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お金と仕事

死ぬな就活生、内定ゼロでも逆転ある 暇な女子大生さん

300社受けて内定ゼロ。ブロガーの暇な女子大生さんは「社会から全く必要とされていないと感じて自暴自棄になった」と、自らの就活を振り返ります。

自身の就活について語る暇な女子大生さん
自身の就活について語る暇な女子大生さん

 就職浪人して2年間で受けた会社はエントリーも含めて約300社、内定ゼロ。ブロガーの暇な女子大生さん(暇女さん)は「社会から全く必要とされていないと感じて自暴自棄になり、死んでしまおうと思った」と、自らの就活を振り返ります。本当に自分がやりたいことを突き詰めた結果、大学時代に始めたブログから、「文章を書くこと」にたどり着きます。今は「まあ、生活していくだけの収入はあります」と暇女さん。就活生に「死ぬな。人生、諦めなければ何とかなるぞ」とエールを送ります。

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暇な女子大生さん=瀬戸口翼撮影
暇な女子大生さん=瀬戸口翼撮影 出典:死ぬな就活生、内定ゼロでも逆転ある 暇な女子大生さん:朝日新聞デジタル

――就活を振り返ってみてどうでしたか。

 「2年間やりましたが、茶番でしたね。時間とお金の無駄。手当たり次第にエントリーして、説明会に行ったり、面接に行ったり。結局、本気で就職したいと思っていないから、用意できる志望動機や入社後にやりたいことが、薄っぺらいんですよ。見抜かれていたんでしょうね。全然、内定はもらえなかった。『お邪魔しまーす』みたいなテンションで面接に行って、『何しに来たの?』っていう会社側のオーラをすごく感じました。そういう時、選考コストを支払っている会社側にも、ほかの就活生にも罪悪感がありました」

 「とある建設会社の最終面接に呼ばれて、本社のある札幌まで飛行機で行ったときのことです。役員との面接はまあまあうまくいったのですが、最後の社長面接で『あなたにとって働くうえで大事なことは?』と聞かれて、『えーと、過労死しないように会社から自分を守ることです』と答えたら、ブチ切れられて落とされました。ウケ狙いとかじゃなくて素直にそう思ったんです。就活って、就活生が『入れてください。お願いします』というスタンスじゃないですか。それに違和感があった。組織への従順さを、入社前から求められるのって変ですよね」

ペッパーに就活の厳しさについて語る暇な女子大生さん=瀬戸口翼撮影
ペッパーに就活の厳しさについて語る暇な女子大生さん=瀬戸口翼撮影 出典:死ぬな就活生、内定ゼロでも逆転ある 暇な女子大生さん:朝日新聞デジタル

――就職したくないのになぜ就活したのですか。

 「就職するほかに生きていく手段を思いつかなかったからです。大学院に行く、または留学する子以外、みんな当然のように就活していましたし、親の経済的援助からも自立したかった。それに、就職以外でお金を稼ぐ方法を教えてくれる人がいませんでした。リクルートスーツを着て、ヒールを履いて、普段は絶対にしないようなヘアメイクをして『どうせ落とされるんだろうな。あーあ、死にたいな』と思いながら大嫌いな満員電車に乗っていました」

ペッパーに生きることについて語る暇な女子大生さん=瀬戸口翼撮影
ペッパーに生きることについて語る暇な女子大生さん=瀬戸口翼撮影 出典:死ぬな就活生、内定ゼロでも逆転ある 暇な女子大生さん:朝日新聞デジタル

――就活2年目の春に「暇な女子大生が馬鹿なことをやってみるブログ」を始めました。

 「きっかけは就活のストレス解消です。もともと文章を書くことが好きで、小さいころから作家になるのが夢でした。大学2年生のとき山岳部に入っていて、あるとき山行の記録をブログに書くことを任されました。以前は、山登り日誌みたいな事務的なブログだったのですが、私は登場人物にキャラを与えたり、会話や風景描写を脚色したり。物語風の文章にしたり、紀行文風に変えてみたり、いろいろ趣向を凝らして書いていました。評判がよくて、調子づいたというか。やっぱり自分はクリエーティブな仕事の方が向いているんじゃないかと気づき始めました」

 「出版やテレビ、ラジオ、広告、制作会社、芸能事務所など、クリエーターっぽい業種は、小さい会社も含めて受けました。が、全滅。私は誰にも必要とされていないんだな、と社会不適合者の烙印(らくいん)を押された気がして、ぽつーんとした気持ちになりました。じゃあブログを作って就活の悪口でも書くかと。社会に疎外感を感じて、自分を表現する場が欲しかった。自己満足のためでもありました」

