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年末年始がつらい「でも帰省しないと」カウンセリングに吐露した本音
もうすぐ年末年始。デパートのおせち商戦のニュース、クリスマスのデートスポットの紹介――。キラキラした街のムードに、置いてけぼりにされてしまうような気持ちになったことはありませんか。専門家は「年末年始をつらく感じる人は少なくない」と言います。声を集めました。(朝日新聞記者、関口佳代子)
都内でカウンセリングオフィスを営む公認心理師の植原亮太さんに話を聞きました。家族問題に取り組む、「ルポ 虐待サバイバー」の著者でもあります。「年末年始がつらい」という訴えをする人の多くは「元々持っている『居場所のない感覚』が、この時期に強くなる」と言います。
「世間が家族だんらんムードを押し付けてくるからでしょう。年末年始が近づくにつれ、おせちやクリスマス商戦のニュースが流れます。家族がクリスマスケーキやおせちを囲んで楽しそうにしている。恋人同士も親密に過ごしている――。人間は社会的な生き物ですから、メディアやSNSなどを通じて見せつけられる『社会の多数派』に沿おうとしてしまいます。しかし、自分はどこか周囲とは違う——。そういうズレで苦しんでしまい、年末年始は家族との嫌な記憶を思い起こさせる時期になるのです」
「帰省しなくてはいけない、と思い悩む人もいます。家族を愛さなきゃいけない、と深刻に考えてしまうようです」
「年末年始がつらい」というテーマで朝日新聞がアンケートを募ったところ、親と顔を合わすのがつらい、家族だんらんの圧力を感じる、メディアから流れるニュースが苦手ーーなどの意見が寄せられました。
◆奈良県 女性 40代
年末年始のあの独特な雰囲気が楽しいと感じることもあるが、同時に「楽しまないと」という圧力も感じる。元々自分の生活のペースがゆっくりな方なので、世の中のタイミングとのズレがたくさん生じてうまくいかなくなる。(仕事納めで前倒しで仕事する、病院にかかるタイミングなど)
私は虐待サバイバーというわけではないが、複雑な家庭で育ったため、「家族だんらん、帰省、親戚集まってワイワイ」の感覚がわからないし、実際そういうことをしたことがない。
いつも一緒に居るパートナーが帰省する時、どうしても寂しい気持ちになって、それを伝えてしまう自分にも罪悪感を感じる。(パートナーが帰省することは悪いことではないので)
◆東京都 20代
クリスマス前になるとパートナーがいるいないの話題が増え、1人であることが寂しいことのように語る場面に遭遇することが増える。
誰かといたい人はいればよいし、いたくない人いなくていいはずなのに、誰かといることや、それが愛する恋人であることが素晴らしいことかのような雰囲気になることが多く、居心地の悪い思いをする。
また、実家に帰省することが当たり前かのように話される、帰らないと何か家族間で摩擦があるのではと邪推されることがあり居心地が悪い。帰っても帰らなくても好きに過ごさせてくれ~と思う。
◆神奈川県 女性 60代
子どもの頃から年末年始母の感情が高ぶり常にイライラし不穏な状況の家庭でした。
本家なので親戚を招かねばというプレッシャーに狭量な母の器が合わなかったのでしょうが、毎年毎年怒鳴り暴れ泣きわめく日々だったので年末は恐怖を感じ育ちました。そのため私自身も年の瀬が近づくと気持ちが暗くなります。母の様にはならないと決めているので、クリスマス、大掃除、義実家の正月とやるべきことを淡々とこなし、母の代わりに親族を自宅に招いて新年会をしていますが、染みついた実家母の不穏癖の世話もあり、それら全て内心は反吐が出るほど嫌いです。
いつか母や義両親が他界したら、親戚との集まりは全てキャンセルし、のんびりと過ごすつもりです。
◆三重県 女性 50代
自分自身がつらいと感じたのは、幼い子どもを連れて離婚し、子どもと2人になった頃です。大型スーパーでにぎやかなクリスマスソング、楽しそうな家族連れ。我が子に寂しい思いをさせているのかなあと自分を責めました。
その後、新しいパートナーと出会えて家族ができ、すっかり忘れていました。今回のアンケートで改めて思い出しました。自分自身が体験していてもその環境から長く離れていると忘れてしまうのだなあと感じました。
今、あの頃の私と同じように寂しさや自責の念を感じている人にそっと寄り添える人間になりたいです。