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「ねじ曲げられるほど痛い」感染症 カリブ海から急拡大、日本でも

今秋はデング熱が話題になりましたが、同じく蚊が媒介するチクングニア熱という感染症がカリブ海地域で猛威を奮っています。昨年末に流行が報告され、感染者は約78万人にも。死者も出ており、厚生労働省も注意喚起しています。

ホンジュラスの首都テグシガルパで、チクングニア熱を媒介する蚊を駆除する保健従事者=ロイター
ホンジュラスの首都テグシガルパで、チクングニア熱を媒介する蚊を駆除する保健従事者=ロイター

目次

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 今秋は約70年ぶりの国内感染が確認されたデング熱が話題になりましたが、海外では同じく蚊が媒介するチクングニア熱という感染症が猛威を奮っています。昨年末にカリブ海地域で流行が報告され、その後拡大。疑い例も含めると約78万人の感染が報告されています。

 耳慣れない病気ですが、現地では死者も出ており、厚生労働省も渡航者に注意を呼びかけています。
 

チクングニア熱のリスクのある国=WHO資料から
チクングニア熱のリスクのある国=WHO資料から 出典:FORTH|お役立ち情報|感染症についての情報|チクングニア熱

チクングニア熱とは

デング熱やチクングニア熱を媒介するヒトスジシマカ=国立感染症研究所昆虫医科学部提供
デング熱やチクングニア熱を媒介するヒトスジシマカ=国立感染症研究所昆虫医科学部提供 出典: 朝日新聞

 チクングニア熱は、デング熱同様に蚊が媒介するウイルス性の感染症です。ウイルスを持つ蚊に刺さると、通常は3~7日間後に発熱や発疹、激しい関節痛などが引き起こされます。
 
 WHO(世界保健機構)によると、デング熱と症状が似ており、誤診されることもあるそうです。治療法は確立されておらず、対症療法のみ。大抵の患者は快復に向かうものの、関節痛が数カ月に及ぶケースもあり、希ですが死亡例も報告されています。

激しい関節痛が病名に

ホンジュラスの首都テグシガルパで、チンクグニア熱が疑われる発熱を訴える女性=ロイター
ホンジュラスの首都テグシガルパで、チンクグニア熱が疑われる発熱を訴える女性=ロイター

 チクングニア熱は1952年、アフリカのタンザニアで初めて流行が確認されました。その後、他のアフリカ各国や東南アジアでも流行が報告されました。
 
 ちなみに病名の「チクングニア」ですが、アフリカ東部のマコンデ族の言葉で「ねじ曲げられるもの」という意味で、関節痛に苦しむ患者を表すそうです。

カリブ海地域で昨年末から流行中

ホンジュラスの首都テグシガルパで、診療を待つ人々=ロイター
ホンジュラスの首都テグシガルパで、診療を待つ人々=ロイター

 昨年12月、カリブ海に浮かぶセント・マーチン島のフランス領側でチクングニア熱が流行。アメリカ大陸では初めての地域内感染と確認されました。以降、カリブ海諸島で感染が拡がっています。
 
 汎米保健機構(PAHO)の今月21日のレポートによれば、カリブ海諸国での感染者は、約78万人(疑い例含む)。うち150人の死者が報告されています。また感染者は、ブラジルやコロンビアなど南米にも拡がり、アメリカ大陸全体では渡航先で感染した人も含む感染者は96万4千人に上ります。

ニカラグアの首都マナグアで、蚊を駆除する保健従事者=ロイター
ニカラグアの首都マナグアで、蚊を駆除する保健従事者=ロイター

過去、インド洋で島民3分の1が感染した例も

フランス領レユニオン島の地図
フランス領レユニオン島の地図 出典: 朝日新聞

 このチクングニア熱ですが、近年は度々、地域的な流行が報告されています。
 
 05年にはインド洋地域で、猛威を奮いました。特にマダガスカル島近くに浮かぶフランス領レユニオン島では、最終的に80万人弱の島民のうち3分の1が感染。死者も増え、フランス政府は対応に追われました。

インド洋に浮かぶ仏領レユニオン島(人口78万人)で謎の伝染病が大流行し、すでに16万人が感染、1月末までに77人が死亡した。
朝日新聞2006年2月27日
死者が増えていることに仏当局は衝撃を受けている。同島は仏本土からの観光客も重要な収入源だけに経済ダメージも深刻。仏軍部隊400人を投入して蚊の撲滅作戦を始めている。
朝日新聞2006年2月27日

イタリアの村で突然流行

 また07年夏にはイタリア北東部の村で突如、チクングニア熱が流行し、騒動に。1人が死亡し、感染経路の調査が行われましたが、インド旅行から戻った村人がウイルスを持ち込んだことが原因と結論づけられました。

熱帯病とは無縁のはずだったイタリア北東部の村で07年夏、「奇病」騒ぎが起きた。 村人たちが次々に高熱と関節の痛みに襲われた。約300人が発症し、1人が死んだ。正体はチクングニヤ熱。50年代にアフリカ東部で発見されたウイルス性感染症だ。当初、移民が持ち込んだとの憶測が広がった。だが、大がかりな感染経路調査でインド旅行から戻った村人が「犯人」と判明。
朝日新聞2008年4月17日朝刊

 交通手段が発達し、渡航先からウイルスを持ち帰る人が増え、それを地球温暖化で生息域を広げた蚊が媒介する――。そんな構図が浮かびます。
 

すでに日本にも輸入例が

 すでに日本でチクングニア熱に発症した人もいます。いずれも海外で感染し、日本に戻って発症した人たちで、11年と12年に10人ずつ、昨年は13人が報告されています。

チクングニア熱のウイルスに海外で感染し、国内で発症した人も見つかっている。11、12年は10人ずつ、13年に13人、今年は7月20日までで6人に上った。
朝日新聞デジタル|成田便、やっかいな蚊も搭乗? 感染者増えるデング熱(14年7月31日)

厚労省も注意喚起

 カリブ海地域での大流行を受け、厚生労働省も26日、旅行者に蚊に刺されないように注意を呼びかける文書を海外渡航者向けのサイトFORTHにアップしました。

 具体的には、網戸など蚊をしっかりと駆除しているホテルに滞在する、長袖のシャツやズボンで皮膚の露出部を少なくするといった蚊に刺されない対策を推奨しています。

海外で流行している感染症などの情報提供をする厚生労働省検疫所「FORTH」のトップページ
海外で流行している感染症などの情報提供をする厚生労働省検疫所「FORTH」のトップページ

厚生労働省検疫所「FORTH」、海外で健康に過ごすために。

 まだ日本ではデング熱のような国内感染は確認されていません。しかし、チクングニア熱のウイルスを媒介する蚊のうち、ヒトスジシマカは近年、国内の生息域の北限を東北地方にまで広げています。

 冬場は蚊の活動が停滞するとはいえ、旅行や出張で流行地域に行かれる方は、くれぐれも感染して、ウイルスを持ち込まないようにご注意ください。

参考サイト

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