IT・科学
プログラマー女子、男臭い業界に風穴 北欧発の勉強会、創設者の野望
男だらけのプログラマー業界を変えようという運動が広がっている。フィンランドで始まった女子対象のプログラミング勉強会。日本でも開催都市が増えつつある。
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男だらけのプログラマー業界を変えようという運動が広がっている。フィンランドで始まった女子対象のプログラミング勉強会。日本でも開催都市が増えつつある。
プログラマー業界は圧倒的に男が多い。理系の大学からして男が多いし、週末に各地で開催されているプログラミングの勉強会や交流会だって、男だらけ。そんな業界を変えようという運動が広がっている。フィンランドで始まり、世界中で開かれている女子対象のプログラミング勉強会「レイルズ・ガールズ」。日本でも開催都市が増えつつある。
レイルズ・ガールズは2010年にフィンランドのヘルシンキで生まれた。創設者は自身もプログラマーで、イラストレーターでもあるリンダ・リウカスさん(28)。「プログラムは世界共通の言語で、自分を表現し、世界を変えるサービスも生み出せる。女性も子どももみんなが使えるようになるべきです」と話す。
フィンランドは政府の大臣の男女比がほぼ1:1、「男女平等の国」と発信している。しかし、プログラマー業界は「他の国と状況は変わりません。男性が圧倒的に多く、女性はプログラムを学ぶ機会が少なかったんです」(リウカスさん)。
レイルズ・ガールズが対象にしているのは、プログラムをほとんど学んだことがない女性。まったくの素人でも、週末の1~2日でプログラムの基礎から簡単なアプリ開発まで体験してもらう。勉強会の名前にもなっている「レイルズ」という初心者でも比較的学びやすい開発手法を使い、趣旨に賛同するプログラマーが先生役となって丁寧に教えるからだ。
活動をウェブサイトで紹介すると、世界中から「私たちもやりたい」と相談が舞い込んだ。たのしいイベントにするためのカリキュラムやアプリ作成に使うツールなどを公開。先に勉強会を開いたメンバーが、後から開く都市のメンバーを助け、5年で227都市、1万人に広がった。
日本でも2012年9月の東京での開催を皮切りに、これまで9都市で計13回開催された。参加者の経歴は、学生や会社員、元教師、花屋さんなど様々で、レイルズ・ガールズへの参加をきっかけにプログラムの習得に取り組み、プログラマーに転職する人も出てきているという。
レイルズ・ガールズ東京を企画し、講師としても参加しているプログラマーの鳥井雪さん(34)は「国勢調査によると、日本のソフトウェア業界は男性が81%、女性が19%。プログラマー向けのイベントはたくさんありますが、どこも男性ばかりで女性は参加しづらい」と指摘する。「女性で集まって簡単なものをまずは作ってもらう。興味を持つ人が広がれば、少しずつ女性のプログラマーも増えるはずです」
リウカスさんは「世界初のプログラマーは女性だし、第二次世界大戦中に暗号解読用のコンピューターを操作していたのも女性。元々男性の仕事というわけじゃないんです」と笑う。
世界で最初のプログラマーとされる、19世紀英国の女性エイダ・ラブレス。プログラミング言語「Ada」にその名を残している。
第二次世界大戦中にドイツの暗号を解読するために英国がつくったコンピューター「コロッサス」を操作する女性たち。
リウカスさんはレイルズ・ガールズだけでなく、小学生へのプログラム教育を推進する活動にも携わってきた。フィンランドでは2016年から小学校でのプログラム教育が必修化されるという。
「プログラムはコンピューターの中だけでなく、あらゆる産業の現場で使われています。スーパーの商品管理にも、自動車のカーナビにも。フィンランドの林業は『のこぎりと木』のシンプルな産業という人もいますが、市場価格と出荷量を調整するのはプログラムです。誰もが学び、使うべきものなのです」
「『21世紀に学ぶべき言語』と呼ばれているのが何か知っていますか?英語、中国語、そして(プログラム言語の)JavaScriptです」