 「ブログを始めて半年くらいたった大学5年生の12月、執筆の仕事の依頼が入りました。卒業まで3カ月しかなくて、就職が決まらないし、『マジでやばいなー。このまま行ったらニートかー』と焦っていた時期です。あるEC(電子商取引)サイトの記事広告で、報酬は1万円でした。今振り返ると安い原稿料でしたけれど、自分の才能がお金に換わったことに感動しました。普通の労働って時間をお金に換えることじゃないですか。自分の能力がお金に換わるってクリエーティブな気がして『すごいな。本当にお金もらっていいのかな』って信じられなかった」

ペッパーの発言にうなずく暇な女子大生さん(左)=瀬戸口翼撮影
ペッパーの発言にうなずく暇な女子大生さん(左)=瀬戸口翼撮影 出典:死ぬな就活生、内定ゼロでも逆転ある 暇な女子大生さん:朝日新聞デジタル

 「仕事をくれたwebデザイナーみたいな人に『就職が決まらないんです』と相談したら、『何を言っているの? ブログで生きていけるじゃん。記事広告を書いたり、(グーグルの広告配信サービスの)アドセンスを入れたりすれば』と、教えてもらいました。自分の力で生きていけると誰かに言ってもらえて、うれしかったですね」

 「結局、就職せずに卒業しました。今ではネットメディアなどに連載を書かせてもらったり、イベントに呼んでもらったり。普通に生活できる程度の収入はあります。だけど、社会人になりきれていないような引け目はあります。普通に就職した人たちは、新入社員として社会人のマナーなどを身につける教育を受けるじゃないですか。私にはその機会がないので。常識外れな発言をして怒られたり、編集者に不信感丸出しの態度で接してケンカになったりなどはザラにあります。税金だけはちゃんと払ってますけど」

現在の仕事内容について語る暇な女子大生さん=瀬戸口翼撮影
現在の仕事内容について語る暇な女子大生さん=瀬戸口翼撮影 出典:死ぬな就活生、内定ゼロでも逆転ある 暇な女子大生さん:朝日新聞デジタル

――いま就活生たちを見てどう思いますか。

 「かわいそうだな、苦しそうだなと思います。就活ってダラダラ長いじゃないですか。大学生活のかなりの時間を割かなきゃいけないし、何のために大学に入ったのかわからないですよね」

 「就活って古い体制のままというか、全然スムーズじゃない。いまはこれだけITが進歩しているのだから、会社選びも、例えばアマゾンの『あなたのオススメの商品はこちら』みたいに、『あなたにオススメの企業はこちら』と、紹介してくれれば無駄な説明会に行く必要はなくなるかもしれません。その人のネットでの情報収集の傾向だとか、閲覧しているサイトやページの傾向から、向いている企業を自動でリコメンドしてくれるサービスなんか、簡単にできそうなのに。もっとフランクに、形式張らずに就活ができれば、ミスマッチはなくなると思います」




朝日新聞デジタル動画 1記事用






【動画】暇な女子大生さんから就活生へメッセージ=瀬戸口翼撮影 出典: 死ぬな就活生、内定ゼロでも逆転ある 暇な女子大生さん:朝日新聞デジタル

――最後に、暇女さんにとってプロフェッショナルとは。

 「偉そうに聞こえちゃうかもしれないけど……、今からちょっとカッコイイこと言います。プロのクリエーター(creator)とは困難な状況に陥った時、そこから自分を救うチャンスを創り出せる(create)人だと思います」

 「クリエーターって、例えば、きゃりーぱみゅぱみゅさんのような、奇抜な格好をしていて、とにかく変なものを作る人っていうイメージを抱きがちです。もちろん、きゃりーさんは本物のクリエーターだし、実際に原宿っぽい見た目のクリエーターは多いのですが、そういう人たちだけとは限らない。本当のクリエーターは、自分の才能で自分を窮地から救う手段を生み出せる人だと思いますね」

暇な女子大生さん、ペッパー、インタビューありがとうございました=瀬戸口翼撮影
暇な女子大生さん、ペッパー、インタビューありがとうございました=瀬戸口翼撮影 出典:死ぬな就活生、内定ゼロでも逆転ある 暇な女子大生さん:朝日新聞デジタル

     ◇     ◇
 ひまなじょしだいせい ブロガー・文筆家。北九州市近郊の地方都市出身。2014年、津田塾大学英文学科卒。20代中盤。本名と年齢、顔は非公表。

 大学在学中、暇を持て余した女子大生が欲望の赴くままに文章をしたためる「暇な女子大生が馬鹿なことをやってみるブログ」を開設。暇だから○○してみた、○○行ってみた、といったルポ風記事で人気を集める。ブログをもとにした初の書籍「暇な女子大生が馬鹿なことをやってみた記録~男と女のラビリンス編(仮)」(KKベストセラーズ)を8月下旬に出版予定。

暇を持て余す女子大生がありとあらゆることに手を出してしまうブログ

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