた。
1992年6月9日:衆院、審議日数で攻防 参院本会議で可決 PKO法案 :朝日新聞紙面から
国連平和維持活動協力法案(PKO協力法案)の処理をめぐって8日未明から参院本会議で行われた下条進一郎参院国際平和協力特別委員長の問責決議案の記名投票は、同日午後2時過ぎに終わった。かかった時間は13時間8分。6日の井上孝参院議院運営委員長の問責決議案の際の11時間半を上回り、「牛歩」時間の新記録を更新した。
1992年6月9日:13時間8分、牛歩の記録を更新 参院PKO本会議 :朝日新聞紙面から

安保法案、与野党の攻防ピークに

 最終的にPKO協力法は92年6月15日に衆院本会議で可決、成立。国会審議に要した時間は衆参合わせて193時間でした。今回の安全保障関連法案は、参院で採決が行われなくても、衆院の3分の2以上の賛成で再議決できる「60日ルール」を使うことができますが、「参院で決着をつけるべきだ」として、自公両党の幹事長らが衆院で再議決しない方針を確認しています。民主党などの野党は、シルバーウィークをはさんだ9月27日の会期末をにらみ、時間切れによる法案の廃案に追い込みたい考えで与野党の攻防がいっそう激しくなっています。

のちのPKO法案の土台となる国際貢献策作りを巡って、社会党抜きで開かれた自公民幹事長・書記長会談。左から市川雄一(公明)、小沢一郎(自民)、米沢隆(民社)の各氏=1990年11月8日
のちのPKO法案の土台となる国際貢献策作りを巡って、社会党抜きで開かれた自公民幹事長・書記長会談。左から市川雄一(公明)、小沢一郎(自民)、米沢隆(民社)の各氏=1990年11月8日 出典: 朝日新聞
安全保障に関する主な法案の国会審議時間
【法律名】1992年 国連平和維持活動(PKO)協力法
【審議時間(時間:分)】衆院  87:41
            参院 105:35
            合計 193:16
2015年4月19日:安保、審議時間の攻防 法案、来月国会で論戦 :朝日新聞紙面から
自公両党の幹事長らが、東京都内で会談し、9月16日の特別委採決で一致した。同月14日以降は参院で採決が行われなくても、衆院の3分の2以上の賛成で再議決できる「60日ルール」を使うことができるが、「参院で決着をつけるべきだ」として、衆院で再議決しない方針も改めて確認した。一方、民主党などの野党は自公両党の方針に反発している。内閣不信任決議案、首相問責決議案を提出する構えで、連休をはさんだ27日の会期末をにらみ、時間切れによる法案の廃案に追い込みたい考えだ。
2015年9月10日:参院本会議、17日採決検討 自公、特別委は16日 安保法案 :朝日新聞紙面から

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