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反骨アイドル、制服向上委員会とは何者か? 自民も民主も、ばっさり

7月に「日本外国特派員協会」で記者会見を開いた制服向上委員会。政治的メッセージを控える日本の芸能界では異色の存在として活動しています。

「東京の高校生平和のつどい」で「ダッ!ダッ!脱・原発の歌」を歌う制服向上委員会の小川杏奈さん=2011年12月18日、港区芝公園3丁目の正則高校
「東京の高校生平和のつどい」で「ダッ!ダッ!脱・原発の歌」を歌う制服向上委員会の小川杏奈さん=2011年12月18日、港区芝公園3丁目の正則高校 出典: 朝日新聞

目次

 アイドルグループとして7月に「日本外国特派員協会」で記者会見を開いた制服向上委員会。政治的メッセージを控える日本の芸能界では異色の存在です。6月には神奈川県大和市のイベントで「自民党を倒しましょう」と訴え、市が後援を取り消す騒ぎに。アイドル冬の時代に生まれたグループは、結成以来、メンバー交代をしながら「メッセージを歌うアイドル」として活動を続けています。

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アイドル冬の時代にデビュー

 制服向上委員会は1992年に結成されました。1993年にはCDデビューを果たします。当時は、AKB48グループなどが人気の今と違ってアイドル冬の時代と言われていました。そんな中、セットが何もない舞台で「清く正しく美しく」などの持ち歌や唱歌を制服姿で歌うという、文化祭的なノリが新鮮に受け止められ、コアなファンを増やしました。

デビュー当時の制服向上委員会のステージ=1994年2月19日
デビュー当時の制服向上委員会のステージ=1994年2月19日 出典: 朝日新聞
このグループは「制服向上委員会」(SKI)。十三歳から二十一歳の女性ばかりで、一昨年九月に結成、昨年三月にCDデビューした。活動の軸は、毎月一回の「制服の日ファッションコンサート」。ステージは素朴だ。セットが何もない舞台で「清く正しく美しく」などの持ち歌や唱歌を制服姿で歌う。男女交際など身近な問題をメンバーが話し合う「公開生徒総会」などの演目もある。
1994年2月28日:マニアに人気「制服向上委員会」 アイドルブーム復活狙う:朝日新聞紙面から

民主党政権時は「野田はダメ、枝野ダメ」

 デビュー時から「制服宣言」として「夜遊びはしません」「私たちはメッセージを歌うアイドルです」などと宣言。北海道南西沖地震の被害者救援バザーなど、ステージ外での活動にも力を入れてきました。

 制服向上委員会の名前を一躍有名にさせたのは、2011年の東日本大震災による原発事故でした。民主党政権時代には「野田はダメ、枝野ダメ」と訴えました。メンバーの橋本美香さんは、2011年10月のインタビューで「アイドルが政治的な発言をしてはいけないことはない。ただのお人形さんと言われるより、私は好きです」と語っています。

 作家の大江健三郎さんらが呼びかけ、2011年9月に東京で開かれた脱原発集会では、「ダッ!ダッ!脱・原発の歌」を披露しました。橋本さんは「自分たちの未来に関わる問題だから、きちんと声をあげなければいけません。このCD1枚千円のうち、300円を福島の酪農家支援金に充てています。電車の中づりなどポスターの掲示はほとんど断られ、イベントでも歌わないでと言われることもある」と明かしています。

 「芸能界とか歌手とか言う以前に『これはおかしい』」という感覚を大事にしたい。10代のメンバーたちも原発について話し合ってきました。子供が首を突っ込まなくていいとは思わない。重荷を背負っていくのは若者です」

「ダッ!ダッ!ダツ! ゲンパツッ」と歌う制服向上委員会=2014年5月25日、仙台市青葉区
「ダッ!ダッ!ダツ! ゲンパツッ」と歌う制服向上委員会=2014年5月25日、仙台市青葉区 出典: 朝日新聞
毎回披露する「制服宣言」は「夜遊びはしません」「私たちはメッセージを歌うアイドルです」などと宣言する。まるで文化祭だ。ステージだけでなく、北海道南西沖地震の被害者救援バザーなどの活動もしてきた。「派手なステージは制服の清純なイメージからはずれる。メンバーは芸歴が浅いし、同年代の中高生に身近に感じてほしいので素朴にした」と所属事務所のPTAコミティは話す。
1994年2月28日:マニアに人気「制服向上委員会」 アイドルブーム復活狙う:朝日新聞紙面から
作家の大江健三郎さんらが呼びかけ、9月に東京で開かれた脱原発集会では、「ダッ!ダッ!脱・原発の歌」を披露しました。詞はストレートです。「忘れないから 原発推進派」「覚えておこう 被害の大きさ 大地と海 2次災害 人の心にまで」。自分たちの未来に関わる問題だから、きちんと声をあげなければいけません。このCD1枚千円のうち、300円を福島の酪農家支援金に充てています。電車の中づりなどポスターの掲示はほとんど断られ、イベントでも歌わないでと言われることもある。販売はネット中心です。それでも芸能界とか歌手とか言う以前に「これはおかしい」という感覚を大事にしたい。10代のメンバーたちも原発について話し合ってきました。子供が首を突っ込まなくていいとは思わない。重荷を背負っていくのは若者です。1千曲を超える私たちのレパートリーには、恋愛などをテーマにした楽しい歌もたくさんあります。一方で、憲法9条肯定や地デジ導入批判など政治色の強いものもある。活動はライブが軸です。広告活動も広告主の企業をしっかり調べた上でないと、どんなにお金をもらっても協力しません。メディアへの露出はあまり考えていなくて、そこはAKBと対極にいます。アイドルが政治的な発言をしてはいけないことはない。ただのお人形さんと言われるより、私は好きです。
2011年10月18日:(耕論)AKB いまさらBeginner 橋本美香さん:朝日新聞紙面から

