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〝恐竜研究者〟を諦めて〝画家〟に 「自分にしか描けない絵を模索」

水墨画で恐竜を描いています

恐竜画家のCAN(きゃん)さん
恐竜画家のCAN(きゃん)さん 出典: 本人提供

目次

学生時代に〝恐竜研究者〟をめざしていた女性がいま、〝恐竜画家〟として活躍しています。墨と筆で描く作品は、「恐竜博2023」の公式グッズにもなりました。活動を通じて、「子どもたちに『恐竜ってこんなに素敵で、こんなに面白いんだよ』と伝えたい」と話します。

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「恐竜のこと、まったく知らなかった」

〝恐竜画家〟として活動しながら、大阪市中央区で「創作空間caféアトリエ」を経営しているCAN(きゃん)さん。絵本の出版や特別展「恐竜博2023」の公式グッズに携わるなど活躍しています。しかし、大学時代の夢は〝恐竜研究者〟でした。

恐竜に魅せられたのは高校2年生のとき。テスト勉強をするために通っていた地元の図書館で、休憩時間に地球科学の本を読むことが日課になっていました。

ある日、恐竜の論文集のような分厚い本を開くと、衝撃が走りました。「私、恐竜のことまったく知らなかった」

人類の歴史は1000万年に満たないのに対し、恐竜は1億6000万年もの間、繁栄していたのです。

「そんなに長い間地球上にいたのに、たった1回隕石が来ただけで絶滅したのかと思ったら、そのときの地球環境の変化ってどんなにすごかったんだろうとおもしろくて。学校の勉強はそっちのけで、ずっと恐竜の勉強をしていました」

恐竜画家のCAN(きゃん)さんの作品=本人提供
恐竜画家のCAN(きゃん)さんの作品=本人提供

子ども時代から墨で半紙に絵

CANさんは科学好きな父の影響で、幼い頃から動物園や博物館、科学館に通っていて、科学は身近な存在でした。

父からは、「なんで空は青いと思う?」「太陽までの距離はわかる?」とマニアックな質問をされましたが、考えることが楽しかったといいます。

同時に絵を描くことも大好きでした。書道が趣味の祖母の部屋で、小学生の頃から半紙に墨で絵を描いていたそうです。

中学校では美術部に入り、高校でも引き続き絵を勉強して芸術大学への進学を希望していました。

しかし、家族の反対もあって進路を変更。「大学へ行かずに画家になる人もいるし、本気で画家になりたかったら独学でできる」と考え、信州大学理学部に入学して恐竜や地球環境などを学びました。

恐竜画家のCAN(きゃん)さんの作品=本人提供
恐竜画家のCAN(きゃん)さんの作品=本人提供

「研究者」を諦め、カフェオーナー兼画家に

大学では「恐竜研究者」をめざしましたが門戸は狭く、当時は卒業後に海外で研究実績を積む必要がありました。

「大学も奨学金をもらって通っていたので、海外で勉強するとなると経済的に難しいと思い、就職しました」

大学での学びをいかし、「地球のために水をきれいにする仕事に就きたい」と水質処理の技術職として働きました。しかし、長時間労働や休日出勤など職場環境が厳しく、1年で退職したそうです。

カフェ巡りが趣味で「ゆくゆくはカフェの経営もやりたい」と興味を持っていたCANさんは、退職後、カフェの開業に向けて経営を学びました。

2017年、大阪に「創作空間caféアトリエ」をオープン。コンセプトは「大人のための美術部カフェ」です。長時間利用を想定した時間料金制となっていて、作家やデザイナー、小説家など創作活動をする人たちが集まります。

CANさんはカフェをオープンする前にイラストレーターとしての仕事も始めていて、「絵描きさんが集まる店があったらいいのにな」と考えていたそうです。

イラストレーターとして恐竜の絵を描き始めたのは2018年。それまでは女の子のイラストを中心に描いていましたが、「自分にしか描けない絵を模索」し、「恐竜」にたどり着きました。

筆ペンで20万人以上の似顔絵を描いてきた似顔絵師の薫陶を受け、本格的に水墨画の道に進みました。
「#1日1恐竜」というタグをつけてSNSに恐竜の絵を毎日投稿すると、カナダの恐竜研究者から連絡が来たり、出版社の目に留まって絵本の出版につながったりしました。

自身の絵本にイラストとサインを描く様子。Instagramでも発信しています=恐竜画家CANさん提供
自身の絵本にイラストとサインを描く様子。Instagramでも発信しています=恐竜画家CANさん提供

子どもたちに魅力を伝えたい

CANさんが1番好きな恐竜は、植物食恐竜の「パキケファロサウルス」です。「恐竜の中でも特に多様性が表れています」と話します。

「肉食恐竜も、にわとりぐらいのサイズから20m近くのものまでいますが、植物食恐竜はもっと多様です。肉食恐竜から食べられなくするために体が大きくなったタイプや、トリケラトプスのようにえり飾りが大きく角があるタイプ、体がトゲトゲしているタイプなど、様々な試行錯誤を繰り返してきているのだと思います」

「パキケファロサウルスはとても不思議なんですよ。頭蓋骨が20cmくらいの厚さなんですけど、何が起こったらそうなるのか分からないですよね。いろいろな環境に適応して恐竜が生きていたという証拠で、それが本当におもしろいです」

「博物館に行ったら、恐竜が何でこんなにも違うのかというところに疑問を持つともっと楽しめると思いますよ」

画家としての今後の活動については、「全国の子どもたちと直接出会えるイベントなどの場で、『恐竜ってこんなに素敵で、こんなに面白いんだよ』『地球科学を勉強すると楽しいよ』と伝えていきたいです」。

海外進出にも関心があり、ゆくゆくは研究者の知り合いがいるカナダで個展を開きたいと話しています。


  ◇  ◇  ◇

画家ブログ:https://dinocan.com/category/blog/
インスタグラム(@dinocan2018):https://www.instagram.com/dinocan2018

 

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