お金と仕事
大江戸温泉を買収、ベインキャピタルの手腕 すかいらーく復活の実績
大江戸温泉HDの買収を発表した米ファンドのベインキャピタル。過去には「すかいらーく」の経営を改善させた実績も。買収には、どんな戦略が?
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大江戸温泉HDの買収を発表した米ファンドのベインキャピタル。過去には「すかいらーく」の経営を改善させた実績も。買収には、どんな戦略が?
米大手投資ファンドのベインキャピタルが、大江戸温泉ホールディングス(HD)の買収を発表しました。過去にはファミリーレストランチェーン「すかいらーく」などの経営を改善し再上場させた実績があります。「大江戸温泉」買収には、どんな戦略があるのでしょうか。
「大江戸温泉」は、お台場にある江戸の町並みを再現した「お台場大江戸温泉物語」をはじめ、全国29カ所で温泉旅館や温浴施設を営んでいます。
「お台場大江戸温泉物語」は、20種類以上のお風呂、縁日のような買い物エリアなどが家族連れに人気で、大阪・箕面のスパーガーデンなどでは、イケメン男子による時代劇風のショーも見られます。
そんな「大江戸温泉」を買収したベインキャピタルは、どんなファンドなのでしょうか。米国の本社は1984年に設立され、世界で社員約1千人がいる大手です。欧州や中国、インドなど11か所に拠点があります。日本の事務所は2006年に開設され、2011年にはガストやバーミヤンなどを抱えるファミレスチェーン「すかいらーく」を買収したことで注目されました。
1970年創業の「すかいらーく」は、業界の草分け的存在でしたが、当時、業績が伸び悩んでいました。2006年に経営陣による自社買収(MBO)に踏み切り、非上場化し、経営合理化によって再上場をめざしていましたが、ほかのファミレスやファストフードとの競争に苦しんでいました。
ベインキャピタルによる買収後、「すかいらーく」は不採算店のリストラを進めます。幹線道路沿いのお店に家族連れが来る、というスタイルが時代に合わなくなってきたことから、「脱ファミリー依存」に転換。朝食をゆっくりとるシニア層や、午後にくつろぐ女性のグループ客らを取り込むため、店舗の改装などに力を入れました。
2014年10月には東証一部に再上場。経営の立て直しに成功します。客単価を高め、2014年12月期決算では過去最高規模の利益を達成しています。
「大江戸温泉」では、どのような戦略で臨むのでしょうか。ポイントとなるのは2020年の東京五輪です。温泉は外国人に人気の観光スポットして大きな価値を持っているため、海外からの観光客がたくさんやって来ると見ています。
兵庫県豊岡市の城崎温泉では、2013年に宿泊した外国人は9584人で2011年の9倍に増えました。人気のきっかけは、世界的な旅行ガイドブック「ロンリープラネット」(英語版)。7年前に発行された号で「日本の典型的な温泉旅館街を経験するには最も適している」との評価を受け、外国人観光客が増えました。
もちろん、「大江戸温泉」も城崎で宿泊施設「城崎温泉きのさき」を経営しています。政府は2020年に向け、外国人旅行者の数を現在の年間1千万人から、2千万人に倍増させる方針です。
ベインキャピタルはその資金力を武器に、日本の観光の代名詞である温泉サービスを国内外で展開していくと見られています。
杉本勇次日本代表兼マネージング・ディレクターは、「大江戸温泉」の魅力について「ユニークかつ大変強固な地位を築いていますが、更なる大きな成長ポテンシャルを秘めています」と評価。「すかいらーく社への経営支援を通じて培った経験と実績を最大限に活かし、既存の経営陣の皆様と協働」するとしています。
今後の戦略については「全国各地への大江戸温泉旅館の新規出店加速、アジアを中心とした海外展開を通じた成長戦略を進めてまいります」 との方針を明らかにしています。