連載
#10 U30のキャリア
〝海外で働く20代〟音声で紹介 「当たり前じゃない」に気付いてから
周りにロールモデルがいないと知り得ない「道」
世界には想像以上にたくさんの選択肢があることを示したい――。そんな思いで、海外で働く20代の女性をインタビューするポッドキャストを、22歳の会社員が続けています。
スウェーデン留学を経て現地のH&Mに就職した人や、Christian Dior本社で働きながら、フランスの大学院に通っている人――。
ポッドキャスト番組「海外ではたらく私たち20's」では、海外で活躍する20代の女性に、海外で働くことを決めるまでのストーリーを聞いています。
聞き手で製作者でもある田岡栞菜さんは、大学を卒業し東京の会社で働き始めて1年目。番組は「趣味」で作っているそうですが、その根幹には「当たり前だと思っている世界は、当たり前ではないと知ってほしい」という思いがあります。
田岡さんは北海道石狩市出身です。1学年70人ほどの中高一貫校で学び、友人の多くは道内の大学に進学する「狭いコミュ二ティーでした」と振り返ります。
中学生の頃から課外活動などを通じて道外や海外のことにも関心があった田岡さんは、慶応義塾大学に進学しました。起業を志したり、留学の選択肢も身近な友人たちに囲まれた4年間でしたが、卒業を目前にふと気付いたことがありました。
「大学生になってから、こんなに多種多様な人がいる環境が当たり前になっていたけど、これって当たり前じゃないよな」
毎週顔を合わせる同じゼミの友人の一人は、休学して起業したり、はたまたそれを売却して新規事業を展開したり――。
刺激を受けつつも、「もし私がここにいなかったら、知ることのなかった世界だ」という思いが、ふつふつとわき起こってきたといいます。
誰もが無条件には知ることはできないこの世界のことを、もっと多くの人に伝えたい――。
そんな思いから、今年2月から発信のための方法を模索し始めました。
4月からは会社員としての生活が控える中でもあったため、発信の方法は、動画などに比べて編集作業が簡便な印象があるポッドキャストに決めました。
初回のゲストは、外資系商材メーカーで働きつつ、SNS運用の副業をしている学生時代の先輩。
ただ、周囲からアドバイスをもらう中で、発信の軸をより明確にする必要があることを指摘されたといいます。
模索する中で見つけた軸が、「20代で海外で働く女性」へのインタビューでした。
「海外ではたらく私たち20's」はこれまでに16回の配信を重ねています。最新回でインタビューしているのは、ドバイを拠点にエミレーツ航空の客室乗務員として働きながら、リモートで日本国内の大学院の修士号を取得した女性に話を聞いています。
実は田岡さんも、2年前の就職活動の際、就職を希望する先に客室乗務員の選択肢もあったといいます。
ただ、自分自身のキャリアを考えたときに、「海外を飛び回りながら家庭を築くことはできるだろうか」「もし海外で働き始めたら自分の性格上、仕事とプライベートの両立が難しいかも知れない」と不安が先立ち、国内の大手企業に就職を決めたそうです。
現在の選択に「後悔はまったくない」といいますが、田岡さんは、自身も含め「20代の女性」には特有のキャリアの悩みがあるのではないかと感じているそう。
ポッドキャスト「海外ではたらく私たち20s」でインタビューをしていると、「そんな選択肢もあったのか」と気付かされる日々だといいます。
「最も驚いたのは、フランスに住んでいるゲストの方から、出産や育児などのライフイベントに合わせて学校に戻る女性が多くいるというエピソードでした」と田岡さん。
産休や育休中に大学院に通うことで、時間を有効に使いながらキャリアを停滞させずにステップアップできる選択肢があることに気付かされましたといいます。
さらに、学生ビザで海外の大学院に進学し、その間にインターンを通じて実績を積むことで、卒業後の現地就職を目指すという、実践的で地に足のついた海外での働き方があることも知りました。
「インタビューをしていると色んな道があることに気付かされることが多いです。周りにロールモデルがいないと、なかなか知り得ない『道』だとも感じました」
現在、田岡さんの元には「番組製作に協力したい」「ゲストの方と同じように海外で働きたいと思っているけど、どうしたらいいか」といった声が徐々に届きだしているといいます。
田岡さんは「まずは番組を続けることが大きな目標です」としつつ、ポッドキャストでの海外で働く20代女性へのインタビュー発信だけでなく、コミュニティー運営などにも関心があり、「無意識の思い込み」に気付くきっかけを提供するような活動をしていきたいと展望を語ります。
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