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IT・科学

なんとか閉幕したCOP29 「沸騰化」防止のアクションは…

「SWiTCH」代表理事・佐座槙苗さんのCOP報告

SWiTCH代表理事の佐座槙苗さん。COP29では「若者代表」として、日本政府団の一員に名を連ねている。COP参加は今年で3回目。
SWiTCH代表理事の佐座槙苗さん。COP29では「若者代表」として、日本政府団の一員に名を連ねている。COP参加は今年で3回目。

目次

世界約200カ国が集まって、地球規模の温暖化対策を話しあうCOP29(国連気候変動会議)に、環境団体の代表理事を務める佐座槙苗(まな)さん(29)が参加しました。「会議ばかりじゃなくて、老若男女が集まるフェスのよう」と佐座さん。縁遠いCOPの会場はどんなところで、何があるのか。現地リポートをしてもらいました。(構成/朝日新聞be編集部・斎藤健一郎)

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佐座槙苗(さざ・まな):循環型の社会づくりに取り組む環境団体、一般社団法人SWiTCH代表理事。1995年生まれ。高校卒業後、カナダ・ブリティッシュコロンビア大学で学び、ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドン大学院へ。COP26・COP28・COP29に日本代表として参加

7万人参加で「環境フェス」のよう

こんにちは。佐座槙苗です。普段は若い世代と社会を結び、持続可能な世界を実現しようと活動する団体「SWiTCH」で代表理事として活動しています。
 
今回、日本政府団の一員としてCOP29に参加するためにアゼルバイジャンの首都バクーに行ってきました。東ヨーロッパと西アジアの境にあり、カスピ海に面する国です。

北海道より少し小さい国土に、神奈川県より少し多い約1千万人が暮らしています。日本からはトルコで乗り換えて2日間の道のりでした。
 
みなさんはCOPにどんなイメージを持っているでしょうか。日本でニュースを見ていると、各国の政治家や政府代表が、大きな会議室で地球環境という大きなテーマで議論を繰り広げているイメージで、少し縁遠く感じるかもしれません。
 
たしかに、COPの大事な役割の一つは、温暖化を通り越して「沸騰化」しているともいわれる地球を守るために、約200の国それぞれが守るルールを決めることです。ただそれはCOPの一面に過ぎません。
 
今回はニュースではなかなか見られない、COP会場の雰囲気をお伝えしていきましょう。
会場には国籍も年齢もさまざまな人が集まっていてにぎやか=写真はすべてSWiTCH提供
会場には国籍も年齢もさまざまな人が集まっていてにぎやか=写真はすべてSWiTCH提供

今回で29回目の開催となったCOP29には約7万人が参加したといわれています。

会場となった首都バクーのスタジアムに集まったのは各国の政府関係者だけではありません。環境団体やNGO、企業関係の人たちもいました。

大人に手を引かれて歩く小学生の姿もありました。国籍も年齢も立場もさまざまな人が集まって、にぎやかな雰囲気です。イメージでいうと、「会議」というよりは環境の「フェス」ですね。

各国が力を入れるブース 印象的だった国は――

いろいろな国々がブースを出していて、参加者はその展示物を見たり、開かれるセミナーに参加したりしています。

私は今回はジャパンパビリオンでセミナーを主催するために日本政府団として参加しています。

ジャパンパビリオンは最新の技術の展示に力を入れる
ジャパンパビリオンは最新の技術の展示に力を入れる

これまでCOP26、28にも参加し、今回で3度目のCOPですが、開発途上国がこれまで以上に力を入れてブースづくりをしているのが印象的でした。特に印象的だったのはウクライナとブラジルのブースです。

ウクライナは、ロシアとの間で続く戦争がどれだけ国土にダメージを与えるかを可視化する展示をしていました。

銃弾で傷ついた本物のソーラーパネルや、ダムが決壊して緑豊かな草原が数カ月で干上がった荒れ地に変わった様子などに衝撃を受けました。改めて、戦争が人にも、環境にも深刻なダメージを与えることがよくわかります。

