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危険!ゆるキャラ熱中症 着ぐるみ中の人「作業中断」レベルだった
着ぐるみの中の人の熱中症リスクが高い――。着用時の状態を調査した文化学園大の佐藤准教授は「注意喚起をするべきだ」と警鐘を鳴らしています。
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着ぐるみの中の人の熱中症リスクが高い――。着用時の状態を調査した文化学園大の佐藤准教授は「注意喚起をするべきだ」と警鐘を鳴らしています。
着ぐるみの「中の人」は熱中症のリスクが高い――。着ぐるみ着用時の熱中症リスクを文化学園大(東京都渋谷区)の佐藤真理子准教授が実験したところ、そんな結果が出ました。厚労省によると、着ぐるみを身につけた時の熱中症リスクを示したデータは把握しておらず、予防策についての指針はないそうです。ゆるキャラ人気で着ぐるみが各地のイベントで引っ張りだこのなか、佐藤准教授は「着ぐるみの着用機会は増えており、注意喚起をするべきだ」と警鐘を鳴らしています。
実験には、20歳代の健康な女性5人が参加しました。異なる気温に設定した人工気候室(温度や湿度を一定に保てる)で、着ぐるみ(約3キロ)と普段着(ブラウス・パンツ)を20分間身につけた場合、内部の温度や湿度などがそれぞれどう変わるかを調べました。
この結果、着ぐるみを身につけた場合の背中や腹部の温度(5人の平均値)は3℃以上の上昇を示したのに対し、普段着の場合は1℃前後にとどまりました。頭部については、7℃近く上がりました。
また、着ぐるみ内の相対湿度はどの気温のもとでも80%以上を記録。普段着の場合の40~50%を大きく上回りました。着ぐるみ内の温度は周囲の環境にほとんど関係なく、普段着よりも高い値が保たれていたことになります。
別の20歳代の女性3人が同じ着ぐるみを1時間着用した際の発汗量も測ったところ、約600グラムにも達しました。アメリカ産業保健専門家会議のガイドラインは、発汗により体重の1・5%以上が減った場合に暑熱下での作業を中断するべきとの基準を示しています。この実験に参加した3人の体重は約49キロで発汗量が約735グラムに達すればこの基準に該当する計算です。
佐藤准教授は「着ぐるみ内は容易に高温多湿となり、汗のほとんどが無効発汗(蒸発しない汗)になるため、中の人の熱中症リスクはかなり高い」と指摘します。そのうえで、着ぐるみ内の環境を変えられないのであれば、作業の強度や時間に配慮するしかないとの見解を示します。
ところが、着ぐるみの運用について統一的な指針は定まっていないのが現状です。厚労省は各都道府県の労働局長に「職場における熱中症予防対策の実施について」と注意を呼びかけていますが、担当者は「熱中症にかかる人の報告が多い建設作業現場を主に想定しています。着ぐるみを着た人が熱中症になったという報告はこれまでないので、踏み込んだ注意は促していません」と話します。
実際、ゆるキャラの着ぐるみの貸し出しを行っている自治体によって対応はまちまちです。「30分を目安に休憩、交代すること。こまめに水分を補給し、熱中症には十分に注意すること」と心得を示す自治体もあれば、「着ぐるみ内は高温になるため、中に入っている人のケアを随時行うこと」と細かい注意に至っていない自治体もあります。
着ぐるみの特徴について、佐藤准教授は「素材やデザインにもよるが、多くは熱放散が妨げられる構造を持ち、気温が低くてもその内部は過酷な暑熱条件になりうる」と指摘します。そのうえで、「イベント等の管理者は、着用者の暑熱(あるいは身体)負担が大きいことを理解し、冷房拠点の確保や保冷用品の準備に加え、着用の短時間部化をはかる等の作業管理をするべきだ」と話しています。