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ドラマ「ちはやふる」で注目の競技かるた 元名人が新大会を開く理由

競技かるたのトップ選手たちが、VARや次札表示などの新システムを導入して配信される新しい大会にのぞみます。なぜこの大会が企画されたのか…主催者の元名人に話を聞きました。
競技かるたのトップ選手たちが、VARや次札表示などの新システムを導入して配信される新しい大会にのぞみます。なぜこの大会が企画されたのか…主催者の元名人に話を聞きました。 出典: SHIKIBU実行委員会提供

マンガ「ちはやふる」(作者・末次由紀)の大ヒットとともに、「競技かるた」の人気は広がり、現在はドラマも放送中です。そんななか8月11日、トップ選手が出場する新しい大会が開催されます。試合は、ビデオ審判や次札の表示システムなど、これまでにない機能を盛り込んで配信される予定ですが、そんな大会をなぜ開催しようと思ったのでしょうか?元名人の発起人に話を聞きました。

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百人一首にゆかりのある水無瀬神宮で開催

大会の発起人は、小倉百人一首競技かるたで、第65〜67期名人位の粂原圭太郎さんです。

大会を「SHIKIBU」と名づけ、小倉百人一首の99番目と100番目の歌の作者(後鳥羽院/順徳院)が祀られる水無瀬神宮(大阪府島本町)で開催されます。

小倉百人一首99番 後鳥羽院
  人もをし 人もうらめしあぢきなく 世を思ふ故に もの思ふ身は
小倉百人一首100番 順徳院
  百敷や 古き軒端の しのぶにも なほあまりある 昔なりけり

粂原さんは「実はご縁があって、昨年末ごろ水無瀬神宮の宮司さんと知り合ったのがきっかけです。実際に訪れてみたらとても神聖な、素敵なところで。ここが百人一首にすごくゆかりのある場所だと知られていないのはすごくもったいないんじゃないかと思いました」と語ります。

「そもそも藤原定家は後鳥羽院に見いだされた人です。ここをかるたの聖地として盛り上げ、さらに競技かるたの魅力をより多くの人に知ってもらいたいと考えました」

百人一首とゆかりの深い、水無瀬神宮
百人一首とゆかりの深い、水無瀬神宮 出典:SHIKIBU実行委員会提供

トップ選手の「取り」速すぎて見えない

ちょうどドラマ「ちはやふる―めぐり―」(日テレ)が放送中で、競技かるたへの注目がますます高まっています。

しかし、粂原さんは「観て楽しむスポーツとしての魅力発信はまだまだ」と指摘します。

粂原さんは「競技者としては本当に楽しいんですが、観客にどれだけ伝わっているんだろう……ということは常々思っていました。トップ選手の『取り』は、速すぎて見えないですし、札の位置が分からないと試合の展開もイメージしづらいんです」といいます。

「高度な駆け引きや集中力、戦略、メンタルが問われる競技。それがもっと伝わったら面白いのに、と思っていました」

そこで、今回の大会ではトップ選手同士が戦う3試合を、YouTubeで生配信することにしました。

1試合目は自見壮二朗名人と並河辰樹六段、2試合目は中島莉衣瑠五段と井上菜穂準クイーン、3試合目は山下恵令永世選手権者と矢島聖蘭クイーンの戦いが予定されています
1試合目は自見壮二朗名人と並河辰樹六段、2試合目は中島莉衣瑠五段と井上菜穂準クイーン、3試合目は山下恵令永世選手権者と矢島聖蘭クイーンの戦いが予定されています 出典:SHIKIBU実行委員会提供

初の試みとして、どちらが札をとったか「VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)」で判定するシステムを導入します。

配信を見ている視聴者には、次に読まれる札が分かるという「次札表示システム」も盛り込みました。

粂原さんは「次の札が分かれば、どんな展開が想定されるのか、どんな風にその札を狙っていくのかを解説者が深く解説できます。視聴者も次にとるべき札の場所が分かるので、競技者がどんな風にその札を狙うのかがしっかり見られます」といいます。

しかもこの大会、解説や読手も、名人やクイーン経験者やA級公認読手などトップレベルの人びとが担います。

解説を担当する粂原さんは、「初心者の人には面白さが伝わるように、経験者には上達のコツが学べるような、そんな解説をしたいですね。競技者の技が光ったような『取り』では、積極的にVARの動画も紹介していきたいです」と意気込みます。

「競技かるたが救ってくれた」経験

オンライン塾を運営するなど自身の仕事をしながら、再びの「名人位」獲得を目指して競技かるたの技を磨き続ける粂原さん。

そんななか、25人ほどの実行委員会のメンバーとともに大会の準備に奔走し、クラウドファンディングで開催資金を集め、スポンサーへの営業にもあたっています。

1試合目には伊藤賀一さんがスポンサーになってくれたそうです
1試合目には伊藤賀一さんがスポンサーになってくれたそうです 出典: SHIKIBU実行委員会提供

記者が「すごく大変じゃないですか?それなのになぜ自分で大会を…」と尋ねると、粂原さんは「競技かるたがなければ、自分はいないと思っているからです」ときっぱり。

小学5年生の時にかるたを始め、のめり込んだ粂原さんは、京都大学かるた会を団体戦初優勝へと導くなど活躍していました。

3試合目のスポンサーは「櫻井将棋塾」がついてくれました
3試合目のスポンサーは「櫻井将棋塾」がついてくれました 出典: SHIKIBU実行委員会提供

しかし8年ほど前、プライベートや仕事で精神的に参って寝込んでしまっていたそうです。

そのとき、大学の後輩から誘われ、名人戦の西日本予選に出場。これまで10試合やっても一度も勝てなかった元名人にも勝つことができ、西日本の代表になりました。

「かるたの配置を暗記して、音に集中して、体を動かす。それを繰り返すことで、気づけば、頭の中にあったモヤモヤがなくなっていったんです」

「死んだ方がラクなんじゃないかと思うぐらい追い詰められていたところを、競技かるたが救ってくれました」といいます。

末次由紀さんもクラファンを応援

そんな粂原さんの「やりたい」という思いに、実行委員会のメンバーも全力で伴走してくれているのだそう。

粂原さんは「みんな競技かるたが大好きで、とりつかれているメンバーです(笑)。自分の好きなものって広めたいじゃないですか」と笑います。

クラウドファンディングには、マンガ「ちはやふる」の作者・末次由紀さんも応援のメッセージを寄せ、リターン品のイラストを描き下ろすなど全面的に協力してくれています。

マンガ「ちはやふる」作者の末次由紀さんも、応援メッセージを寄せています
マンガ「ちはやふる」作者の末次由紀さんも、応援メッセージを寄せています 出典:SHIKIBU実行委員会提供

粂原さんは「競技かるたの面白さを発信しようと活動していることが、かるたの競技にも好循環になっています。最近、かるたの調子もいいんですよ。水無瀬神宮で開催できるこの大会を通して、競技かるたの魅力を伝えられることにワクワクしています」と話しています。

競技かるたの新しい大会「SHIKIBU」は8月11日に開催され、YouTubeで3試合が配信されます。

粂原さんを代表とするSHIKIBU実行委員会ではクラウドファンディング(https://camp-fire.jp/projects/861244/view)で開催資金を募っています。

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