お金と仕事
車両記号「イ」に託された重責 ななつ星で復活、豪華路線の幕開け
JRの在来線の車両につく「ロ」「ハ」の記号。「ななつ星」につけられた「イ」は、豪華列車の象徴ともいえる記号でした。
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JRの在来線の車両につく「ロ」「ハ」の記号。「ななつ星」につけられた「イ」は、豪華列車の象徴ともいえる記号でした。
JRの在来線の車両には「サロ」「クハ」などの名前がつけられています。このうち「ロ」「ハ」はイロハ順でサービスの水準を示しています。中でも最上級の「イ」は、長らく使われていませんでした。半世紀ぶりに復活させたのがJR九州の「ななつ星」です。2013年のデビュー以降、豪華列車は九州以外にも広まります。「イ」の復活は、豪華列車路線の幕開けだったのです。
日本に鉄道が導入された明治前期、座席は上・中・下等でした。上等は要人などごく限られた人しか乗れず、庶民は下等を使いました。その後、1~3等に変更されました。これとは別に、1等から順にイ、ロ、ハの記号を便宜的に付けて管理するようになりました。
戦後、1等の利用者が減ったことや、欧州諸国が2等制になったのを受け、1960年に営業運行する車両からイはなくなりました。代わりに従来の2等を1等、3等を2等に格上げし、それぞれロ、ハと呼ぶことにしたのです。69年には、1等をグリーン車、2等を普通車とし、これが今に続いています。
2013年に誕生した「ななつ星」は、内装にヒノキや有田焼が使われ、バーではピアノの生演奏もあります。JR九州が「『イ』の記号にふさわしい特別な列車です」と胸を張る豪華さです。「ななつ星」は2人で最高150万円という料金ながらデビュー以来、高い人気を誇っています。
「ななつ星」人気もあり、JR各社は豪華列車路線を強化します。2017年春、JR東とJR西は、それぞれクルーズトレイン(豪華寝台列車)の運行を開始します。
JR東の「トランスイート 四季島(しきしま)」は、「和のモダン」がテーマで、天井を高くデザインしています。JR西の「トワイライトエクスプレス 瑞風(みずかぜ)」は、大阪―札幌間を走り、運行を終えた人気の寝台列車の名を引き継ぎ、車体は同じ緑色です。最上級の客室は1両1室でバルコニーやバスタブ付き。両列車とも沿線の食材を生かした料理や立ち寄り観光を付加価値としてアピールしています。
「ななつ星」によって復活した「イ」車両。豪華列車を投入する各社は、海外からの外国人観光客の誘致も見据えています。最上級の車両を示す「イ」ブームは、まだまだ続きそうです。
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