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IT・科学

「ハッカソンはビジコンじゃない」 東大の硬派なコンペに強者続々

 東京大が初主催するハッカソンとして注目を集めた12月の「JPHACKS」。ハッカソンを、なぜ、東大が開いたのか。他のハッカソンイベントとは、何が違ったのか。

東京大が初主催したハッカソン「JPHACKS」
東京大が初主催したハッカソン「JPHACKS」

目次

 東京大が初主催するハッカソンとして注目を集めた12月の「JPHACKS」。決められた時間内にエンジニアやデザイナーが作品を作り出すハッカソンを、なぜ、東大が開いたのか。他のハッカソンイベントとは、何が違ったのか。

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「20年後の世界を展望する」

 最優秀賞は逃したものの、会場がどよめいた作品がある。目の前の風景を音声に変換する「Sight」だ。トンネルの中から、出口の光に近づくにつれて音が変化していくデモに、感嘆の声が上がった。

Sightのデモ。目の前の風景を音に変換している 出典: YouTube 「tunnel2」

 画像データを音声に変換することで、「見える世界をそのまま聴く」ことを目指すSight。例えば、目の前に壁があれば、壁という画像のデータが音のデータに変換されて壁を意味する音が聞こえ、赤や青などの色も、それぞれの音のデータに変わる。実用化されれば、視覚障害者も「風景を聴きながら」自由にあるくことができるという。

 開発チームのリーダー東京大工学部4年の伏見遼平さん(23)は作品紹介のプレゼンテーションでこう宣言した。

 「ハッカソンはビジコンじゃない。僕らは20年後の世界を展望している」

ハッカソンとビジコンの違いとは

 「ビジコン」とは「ビジネスコンテスト」を意味する。ビジネスになりそうなアイデアを競うコンテストだ。「ハッカソンはビジコンじゃない」と壇上で宣言したのは、なぜか。伏見さんに聞いた。

 「ハッカソンは本来、大胆で新しいアイデアを元にした技術的解決が求められているはずです。しかし、ビジネスマン、特に企業幹部や人事担当者が審査を担当することが多く、流行している技術を取り入れたものや、受けを狙ったプレゼンが選ばれやすい」

 欧米で流行したハッカソンイベントは、日本でも、昨年から今年にかけて、大手企業が主催して次々と開催するなど、本格的に広がった。ただ、短期間のイベントで作品を完成させるのは難しく、「アイデア段階の作品がプレゼンの見事さで評価される」という傾向もある。

東京大JPHACKSの発表会場
東京大JPHACKSの発表会場

エンジニアの技術が評価される文化を

 JPHACKSの運営に携わった東京大院情報理工学系研究科の木戸冬子・特任助教は「日本はエンジニアの技術力への評価や報酬が低い。海外ではそこが評価されるからこそ、新しいプロダクトやサービスが生まれやすい」と指摘する。「エンジニアの技術が評価される文化を育む」ことがハッカソン開催の目的の一つだ。

 スタンフォード大の院生だったラリー・ペイジ氏とセルゲイ・ブリン氏が生み出したグーグル、ハーバード大の学生だったマーク・ザッカーバーグ氏がつくったフェイスブック。次々と世界的なサービスが生まれる米国の大学では、ハッカソンが盛んに開かれている。木戸特任助教は「高い技術力のある学生が、ハッカソンによって実際のものづくりも経験できる」とその意義を強調する。

 

 

最優秀賞は会津大2年の五十嵐太清さん(19、左)と坂口勇太さん(20)。腕につけた機器「スピリチュアル握手」で握手するだけでスマートフォンに相手の名刺情報を送信する
最優秀賞は会津大2年の五十嵐太清さん(19、左)と坂口勇太さん(20)。腕につけた機器「スピリチュアル握手」で握手するだけでスマートフォンに相手の名刺情報を送信する

 主催した東京大情報理工学系研究科の國吉康夫教授は「大学が取り組む先端的な研究とマーケットが求める製品の間にあった差が縮まってきている」と指摘する。イベントの最後のあいさつで國吉教授はこう締めくくった。

 「20年後を展望していては間に合わない。その技術を3年後に実現するぐらいのスピード感が必要とされている」

 東京大では、来年もJPHACKSの開催を検討するという。

 

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