ウクライナブース。戦争での環境被害は71億ドルに達したというメッセージがあった
ウクライナブース。戦争での環境被害は71億ドルに達したというメッセージがあった

ブラジルは次回、COP30の開催国ということもあって、気合の入れようが違いました。

ブースは、派手でカラフル。木材をふんだんにつかった会場はアーティスティックで参加者の目を引いていました。

大規模伐採や農地開発などでアマゾンの消失が問題になっている中で、アマゾンの住人である先住民族の知恵も借り、立場の違うたくさんの人と対話しながら、環境保全をはかっていこうという姿勢が感じられました。

カラフルなブラジルのブース。今回、日本の小中学校や高校などとオンラインで結んでCOPツアーも開催した
カラフルなブラジルのブース。今回、日本の小中学校や高校などとオンラインで結んでCOPツアーも開催した

ジャパンパビリオンは、技術推し! 水素エコシステムだったり壁面発電だったり、企業の最新環境技術が紹介されていました。

会場には軽食を食べられるカフェテリアのような場所も用意されています。

忙しくてなかなかゆっくり食べたり飲んだりしている暇がないのですが行ってきました。コーヒー1杯にお菓子がついて、値段は1500円くらい。高い! サラダボウルも同じくらい。

ワインなどのお酒を売っているコーナーもありました。

ギリギリの交渉を終えて、ほっとしたところで一杯、飲むのでしょうか。決済はクレジットカードで済むので、こちらに来てから現地通貨は一度も使いませんでした。

参加者に水筒のプレゼント。これでペットボトルを使わず、各所にあるサーバーから水を補給できる
参加者に水筒のプレゼント。これでペットボトルを使わず、各所にあるサーバーから水を補給できる

それ以外に、各国のブースでも、飲み物をふるまってくれる国があります。

アフリカの国が特産のコーヒーでおもてなししていたり、トルコがお茶を出していたり。残念ながらジャパンパビリオンにはおもてなしドリンクがありません。

飲み物やお茶菓子をいただくと足を止めるのでコミュニケーションが生まれるきっかけにもなるので、次回から日本にもあるといいなと思います。

会場内のカフェテリア。なかなかゆっくり休む暇はありません
会場内のカフェテリア。なかなかゆっくり休む暇はありません

なんとか閉幕のCOP 変化の予感も

今回のCOPでいいなと思った点は、会場に明らかに若者の姿が増えていることです。

気候変動の影響をより大きく受ける若い世代が、問題意識を持ってたくさん参加しているのはとてもいい傾向だと思います。

それと、これまでのCOPでは、「いま、こんなに大変なことになっている」と危機を訴えるメッセージが多かったのですが、今年はその危機を理解した上で、どう私たちがアクションしていくか、一歩進んだメッセージが多くなった印象を受けました。

これは一方で、主張が弱くなっているというとらえ方もできるかもしれません。

今回のCOPはアルゼンチンの大統領が序盤で代表団を帰国させたり、議論をまとめるはずの議長国アゼルバイジャンの大統領が化石燃料を「神の恵み」と言って、使用抑制の流れに反発したりと荒れた展開になりました。

会期を2日延ばして交渉がまとまり、なんとか24日に閉幕しましたが、各国パビリオンのあるゾーンは気候変動対策に前向きな空気でにぎわっていました。

アゼルバイジャンでのCOPは閉幕しましたが、わたしのCOPは日本に帰ってからも続きます。
29日は渋谷に若い世代や、COP参加企業、自治体、研究者が集まってディスカッションする「SHIBUYA COP2024」を開催します。

若者も大人世代も、同じ未来をめざしているわけですから、世代も業界も国境も超えて力を合わせていきたいです。

COP会場での活動や現地の様子を、佐座さんからwithnewsでリポートしていただきます。不定期配信でお届けします。

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