お金と仕事
モンチッチ、40年で7千万体突破 「冬の時代」乗り越え再ブーム
1974年の発売から累計7千万体を売った「モンチッチ」。じつは、過去に販売終了した“冬の時代”からの奇跡の復活でした。
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1974年の発売から累計7千万体を売った「モンチッチ」。じつは、過去に販売終了した“冬の時代”からの奇跡の復活でした。
1974年に発売された日本のぬいぐるみ「モンチッチ」。誕生から約40年で国内外の累計販売数が7千万体を突破し、超ロングセラーになっています。現在、世界30カ国以上の子どもたちに愛されていますが、じつは10年間ほど販売を中止した“冬の時代”を乗り越えての復活でした。
「発売された年から日本中で爆発的な人気になりました。買えなかった人が札束を持って『これで売ってくれ』と、本社を訪ねてきたこともあったそうです」
モンチッチを製造する「セキグチ」(東京都葛飾区)の広報担当・山口恵子さんはそう話します。
モンチッチ発売の2年前、セキグチはクタクタした体のぬいぐるみ「くたくたモンキー」を投入。翌年には、指しゃぶりをした人形「マドモワゼル ジェジェ」を発売し、いずれも人気になりました。
そこで、ヒット商品を組み合わせることを思いつきます。「くたくたモンキー」の手触り感は維持しつつ、人形ならではの「ジェジェ」の愛くるしい表情も〝いいとこ取り〟する――。そうして誕生したのが、モンチッチでした。
「当時、ぬいぐるみと人形の特徴を組み合わせるアイデアは画期的でした。擬人化することで、より気持ちを込めやすくなったのも、大ヒットした理由だと思います」と山口さん。
名前は、フランス語の「モン=私の」と「プチ=小さくカワイイもの」を組み合わせたもの。おしゃぶりをチュウチュウ吸っている姿から、この名前になりました。
発売の翌年、1975年からは海外輸出も開始。その人気はヨーロッパから北米や南米にまで広がりました。一緒に遊べる家具や着せ替え用の服も発売され、テレビアニメ化されたり、レコードが発売されたりしました。
じつは、モンチッチは一度、販売を終了させています。国民的なブームが過ぎ去った1985年以降、人気のあったフランスを除いて出荷を止めました。
しかし、誕生から20年になる1994年、モンチッチが“成人”を迎えたのを機に復活の準備が始まり、その2年後に再発売されました。形は元のままですが、セキグチは「単なる過去の懐かしいアイテムにはしたくない」と、イメージ戦略の転換に取り組みます。過去の人気を知らない若年層をどう振り向かせるか、が課題でした。
取り組みの成功例の一つが2004年の30周年記念で実施した「結婚式」。モンチッチ君とモンチッチちゃんが千葉県浦安市のホテルで結婚式を挙げ、これを記念して発売されたウェディングセットがお祝い品の需要を開拓しました。同じ年には、子どもである「ベビチッチ」も誕生。この年以降、誕生日イベントを定期的に実施し、「時代に合わせて変化するモンチッチ」をアピールしていきます。
デザイナーやアーティストとのコラボ企画も積極的に展開。「ちびまる子ちゃん」の作者さくらももこさん、「アンパンマン」のやなせたかしさんらと、世界に一体だけのモンチッチを発表しました(いずれも非売品)。
なかでも、人気マンガ「ゴルゴ13」の主人公・デューク東郷の顔をした「ゴルチッチ」は、今年1月にテレビ番組で取りあげられて話題に。非売品にもかかわらず、「インパクト強烈すぎる」「絶対欲しい。どこで買える?」などとツイッターで盛り上がりました。
2010年には、金髪モヒカンのモンチッチが「エアギター日本大会」で準優勝。セキグチ社内ではエアギター部を設立し、モンチッチの練習を支えました。
現在の人気を支えている仕掛けの一つが「JOLモンチッチ」です。
ガールズ向けの総合メディア「JOL」(旧:オトナ*ラボ)とコラボし、女子高生たちと一緒に商品開発に取り組んでいます。「若い世代に売るなら、その世代に開発してもらおう」と、全体的なデザインから生地やパーツ選び、ネーミング、商品タグにいたるまで、女子高生たちの意見を徹底的に取り込みます。
毎年、新作を発表し、これまで20万体以上が売れました。開発段階から主要な購買層を巻き込んでいく手法は、メディアでの話題づくりにも貢献しています。
2014年の新作では、スマートフォンでモンチッチを撮影する若い女性が増えている、という点に着目。頭の横と腕の部分をつなぐボタンを付けて、片手を「ハーイ!」と挙げたポーズができるよう工夫しました。
モンチッチはアジア圏でも日本の「カワイイ文化」のシンボルとして知られるようになり、来日した中国人観光客らのお土産として大量に買われています。セキグチは「ぬいぐるみとしてだけではなく、おしゃれなキャラクターとして世界中で愛される存在に育てていきたい」としています。