話題
羽生結弦さんへの取材はスリル 松岡修造さんが語るフィギュア愛
フィギュアスケートの世界国別対抗戦が16日、東京・代々木競技場で開幕します。テレビ朝日系でメインキャスターを務める元プロテニス選手の松岡修造さんが、大会やフィギュアスケートへの熱い思いを語ってくれました。
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フィギュアスケートの世界国別対抗戦が16日、東京・代々木競技場で開幕します。テレビ朝日系でメインキャスターを務める元プロテニス選手の松岡修造さんが、大会やフィギュアスケートへの熱い思いを語ってくれました。
フィギュアスケートの世界国別対抗戦が16日、東京・代々木競技場で開幕します。テレビ朝日系でメインキャスターを務める元プロテニス選手の松岡修造さんが、大会やフィギュアスケートへの熱い思いを語ってくれました。
フィギュアスケート(のキャスター)って、僕に本当に向いている職業だと思っています。米国にいた時に、見ていて好きだったのがフィギュアでした。当時は米国がすごく強い時期。非常にエンターテインメント的で、選手の思いが表現できて、銀盤をたった1人で滑るスポーツ。僕の好きなミュージカル的な要素もある。勝負だけど演じる要素が入るから、テニスにはない面があってより好きになりました。
五輪ともなると、フィギュアはすべてがメンタルと言っていいくらい、緊張するスポーツじゃないかなと思っています。伊藤みどりさんは1992年アルベールビル五輪の時、オリジナルプログラムで失敗して「すいません」とコメントした。僕は米国にいて我慢できずに、すぐに手紙を書いた。「謝ることは絶対おかしい」って。僕の中ではそれくらい応援したくなるスポーツでした。
フィギュア取材は2002年ソルトレーク五輪でも担当しましたし、フィギュア選手との対談本も出させてもらって、もっと好きになりました。僕が感じている面白さをテレビを通じて伝える役割を担う。こんな最高なことないなと。フィギュア選手の緊張感と、演じるというスポーツにはない要素をどうやったら伝えられるのか、ということを十数年間やってきました。
特に注目しているのはアイスダンスのスケーティングです。スケーティングの良さがわかってくると、ジャンプとジャンプの合間が楽しくなる。しぐさひとつでも表現していたり、手をパッと振っていたりする瞬間に、僕はものすごく引きつけられる。
これは好き好きですが、一番分かりやすいのは、ぐーっと長くいくステップ。あそこは誰が見ても、曲の中で一番盛り上がるところだと思う。選手が言うには一番きついけど、一番思いを伝えられるところ。そのステップがすごい細かいんですよ。ぎゅーっと止まって、クルクルクルと回る。僕が同じステップをしたら100回は転ぶでしょう。
ジャンプも一つの魅力。できるかできないかという勝負感があります。一方、ステップは感じようとすることができる。感じるって、スポーツでは難しいんですよ。勝負だから。テニスの場合は、点が入ったとか入らないとか、こっちに打った打たないとか。その意味でフィギュアは最も感覚に訴えやすいスポーツだと思います。
技と技のつなぎの部分にも注目しています。特に荒川静香さんのイナバウアーは、直接の点数にはならないと言われましたが、今は主流になってきた。審判が決めるものですから、印象や芸術要素も含めて最終的に加算されていく。テニスもそうですが、スポーツ自体が本当に進化している。フィギュアは練習量も多くなり、メンタルトレーナーもついてきた。ジャンプなら男子は4回転、女子はトリプルアクセル(3回転半)。昔では考えられなかったことが、今では常識になっている。選手の向上心と、観客がもっとこういう演技を見たいという期待度が、新しい技を作ったのではないかと思います。
今はほとんどの選手が音楽の世界を表現している。羽生結弦さんが演じる「オペラ座の怪人」は、もう完全にミュージカルを見ているようです。彼の一つ一つのそぶりが、怪人のとらえ方になっているし、(怪人の)苦しみも含めて跳んだりはねたりする表現力がある。
特に羽生さんはジャンプも本当にチャレンジしている。できるジャンプだけにしても勝てるわけですよ。でも「それが申し訳ない」っていう言い方を僕にした。今は羽生さんにインタビューするのは、僕にとっては一番スリルがある。この人は何を話してくるんだろうっていうくらい言葉の内容が飛び抜けている。
アルベールビル五輪の伊藤みどりさんの時はテレビの前で完全に正座でした。今は放送席で見ていますが、五輪になると、ガッツポーズをするよりも「ううーっ」って心配になるわけですよ。できたら見たくないというくらいの緊張感が来ますね。これが他のスポーツではないフィギュアの良さです。「ぐわーっ」という叫ぶ感じではないんですよ。