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署名サイト「チェンジ」が30億円調達 あの大物も続々と出資
オンライン署名サイト「チェンジ」が30億円の大型資金調達。テクノロジーやメディア業界のあの大物たちが出資。次の戦略は。
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オンライン署名サイト「チェンジ」が30億円の大型資金調達。テクノロジーやメディア業界のあの大物たちが出資。次の戦略は。
世界最大のオンライン署名サイト「Change.org(チェンジ・ドット・オーグ)」が9日、2500万ドル(約30億円)を資金調達したと発表した。社会的な問題や身近な課題を克服するため、誰もが簡単に署名キャンペーンを始められ、みんなの力で世界を変える――。その理念に共感したテクノロジー業界やメディア業界の大物たちが出資した。
チェンジ・ドット・オーグは2007年に米国の社会起業家ベン・ラトレイ氏が開設。誰でも署名キャンペーンを始められ、ツイッターやフェイスブックで拡散させることで、数万を超える署名を集めることもでき、社会的な影響力を強めている。
チェンジの発表資料によると、世界の利用者(署名者)はこの1年半で3500万人から8290万人に増加。オフィスは17カ国に増え、196カ国から利用可能に。日本国内のユーザー数も50万人に達している。
収益は広告で稼いでいる。例えば、医療問題のキャンペーンに参加した人に国境なき医師団の広告を提示する。あるいは、難民問題のキャンペーンに参加した人に国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の広告を提示するなど、社会問題への関心を広告収益に結びつけるモデルだ。米国NPO「BLABS」が社会問題の解決と収益を両立する企業(Bコーポレーション)としても認証されている。
今回の資金調達は昨年5月、米オークションサイト「eBay」創業者ピエール・オミディアが設立した投資会社オミディア・ネットワークから1500万ドル(約18億円)を調達して以来。今回はマイクロソフトのビル・ゲイツ氏、ヴァージン・グループのリチャード・ブランソン氏、ハフィントン・ポストのアリアナ・ハフィントン氏など、テクノロジー業界、メディア業界の大物たちがオミディア・ネットワークに参加する形で30億円を出資した。
チェンジは、今回の増資でエンジニアチームを強化し、三つの分野を中心に技術開発に取り組むという。
一つは、モバイル開発。パソコンではなく、スマートフォンやタブレットなどの携帯機器から、いつでもどこでもすぐに署名キャンペーンを始められるアプリなどのモバイルツールを開発する。もう一つは、政府や自治体の代表者など署名の届け先との交渉力を強化するため、署名キャンペーン主が署名の届け先と直接やりとりできるツールを開発する。また、世界中どこでも誰でもキャンペーンを開始できるよう、サービスのグローバル化もさらに進める計画だ。
創業者でベン・ラトレイ最高経営責任者(CEO)は次のようにコメントしている。
「私たちは、プラットフォームをグローバルに展開することで、効率的に人々を組織化できる世界最大のネットワークを築いてきました。この可能性をさらに引き出すため、今回、ビジネス、テクノロジー、社会起業の分野で活躍してきた出資者の皆様に参加していただけることになりました。彼らのサポートがあれば、Change.org はさらなる成長を遂げられると実感しています」
日本語版は2012年8月にサービス開始。これまでに最も署名が集まったのは今年6月、都議会の女性議員に対するヤジ問題で、ヤジを飛ばした議員の処分を求めるキャンペーンに9万1337人の署名が集まった。
このほか、日本人女性への差別的な言動を広めていた白人男性の入国阻止を求めるキャンペーンや、葛西臨海公園の保護を求めるキャンペーン、企業に動物実験の廃止を求めるキャンペーンなど、それぞれ数万人の署名を集め、大きな反響を呼んだ。
日本語版代表のハリス鈴木絵美さんは「社会的なキャンペーンという手法が日本で広まるのか、当初は疑問視する人たちもいました。だけど、具体的な課題を提示し、その声を誰に届ければ影響力を持つのか、戦略的なキャンペーンが増え、それをメディアが次々と取り上げることで影響力が増している。キャンペーンの質も量も進化しています」と話している。