IT・科学
クラウドソーシング、なぜ低賃金? 待遇改善へ業界団体 値崩れ防ぐ
急成長する「クラウドソーシング」は、低賃金労働になりやすいという問題点も指摘されています。このほど、待遇改善に向けた業界団体が生まれました。
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急成長する「クラウドソーシング」は、低賃金労働になりやすいという問題点も指摘されています。このほど、待遇改善に向けた業界団体が生まれました。
ネットで仕事を受注する「クラウドソーシング」は、新しい働き方として注目されています。一方で、単純なデータ入力作業などは低賃金労働になりがちで、生計を立てられる人は一部の人、というのが現状です。最近では、待遇改善に向けて、発注側の企業と働き手の間に仲介企業が「交渉役」として入り、「クラウドソーシング」を安定した働き方として定着させようとする動きが出ています。
地方に住んでいる人や在宅でも効率的に時間が使える「クラウドソーシング」。仕事を発注する企業とのやり取りはスマートフォンなどを使い、直接顔を合わせることなく仕事をすることができます。国内の仲介業者は約200社あるといわれています。
急成長中の「クラウドソーシング」ですが、課題も指摘されています。生計を立てられる人は一握りのデザイナーや技術者なのが実情です。数十万単位の登録者に向けて、一気に仕事を振り分けられるので、データの打ち込み作業など単純作業を頼みやすく、低賃金の仕事が目立つようになっています。
2015年3月、「クラウドソーシング」業界の企業が「CGS協会」を設立しました。現在、5社(「うるる」「ウィルゲート」「キャスター」「ベアーテール」「ムゲンアップ」)が加盟しています。「CGS」は「Crowd Generated Service」の略です。協会では「クラウドソーシング」をハードウエアに例え、「CGS」は「クラウドソーシング」を働き手の視点に立って活用するソフトウェアだと定義しています。
通常、「クラウドソーシング」の企業は、仕事を発注する企業と、受注する働き手をマッチングさせるサービスを提供しています。仕事の内容や報酬などは、発注側の企業が提示し、それに納得した働き手が受注することで成立します。「CGS」は、マッチングサービスを提供する企業が、仕事の内容や条件にも関わります。働き手は、仲介した企業を通じて仕事をすることになります。
協会を立ち上げた会社の一つ「うるる」の桶山雄平さんは「膨大な登録者から、企業の条件に合った働き手が決まっていく今のシステムだと、どうしても価格競争が起きてしまう。『クラウドソーシング=低賃金』というイメージが定着すると、将来性のある業界自体の芽を摘んでしまいかねない」と話します。
「うるる」が運営する「入札情報速報サービス(NJSS)」は、省庁や自治体の入札情報を、働き手が公式サイトから探して入力するというものです。入札情報は、PDFで発表されたり、部署単位で掲載されたりするため、機械的に集めることが難しいとされています。同社は、働き手が手作業で集めた入札情報を統一の形式に整え、それを納品します。付加価値をつけることで発注側の企業と価格交渉し、通常の「クラウドソーシング」よりも高い水準の報酬を支払えているそうです。
同じく協会を立ち上げた「ウィルゲート」の吉岡諒さんは「発注する企業側にとってもメリットがある」と話します。「間に仲介企業が入ることで、様々な事業に使える成果物を生み出すことができる。これまでアプローチする方法がなかった、膨大な人たちの力を、単純作業以外にもいかすことができる」と強調します。
協会では今後、高付加価値を生み出すビジネスモデルを加盟社を中心に展開していくとともに、待遇改善に向けた取り組みを進めていく方針です。吉岡さんは「まずは、値崩れを起こさないようなルール作りを進めたい」と話しています。