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新幹線の最高速度、ちょっとしか更新できない理由「どこかで詰まる」

東海道新幹線の最高速度が23年ぶりにアップします。といっても270キロが285キロ、というかなり控えめな記録更新。東海道新幹線が、実力を発揮できない理由とは?

試乗会で最高速度285キロを出した東海道新幹線の運転席。「加速感が異なると思います」と話す運転士も=25日、佐藤正人撮影(運転台の一部を修正しています)
試乗会で最高速度285キロを出した東海道新幹線の運転席。「加速感が異なると思います」と話す運転士も=25日、佐藤正人撮影(運転台の一部を修正しています) 出典: 朝日新聞

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 3月のダイヤ改正で、東海道新幹線の最高速度が23年ぶりにアップします。といっても現行270キロが285キロになるという、かなり控えめな記録更新…。試験運転では332キロを出したこともある東海道新幹線ですが、実力を発揮できない理由がありました。

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最高速度285キロを出した運転席。モニターには285の数字が見える=25日午後、佐藤正人撮影
最高速度285キロを出した運転席。モニターには285の数字が見える=25日午後、佐藤正人撮影

試乗会には新車がお目見え

 2月25日にあった試乗会では、3日前に納入されたばかりというN700Aの「新車」がお目見え。東京駅での出発前には列車の番号「285」が入った案内表示板を撮影する人もいました。

 最高速度が出たのは新横浜を出て間もなく。車内には「開業当時の210キロです」「いま、最高速度に到達しました」まで、案内のアナウンスが流れました。

 静岡市から来た田島恭子さん(46)は「乗り心地がいい。最高速度になったときも、言われないと分からないと思った」。横浜市から参加した島田和也さん(33)は「思っていたより揺れないですね」と笑顔です。

東海道新幹線の試乗会で「乗車証明書」を手にする澤江優太朗くん(左)と弟の瞭太朗くん=25日午後、佐藤正人撮影
東海道新幹線の試乗会で「乗車証明書」を手にする澤江優太朗くん(左)と弟の瞭太朗くん=25日午後、佐藤正人撮影

15キロアップのため、何度もテスト

 今回、最高速度を時速270キロから285キロへ、15キロを短縮するために、さまざまな工夫が重ねられました。カーブ通過時の乗り心地を向上させるために車両下の空気バネを強化したり、高速化に耐えられるようにブレーキを強化したり。線路への負荷テストも何度も何度も行い、安全性を確認したそうです。

でも、短縮時間は最大3分

 で、どのぐらい早く着くようになったのでしょう。東京―新大阪で最大でも3分だそうです。壮大な苦労に引き換え、ちょっと少ないような……。そこにはちゃんとした理由がありました。

新幹線N700A=JR東海提供
新幹線N700A=JR東海提供

「のぞみ」だけ速くしても、詰まる!

 ダイヤ担当の三石剛弘・輸送課長に聞きました。
 「新幹線はのぞみだけではありません。最大頻度でいうと、1時間にのぞみ10本、ひかり2本、こだま3本が走ります」
 「もし、のぞみだけがスピードアップしたら、どこかで新幹線が詰まってしまいます。ひかりやこだまの本数も維持しつつ、のぞみの速度・性能を向上していく。その最適解として導き出されたのが285キロなのです」

「こだま」だって最高時速の場合も

 三石さんによると、285キロを体験できるのは、のぞみだけではないそうです。

 「今後、最新のN700A車両や、N700系を改造した車両が、ひかりやこだまにも導入されます。最高速度で走るのぞみの直前を走るひかり・こだまは、区間によっては285キロを出します。ダイヤがお好きな方なら、想像がつくかもしれません」

2008年11月、最後の営業運転でJR岡山駅を出発する0系新幹線「こだま659号」
2008年11月、最後の営業運転でJR岡山駅を出発する0系新幹線「こだま659号」

15キロの差、運転士はわかる?

 ところで、270キロと285キロ、23年かけて実現したこの速度を、新幹線の運転士はどう感じているのでしょうか。

 この日の試乗会を担当したのは女性運転士・山下志歩さん。試験走行を10回以上経験したそうです。「加速感が異なると思います。運転士が速度計算をするキロポストの過ぎる速さが違うと感じます」と話していました。

 運転士たちの試験走行を担当したJR東海の石野雅美・運輸営業部運輸課長によると「最高速度の感じかたは千差万別。個人差があるようです。(15キロの差を)あまり感じない、という運転士もいますし、前方の風景で感じるという人もいます」とのことでした。

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