MENU CLOSE

お金と仕事

車両記号「イ」に託された重責 ななつ星で復活、豪華路線の幕開け

JRの在来線の車両につく「ロ」「ハ」の記号。「ななつ星」につけられた「イ」は、豪華列車の象徴ともいえる記号でした。

2013年9月13日、初めてその姿を現した「ななつ星」の車両
2013年9月13日、初めてその姿を現した「ななつ星」の車両 出典: 朝日新聞

目次

 JRの在来線の車両には「サロ」「クハ」などの名前がつけられています。このうち「ロ」「ハ」はイロハ順でサービスの水準を示しています。中でも最上級の「イ」は、長らく使われていませんでした。半世紀ぶりに復活させたのがJR九州の「ななつ星」です。2013年のデビュー以降、豪華列車は九州以外にも広まります。「イ」の復活は、豪華列車路線の幕開けだったのです。

【PR】手話ってすごい!小学生のころの原体験から大学生で手話通訳士に合格

明治は上・中・下等

 日本に鉄道が導入された明治前期、座席は上・中・下等でした。上等は要人などごく限られた人しか乗れず、庶民は下等を使いました。その後、1~3等に変更されました。これとは別に、1等から順にイ、ロ、ハの記号を便宜的に付けて管理するようになりました。

3等車のマークを残した列車=1971年8月18日、金沢駅
3等車のマークを残した列車=1971年8月18日、金沢駅 出典: 朝日新聞
日本に鉄道が導入された明治前期、座席は上・中・下等でした。上等は要人などごく限られた人しか乗れず、庶民は下等を使いました。その後、「官設鉄道にては客車及び切符上等中等下等の名称を一等二等三等に改めたり」と1897年11月18日付東京朝日新聞が報じているように、1~3等に変更されました。これとは別に、1等から順にイ、ロ、ハの記号を便宜的に付けて管理するようになりました。
(ことばの広場 校閲センターから)車両記号の「イ」復活:朝日新聞デジタル

1960年を最後に「イ」消える

 戦後、1等の利用者が減ったことや、欧州諸国が2等制になったのを受け、1960年に営業運行する車両からイはなくなりました。代わりに従来の2等を1等、3等を2等に格上げし、それぞれロ、ハと呼ぶことにしたのです。69年には、1等をグリーン車、2等を普通車とし、これが今に続いています。

西鹿児島行急行「桜島」の1等車の表示の上に、四つ葉のクローバーを型どったマークを張り、グリーン車への変更作業をする国鉄職員=1969年
西鹿児島行急行「桜島」の1等車の表示の上に、四つ葉のクローバーを型どったマークを張り、グリーン車への変更作業をする国鉄職員=1969年 出典: 朝日新聞
戦後、1等の利用者が減ったことや、欧州諸国が2等制になったのを受け、1960年に営業運行する車両からイはなくなりました。代わりに従来の2等を1等、3等を2等に格上げし、それぞれロ、ハと呼ぶことにしたのです。69年には、1等をグリーン車、2等を普通車とし、これが今に続いています。
(ことばの広場 校閲センターから)車両記号の「イ」復活:朝日新聞デジタル

ななつ星「『イ』にふさわしい特別な列車」

 2013年に誕生した「ななつ星」は、内装にヒノキや有田焼が使われ、バーではピアノの生演奏もあります。JR九州が「『イ』の記号にふさわしい特別な列車です」と胸を張る豪華さです。「ななつ星」は2人で最高150万円という料金ながらデビュー以来、高い人気を誇っています。

「ななつ星」の客室
「ななつ星」の客室 出典: 朝日新聞
九州を巡るJR九州の豪華寝台列車「ななつ星」が15日で運行開始1周年を迎える。2人で最高150万円という破格の利用料金だが、裕福な高齢者を中心に申し込みが殺到し、今なお人気は衰えない。成功にあやかろうと、他のJR各社も今後、同様の列車を運行する計画だ。
2014年10月15日:ななつ星、輝き別格 運行1年 2割リピーターに/倍率30倍 :朝日新聞紙面から
内装にヒノキや有田焼が使われ、バーではピアノの生演奏も。「『イ』の記号にふさわしい特別な列車です」とJR九州が誇るななつ星は、「九州観光のシンボルに」との願いをのせ鉄路を走ります。
(ことばの広場 校閲センターから)車両記号の「イ」復活:朝日新聞デジタル

「イ」ブームの幕開けか

 「ななつ星」人気もあり、JR各社は豪華列車路線を強化します。2017年春、JR東とJR西は、それぞれクルーズトレイン(豪華寝台列車)の運行を開始します。

 JR東の「トランスイート 四季島(しきしま)」は、「和のモダン」がテーマで、天井を高くデザインしています。JR西の「トワイライトエクスプレス 瑞風(みずかぜ)」は、大阪―札幌間を走り、運行を終えた人気の寝台列車の名を引き継ぎ、車体は同じ緑色です。最上級の客室は1両1室でバルコニーやバスタブ付き。両列車とも沿線の食材を生かした料理や立ち寄り観光を付加価値としてアピールしています。

【写真右】上野駅に新設する予定の「四季島」専用ラウンジ=JR東日本提供、【写真左】「トワイライトエクスプレス 瑞風」のイメージ=JR西日本提供
【写真右】上野駅に新設する予定の「四季島」専用ラウンジ=JR東日本提供、【写真左】「トワイライトエクスプレス 瑞風」のイメージ=JR西日本提供

 「ななつ星」によって復活した「イ」車両。豪華列車を投入する各社は、海外からの外国人観光客の誘致も見据えています。最上級の車両を示す「イ」ブームは、まだまだ続きそうです。

関連記事

PICKUP PR

PR記事

新着記事

CLOSE

Q 取材リクエストする

取材にご協力頂ける場合はメールアドレスをご記入ください
編集部からご連絡させていただくことがございます