IT・科学
ChatGPT「チャッピー」呼び、いつから広がった?X投稿を分析
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ことしの新語・流行語のノミネートが発表されましたが、その30語の中にも入っていた「チャッピー」。生成AIサービス「ChatGPT」のことをそう呼ぶ人が多いことから選ばれましたが、そもそもいつから広がったのでしょうか?(朝日新聞社メディア研究開発センター・新妻巧朗)
X(旧Twitter)でChatGPTのことを「チャッピー」と呼ぶ人をよく見かけませんか?
このChatGPTは、OpenAIが提供する対話型の生成AIサービス。質問すると回答してくれたり、文章の要約や修正をしてくれたり。アイデア出し、コーディングなど様々なことをチャットで手伝ってくれるもので、「相棒」のように使っている人もいるかもしれません。
ChatGPTは2022年11月に提供がはじまって、専門知識がなくても使えることから、仕事だけでなく学習や家事の相談役としても日常に入るようになってきました。
このChatGPTを「チャッピー」と呼ぶということですが、なんだか可愛いし語感もよいのでついつい呼びたくなってしまいますよね。
今年の世相を反映した言葉に贈られる「2025 T&D保険グループ新語・流行語大賞」(「現代用語の基礎知識」選)でノミネートされた30語にも「チャッピー」が入りました。
では、この「チャッピー」という呼称はいったいいつから広がったのでしょうか。
今回はX上の公開投稿を対象に「チャッピー」がAI関連語(ChatGPT、GPT、生成AIなど)と一緒に使われた投稿を集めて、月別に集計したり、どんな話題が言及されているかを分析してみました。
この記事では、その〝広がりの瞬間〟を数字と実際の話題から追いかけます(データはユーザローカル社のSocial Insightより集計)。
月別推移を見てみると、2024年頃は60〜190件台でしばらく横ばいでした。
しかし、2025年に入ると1〜3月は199、358、495件とじわじわ上がっていき、4月に一気に1414件と急増しました。
以降も伸びは止まらず、5月1752件、6月2776件、8月4808件、9月は8034件。1月(199件)比で約40倍に達しています。
前年同月比でも伸びは顕著で、4月は約19倍(75→1414件)、9月は約44倍(182→8034件)。4〜9月の平均は3755件で、2024年の月平均(約120件)のおよそ31倍でした。
まとめると、X上では2025年の春頃に爆発し、夏により浸透・一般化していったという風に考えられそうです。
次は、投稿を3つの期間に分けて、投稿本文をグルーピングして、どのようなことが語られていたかを見ていきます。
1〜3月、4〜6月、7月〜9月の投稿にどんな話題があったのかをテキストアナリティクスの手法でクラスタリング(グルーピング)し、GPT-5にどのようなクラスタ(グループ)があったかを要約させています。
X上の全投稿ではなくSocial Insightを経由して取得可能な一部の投稿のみを取得して分析しています。
すると、2025年初頭の「チャッピー」に言及した投稿は投稿そのものが少なく、最多の話題は「相談・学習支援のAI相棒化」というAIを相談相手や学習に使っていることを報告したり、依存リスクを検討する投稿(195件)でした。
次いで多かったのは「日常に浸透する『チャッピー』文化」で、「チャッピー」という呼び方の浸透に関する投稿(132件)、「学習・制作・業務へ広がる活用術」(123件)が続きました。
周辺には「画像生成コミュニティ」(80件)や「『チャッピー』呼称の拡散動向」(76件)、「課金判断と無料版比較」(62件)などがありました。他にピクミンというゲームに登場する「チャッピー」に関する投稿や、その多義性についての言及などもありました。
この時点では、普段遣いしている層の内側で「チャッピー」という呼称が採用されつつあり、その言及されている用途は壁打ちや小さな生成が中心という構図で、この頃はまだ相談相手や日常の伴走にChatGPTを使っている人の一部に「チャッピー」と呼んでいる人がいた、という感じだと言えそうです。
並行して、「チャッピー」という呼称そのものを面白がる反応も点在し、この時点ではChatGPTを普段遣いしている人たちの中で、ポツポツと親しみやすさを理由に「チャッピー」というあだ名を採用する声が見え始めました。
2025年4〜6月になると「チャッピー」を含む投稿が急激に増え始めます。
最多のグループは「悩み傾聴のAI相棒化」で、引き続き悩み相談関連が最多の625件、次いで「AIとの共生と批判的視点」でAIのリスクなどを指摘する投稿が548件、「創作・学習・業務のAI活用術」が344件、「日常に根付くAI相棒」が326件と並びました。
周辺では、引き続いて「画像生成コミュニティ」が283件、「献立・減量のAI伴走」が227件、「俗称『チャッピー』をめぐる反応」224件、「暮らし相談のAIの活用」で美容や健康・家事に関する相談などの投稿が168件、「課金判断のリアル」として課金への葛藤に関する投稿が154件、「『チャッピー』呼称文化の広がり」144件が続きました。
投稿量の増加に合わせて、恋愛相談や悩みの傾聴・メンタル支援や意思決定の後押しといった“人に近い役割”で、「チャッピー」が使われる割合がより拡大しているようです。
呼び方の親しみやすさがより多くの人を惹きつけたのでしょうか。
さらに、「チャッピー」という呼称が広がるにつれ、仕事フローへの組み込みや活用ノウハウの投稿でも目立つようになり、AIの情報発信をしているアカウントにも呼称が広がっていることが見られます。
一方で、単に日常利用を表明している人だけでなく、「チャッピー」呼びを知った人による擬人化への賛否やハルシネーション・過信への警鐘、料金や使いどころの見極めといった慎重な視点も同時に増えました。
ChatGPTのモデル4から5に切り替わったときことについての反応(keep4o)も、この時期に散見されます。
ChatGPTがいわゆるアーリーアダプターが試用する段階を越え、日常や業務の中に実際に入ってきていることがより実感できるような結果となりました。
2025年7〜9月はさらに急増してピークを更新。最多は「愛称『チャッピー』の初見反応と認知拡大」で、「チャッピー」という呼称を知ったことへの驚きや流行への言及などが1132件でした。
この投稿が他のグループよりも非常に多いことから、この名称が急激に広がりつつあり、それへの反応が増えていることが示唆されています。
続いて「チャッピーとの雑談に没入」として、引き続き相談相手としての言及が671件と多くみられました。
次いで、「擬人化と依存の揺らぎ」627件、「仕事・学習・生活で相棒化」582件、「友人化するAI活用」569件、「チャッピーの画像生成評価」560件、「Geminiとチャッピー比較」463件、「主要相談窓口化するチャッピー」430件、「『チャッピー』呼称の賛否両論」419件、「チャッピー課金の実態」411件と続きます。
「『チャッピー』って呼ぶ人が増えた」というメタ的な言及が一気に増加していることがわかります。また、「チャッピー」と呼ぶ人の中でも、実用的な面を語る層と、雑談や相談相手としての情緒的な付き合いを楽しむ層の二層化がはっきりしてきています。
これまでは「チャッピー」は日常の相棒としてChatGPTを使っている層で使われることが多かったところが、この時期辺りから急激により多くの人に広がっていったのではないかと考えられます。
相談相手として使っている一部のユーザが「チャッピー」と呼び始めていたところから、 徐々に採用する人が増え始めて、今年の夏頃にこの呼称のより認知・一般化していった順で広がった、という過程が見えてきました。
AIが人間の生活に入ってなじんでくることで、新しいミームや文化が形成される過程を見てみると、今後はどうなっていくのか、ちょっと楽しみですね。
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