ネットの話題
本棚の奥から〝夕市〟のチラシ 漫画家志した父、「愛ある」イラスト
「古くささ」を良さと捉えてもらった
父が手描きしたスーパーのチラシが出てきた――。そうSNSに投稿した画像には、ウサギや擬人化した野菜、お腹を抱えているネズミの姿などが優しいタッチで描かれたイラストが写っており、大きな反響を呼んでいます。「レトロ」な絵柄を「古くさい」と感じていたという描き手は、「懐かしい」という反応に力をもらったといいます。
SNSで話題になったのは、KIMMYさんが投稿したもの。父親が手描きしたスーパーマーケットのチラシをいくつか添付したポストです。
《父親は昔、勤めていたスーパーマーケットのチラシを手描きで作ってたんだけど..
その時の原稿が出てきた
まんまるくてレトロかわいい
夕市って言葉いいなぁ》
父親は昔、勤めていたスーパーマーケットのチラシを手描きで作ってたんだけど..
— 𝗞𝗜𝗠𝗠𝗬 (@U_taro27) October 26, 2024
その時の原稿が出てきた
まんまるくてレトロかわいい
夕市って言葉いいなぁ🥹 pic.twitter.com/lkFCP7DUYu
投稿には、14万件の「いいね」がつきました。「愛のある絵」、白黒で描かれているからか「塗り絵したくなる」、「物語性があって楽しい」など、多くの感想が寄せられました。
「楽しみにしている子どもがたくさんいただろうな」という感想には、KIMMYさんが「お隣の町からわざわざ来てくれる子もいたそうで、それがまた描く楽しさになっていたみたいです」と応じるやりとりもありました。
KIMMYさんによると、このチラシは、実家の模様替えの手伝いをしている際、「本棚の奥」からでてきたのだといいます。
「父の絵は見慣れていましたが、これを初めて見た瞬間は『うわぁ〜!可愛い!』と、つい声が出ました」と話します。
神奈川県でスーパーの店長を務めていたKIMMYさんの父は、スーパーの看板やポップ、牛乳パック、お店のロゴなども手がけていました。チラシもその一貫で描いていたものだそうで、1985年から1990年初頭にかけて配られていたものだといいます。
KIMMYさんの父は「新たに『夕市』のイベントを始めることになり、その広告のためにチラシを制作をはじめたのだと思います。子どもから大人まで、見てくれた人みんなが少しでも親しみを感じてくれたら良いな、と思って描いていました」と振り返ります。
チラシ発見の瞬間は「一気に当時に引き戻された感覚で、懐かしかった」といいます。
一時は漫画家を目指していたこともあるというKIMMYさんの父。チラシについては、「正直なところ、ただただ絵を描くことが楽しい、見てくれた人が喜んでくれて嬉しい、という気持ちで描いてた面もあります」と話します。
KIMMYさんによると、「父は退職してからは特に、ずーっと家で絵を描いている」。
父のアクリル絵や油絵のオンライン販売を手伝うこともあるそうですが、今回のチラシのようなペン画だったり、漫画を見ることはほとんどなかったといいます。
KIMMYさんは「私が小さい頃は、漫画を描くときに使うカブラペンが常に机に置いてあったり、自分の持ち物にマジックペンでキャラクターを描いてもらったりしていました。その時の記憶が蘇ってきた感じで懐かしく感じました」と語ります。
今回、自身の絵が広く拡散されたことについて、KIMYYさんの父は「夢にも思っていなかったことで、こんなにたくさんの反響をいただいたことに驚きを隠せず、嬉しい気持ちでいっぱい。いまだに信じられない」とコメントします。
日常的に絵は描き続けていると言いますが、今回を機に「ほとんど描くことがなくなっていた」という、漫画やキャラクター絵を再開しようと決意したといいます。
投稿したことで、父の新たな挑戦を後押ししたKIMMYさんは「こんなにたくさんのリプを頂いた中で、そのどれもが優しく温かい内容だったことに、感動しています」。
「父は高齢ですが、いまも絵を描き続けていますし、まだまだ絵に対する情熱があります。今回はその背中を後押ししてくれる出来事となり、みなさんの温かいお言葉に大変感謝しています」
また、イラストにどことなく懐かしさを感じる声も寄せられたことについて、KIMMYさんの父は「自分はこのようなテイストでしかキャラクターを描けないし、手描きしか方法がないため、それは古臭く、時代に合っていないと思っていました。でもそれを逆に良さと捉えていただけるなど思ってもみなかった」と驚いています。
一方でKIMMYさんは、「テクノロジーは進化し、人の関わり方も変わってきていますが、進化と同時に何かが失われていく寂しさを感じている方も多いのかな」と感じたそうです。
「これからも父の絵がその寂しさのようなものを少しでも癒せる存在となれば嬉しいです」
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