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なぜ若者は新聞を読まないのか ポッドキャストを配信して見えたこと

朝日新聞ポッドキャスト、チーフパーソナリティの神田大介

朝日新聞東京本社では、社内にあった会議室を改造して音声スタジオとして使っています
朝日新聞東京本社では、社内にあった会議室を改造して音声スタジオとして使っています

私は朝日新聞社でポッドキャスト、ネットで聴けるラジオ番組の制作をしています。20年続けた記者生活とはまるで畑違いの仕事をする中で、いま新聞が抱える課題について、見えてきたことがたくさんありました。

この連載は、もちろんどなたにも読んでいただけますが、とりわけ全国の新聞社や関連会社で働くみなさんにぜひ読んでもらいたいと思っています。日本の新聞が絶滅してしまう前に、自分たちにできることを考えてみませんか。(朝日新聞ポッドキャスト・神田大介)

短期連載:ポッドキャストで見えてきたこと(1)

新聞を読んでいる若者、ほぼ0%

若者の新聞離れは深刻です。

総務省情報通信政策研究所の調べ(2024年)によると、新聞の行為者率(新聞を読んでいる人の割合)は70代で30.5%なのに対し、30代は1.3%、20代は0.3%。10代は0.5%と壊滅的な数字です(いずれも平日の場合)。

ところが、ポッドキャストの現場では驚くべき現象が起きています。

朝日新聞社は毎年、音声広告を手がけるオトナルという会社と共同で、ポッドキャストの市場調査をしています。

リスナー層は若く、15~29歳で全体の38.2%(2024年)を占めます。高齢化が進む日本では、人口全体に占める同じ年代の割合は14.6%(2025年)ですから、いかに若い人に集中して聞かれているかがわかります。

他のメディアの利用者に占める15~29歳の割合は、TVerを含むテレビが16.1%、YouTubeで23.6%、Instagramで30.3%。ユーザーが若いイメージのあるTikTokでも37.3%でした。

【調査結果】オトナル、朝日新聞社の「ポッドキャスト国内利用実態調査」
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000086.000035509.html

さらに驚くことに、朝日新聞ポッドキャスト(愛称は「朝ポキ」)に限定すると、15~29歳で46.8%を占めます。半分近いです。

実は私自身もこの結果は驚きで、半信半疑なところがありました。

ひょっとしたら、何かのバイアスがかかっている?

でも、このポッドキャストの市場調査は2020年に始めてもう5回目で、毎回同じような結果が出てくる(むしろ若い人の割合が毎年増えている)ので、さすがに事実なんだろうと思います。(ちなみに、もうすぐ第6回の調査結果もお知らせできるはずです)

「ポッドキャストを聞く人」が若い

紙の新聞もポッドキャストも、内容はさして変わりません。

記者を呼んできて、記事に書いたことを話してもらっているだけです。

背景や余話なども丁寧に語り起こすので、1分で読める記事について1時間話す、なんてこともざらにあります。

時間的な効率、タイパは悪いわけですが、なぜ若い人が聴いてくれるのでしょうか。

同じ調査によると、ポッドキャストを聴く人の85.6%は「ながら聴き」です。

車の運転中、電車やバスの車内、家事中、歩いているとき、運動中などなど。いずれもパソコンを開く状況ではありません。

スマホにイヤホン、しかもAirPodsのようなワイヤレスイヤホンで聴くようなスタイルが多いことが想像できます。

おそらくは、スマホを使いこなしている人が若いということなんでしょう。

調査では、ポッドキャストを聴き始めたきっかけも調べています。

1位は「Spotify、Amazon Musicなどの音楽アプリでも聴けるようになったから」で、27.9%(複数回答可)。

ふだんは音楽を聴いていて、目先を変えたくなった時の選択肢としてポッドキャストがあるということです。

スマホで音楽を聴く人にも、やはり若い人が多そうですね。

つまり、ポッドキャストを聞いている人が若い。分母が若いんです。

確かに、AirPodsをしているお年寄りってあまり見かけませんよね。

この逆が新聞、とりわけ紙の新聞です。

起きていたのは「新聞の若者離れ」

われわれはこれまで、若い人に読んでもらおうとたくさんの工夫をしてきました。

どんな話題が若者に刺さるのか、文体はどうか、斬新なレイアウトにしよう、写真を多くしたら、イラストで見せたら、などなど。

その努力はもちろん大事です。

ですが、そもそも高齢の方しか読んでいない媒体に、どんな記事を載せたところで、効果は乏しいわけです。

若者がミットを構えているところに、ボールを投げていなかった。

冒頭で「若者の新聞離れ」と表現しましたが、そうではありません。これは「新聞の若者離れ」です。新聞社の方が若者から離れていたんです。

ジャーナリズムを次代へつなぐ、大きなヒントがここにあるように思います。

われわれは記事の中身、コンテンツの質ばかりを考えていなかったか。

正しいコンテンツを出せば問題は解決すると思い込んでいないか。

むしろ大事なのは、どう届けるかを考えることではないでしょうか。

記者の仕事は「書く」ではなく「伝える」。

報道とはニュースを届けることであり、いまの形での新聞を維持することではないはずです。

ニュースへの興味は失われていない

よく誤解されるんですが、私は紙の新聞がなくなっていいとか、ポッドキャストで部数の減少分を補えるとは思っていません。

むしろ、紙の読者が最後の一人になるまで踏ん張り続ける覚悟こそが必要だと考えています。焦りや不安から今の読者をないがしろにするようでは本末転倒です。

その一方で、今こそ報道という仕事の本質に立ち返るべきではないかと本気で考えているんです。

事実を伝えるために、どうすれば伝わるかをゼロから考える。ポッドキャストは、その小さな試みの一つに過ぎません。

最近では新聞社発のポッドキャストもずいぶん増えました。

従来にはない映像表現に取り組む、ウェブ上にインタラクティブな仕組みをつくる、読者の方と双方向性のあるコミュニティを築く、斬新な広告を掲載するなど、伝え方を広げる、どうすれば伝わるかを考える試みは増えているように思います。

同じようなことを考え、実行に移している仲間は全国にいるんだなあと、心強く感じています。

市場調査では「普段聴いているポッドキャストのジャンル」も尋ねています。

1位は「ニュース」(39.9%)でした。

2位が「コメディ・お笑い」(35.8%)で、以下「社会・文化」(19.0%)、「音楽解説」(17.7%)、スポーツ(16.6%)、「ビジネス」(11.5%)、「言語学習(英語等)」(11.3%)と続きます。

ニュースへの関心は高いんです。自信を持って伝え続けましょう。

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