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週刊新潮、殺人容疑19歳女子の実名掲載 少年法が止められない理由
5日発売の週刊誌「週刊新潮」が、名古屋市であった女性殺害の容疑で逮捕された女子大学生(19)の実名と顔写真を載せました。少年法は、未成年者が起こしたとされる犯罪に関して、本人が特定できる報道を禁じています。ただ、罰則規定はなく、少年犯罪での実名報道はこれまでも繰り返されてきました。
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5日発売の週刊誌「週刊新潮」が、名古屋市であった女性殺害の容疑で逮捕された女子大学生(19)の実名と顔写真を載せました。少年法は、未成年者が起こしたとされる犯罪に関して、本人が特定できる報道を禁じています。ただ、罰則規定はなく、少年犯罪での実名報道はこれまでも繰り返されてきました。
5日発売の週刊誌「週刊新潮」が、名古屋市であった女性殺害の容疑で逮捕された女子大学生(19)の実名と顔写真を載せました。少年法は、未成年者が起こしたとされる犯罪に関して、本人が特定できる報道を禁じています。ただ、罰則規定はなく、少年犯罪での実名報道はこれまでも繰り返されてきました。
少年法では、61条で「氏名、年齢、職業、住居、容ぼう等によりその者が当該事件の本人であることを推知することができるような記事又は写真を新聞紙その他の出版物に掲載してはならない」と定め、実名報道を禁じています。
少年法は事件の加害少年の更生を目的としており、実名報道が将来の社会復帰の妨げになるとされるためです。
ただ、実際に「本人を推知できる」情報を掲載したとしても、そのメディアに対する刑事処分や行政命令などの具体的な罰則規定はありません。
週刊誌による少年犯罪の実名報道は過去にも事例があり、対応や反応はさまざまです。
1997年の神戸連続児童殺傷事件では、当時14歳だった加害少年の顔写真を「フォーカス」(新潮社)が掲載。このときは、書店や駅の売店などが自主的に販売中止したり、図書館が閲覧を制限したりするなどしました。しかし、読者の反響は大きく、売り切れた雑誌の誌面をコピーして売る書店もありました。
また、98年に堺市で起きた殺傷事件について、「新潮45」が実名で報道。94年に岐阜県などで起きた連続リンチ殺人事件の際には、「週刊文春」が実名に似た仮名で報道しました。いずれも、犯行当時少年だった加害者側が、プライバシー侵害などを理由とした損害賠償を求めて民事訴訟を起こしています。
しかしどちらも、社会の正当な関心事であればプライバシー侵害には当たらないなどとして、確定判決では訴えが退けられています。
こうした週刊誌の実名報道に、被害者の遺族らからは「被害者と同様、加害少年の実名も報道されるべきだ」などと後押しする声もありました。その方で、弁護士グループの一部からは「営利目的のセンセーショナリズムに過ぎない」といった批判もありました。
また、加害少年について、メディア各社が実名報道したケースもあります。
山口県光市で99年に起きた母子殺害事件では、犯行当時18歳1カ月だった少年について、新聞やテレビで匿名報道が続いていました。しかし、2012年、殺人や強姦致死の罪に問われた元少年の死刑判決が確定すると、一部メディアがこの判決を伝えるニュースから実名報道に切り替えました。
朝日新聞は当時、「国家によって生命を奪われる刑の対象者は明らかにされているべき」と紙面で理由を明かしています。一方、産経新聞は、「(死刑判決によって)更生の機会が失われ、事件の重大性も考慮」したと説明しています。
罰則規定がないことで、形骸化も指摘される少年法の「掲載禁止」。少年法やメディア論の専門家の間では、「匿名報道は、更正の精神を重視する社会の要請」とあくまで少年法を守るよう求める指摘があります。その一方で、「国民の知る権利に応えるために、掲載は各社の判断に委ねるべきだ」とケースバイケースの柔軟な対応が望ましいとする声もあります。
さらに近年は、世間の関心を集める少年犯罪が起きるたびに、ネット上では容疑者の実名や顔写真などが出回るケースが増えています。
また、週刊誌の発売後には掲載誌面のキャプチャー画像が出回ってしまい、掲載が売り上げに直接結びついた時代とは状況が異なっています。
今回の女子学生の実名報道の理由について、週刊新潮編集部は「事件の残虐性と重大性に鑑み、19歳という加害者の年齢も加味して総合的に判断した上で、顔写真と実名を報道することにした」と、朝日新聞の取材に対して話しています。
一方、日本弁護士連合会は、少年法61条について「実名報道を、事件の重大性等に関わりなく一律に禁止している」としたうえで、「改めて報道機関に対し、今後同様の実名報道・写真掲載をすることのないよう」求める談話を出しています。