「諸悪の根源、自民党」と熱唱

 2015年6月には、神奈川県大和市が後援した「憲法九条やまとの会」で「自民党を倒しましょう」「諸悪の根源、自民党」と歌いました。市では、これが「特定の政党、宗教、政治団体の活動に関係するものでない」とする後援のルールに反すると判断し、後援を取り消しました。

 イベントには約300人が参加していました。主催した九条の会は「後援の取り消しは納得できない。プロ歌手の歌詞まで制限できない」と反発しています。

大和市の後援取り消しに抗議をする「憲法九条やまとの会」の声明
大和市の後援取り消しに抗議をする「憲法九条やまとの会」の声明 出典:2015年6月 - 憲法九条やまとの会
神奈川県大和市は、後援した市民団体のイベントでアイドルグループが自民党を批判する歌詞を歌ったことから、このイベントへの市の後援名義を事後的に取り消すと決めた。25日に団体側に方針を伝えるという。イベントは「憲法九条やまとの会」が13日、「若者と国家―自分で考える集団的自衛権」と題して市内で開き、約300人が参加。元防衛官僚の柳沢協二さんが講演した後、脱原発を掲げる女性アイドルグループ「制服向上委員会」が歌とトークを披露した。市によると、「自民党を倒しましょう」「諸悪の根源、自民党」と歌われたため、「特定の政党、宗教、政治団体の活動に関係するものでない」とする後援のルールに反すると判断した。主催した九条の会は「後援の取り消しは納得できない。プロ歌手の歌詞まで制限できない」としている。
2015年6月25日:歌詞で自民批判、後援取り消しへ 神奈川・大和市、アイドル出演の護憲イベント:朝日新聞紙面から

海外メディア相手に「メッセージが入っていない歌はない」

 2015年7月28日には、「日本外国特派員協会」で記者会見を開きました。「日本外国特派員協会」は、主要政党の代表や、映画監督の宮崎駿さんら国内外の著名人が会見を主催し、海外に発信をしています。

 登場したのはパステルカラーのセーラー服の女子高生ら5人。普段とは様子の違う会見でしたが、特派員たちからはベトナム反戦を歌ったボブ・ディランを例に「日本のポップス界を変えようとしているのか」と質問をぶつけました。

 メンバーの西野莉奈さん(15)は目をぱっちりさせ、アイドルスマイルでこう答えました。

 「メッセージが入っていない歌はない。私たちは思っていることを歌詞にして歌っています」

日本外国特派員協会で会見を開いた制服向上委員会のメンバーら=2015年7月28日
日本外国特派員協会で会見を開いた制服向上委員会のメンバーら=2015年7月28日 出典: 朝日新聞
映画監督の宮崎駿さん(74)が13日、東京都内で記者会見し、米軍普天間飛行場の同県名護市辺野古への移設計画をめぐり、「沖縄の人々が基地を撤去したいと思っていることを伝えてほしい」と訴えた。宮崎さんは辺野古移設を阻止するために設けられた「辺野古基金」の共同代表。会見は日本外国特派員協会(東京)が主催し、インターネットで公開。
2015年7月14日:「沖縄の人々が基地撤去希望」 宮崎駿さんが会見:朝日新聞紙面から
会場に現れたのは、パステルカラーのセーラー服の女子高生ら5人だった。英語で紹介されては、メモを手にしたおじさんたちににっこり笑う。28日に「日本外国特派員協会」であった記者会見。彼女たちは、1992年に結成されたアイドルグループ「制服向上委員会」。恋の悩みや学校生活だけでなく、脱原発や安保関連法案も歌詞でとりあげる。民主党政権時代には「野田はダメ、枝野ダメ」と歌い、先月に神奈川県大和市であったイベントでは「自民党を倒しましょう」とやって、抗議を受けた市が後援を取り消す騒ぎになった。でも海外の記者たちには、政治を語らぬポップミュージシャンの方が珍しかったようだ。ベトナム反戦を歌ったボブ・ディランを例に「日本のポップス界を変えようとしているのか」との質問もとび出した。メンバーの西野莉奈さん(15)は目をぱっちりさせ、アイドルスマイルで答えた。「メッセージが入っていない歌はない。私たちは思っていることを歌詞にして歌っています」
歌う、恋も安保も原発も アイドル・制服向上委員会:朝日新聞デジタル

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