IT・科学
15歳ドローン事件の闇「性犯罪以外で子どもにお金」「ずるい大人」
15歳の少年が威力業務妨害容疑で逮捕されたドローン事件。「性犯罪以外でお金を得た」ことなど問題点が指摘されています。
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15歳の少年が威力業務妨害容疑で逮捕されたドローン事件。「性犯罪以外でお金を得た」ことなど問題点が指摘されています。
小型無人飛行機(ドローン)を祭りの場で飛ばすと示唆したとして2015年5月、15歳の少年が逮捕されました。大人が少年に活動資金を提供して、問題行動を起こさせるという特異さで注目されました。インターネットユーザー協会の代表理事、小寺信良さんに、事件の問題点について聞きました。
小寺さんは、事件の特徴として、逮捕された子どもが少女ではなく少年だった点をあげます。「大人が子どもにお金を渡す事件で表沙汰になるのは、これまで少女がほとんどだった。今回は性犯罪ではない形で、大人が子どもにお金を与えてしまった」
事件では小型無人飛行機(ドローン)やネットの生放送に注目が集まりましたが、小寺さんは「少年がドローンに興味があったかどうか疑わしい」と指摘します。「首相官邸への侵入事件などでドローンが話題を集めたから使っただけではないか。生放送も本質的な問題ではない。これはテクノロジーの問題ではない」と言います。
少年は「配信業」を自称し、視聴者から仮想通貨を集めていたとされています。中には、過激な行動をあおる視聴者もいたようです。
少年の親は、お小遣いをあげていないと説明していますが、部屋からは、警察によってパソコン2台やタブレット端末3台、スマートフォン5台、ドローン1台が押収されました
「少年の行動に対する報酬は、労働の対価とは言えない」と小寺さんは強調します。「未成年者をアルバイトなどで雇う時、そこには単なる労働だけでなく教育という側面がなければならない。今回の事件で、お金を与えた側に教育という気持ちがあっただろうか。その意味で、通常の労働による対価とはまったく異質だと言わざるを得ない」
少年は、ネット経由で様々な情報を得るだけでなく、実際の活動資金すら手に入れていました。小寺さんは「家にいながら家出をしている状態だった」と見ています。
今回の事件、背景にあるものは何か。小寺さんは「子どもに対する無関心」をあげます。「未成年者を社会で育てるという気持ちが薄れている。事件化してしまったものは、犯罪教唆などの形で『ずるい大人』を取り締まらなければならない。でも、本質的には、大人は、子どもとの向き合い方を迫られている」
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小寺信良(こでら・のぶよし) 1963年生まれ。ITを中心に幅広い執筆活動を行う。インターネットユーザー協会代表理事。著書に「子供がケータイを持ってはいけないか?」など。