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お金と仕事

「おこづかい制度」に一石 野菜を育て〝親に売る〟原点は自身の経験

アイデアはビジネスコンテストで最優秀賞に選ばれました

おこづかい制度を「廃止」するためのキットを販売するユニコーンポポのメンバーたち
おこづかい制度を「廃止」するためのキットを販売するユニコーンポポのメンバーたち

目次

「おこづかい制度よりも子どもの成長に役立つことがあるのでは?」。子どもの頃、月々のおこづかいをもらったことがないという女性が、小中学生の意見を採り入れながらおこづかい制度を「廃止」するためのキットを作りました。そのアイデアはビジネスコンテストで最優秀賞に選ばれ、製品化すると想定の3倍を超える注文があったそうです。開発に込めた思いを聞きました。

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栽培した野菜を親に販売して収入に

「おこづかい廃止」を掲げて、おこづかい制度から卒業するためのキットを作ったのは、スタートアップ企業の代表・永野天実さん(22)です。

キットは、専用のLEDと水を使って室内で野菜を栽培できる道具と、ネットショッピングができる専用のアプリで構成されています。

おこづかい制度から卒業するためのキット「ユニコーンラボ」
おこづかい制度から卒業するためのキット「ユニコーンラボ」 出典: ユニコーンポポ提供

子どもがほうれん草やレタスといった野菜を栽培・収穫し、親や祖父母らにアプリを通じて販売することで、毎月のおこづかいがなくても収入を得られる仕組みです。野菜の価格は決まっていないため、子どもたちが考えて値付けします。

対象年齢は6~15歳。栽培は比較的簡単な野菜で、20~30日程度で収穫でき、キットでは最大48株が作れるそうです。大きさは高さ85センチ、幅65センチで、価格は税込み3万2780円。かかるのは初期費用のみで、その後はアプリ上でやりとりします。

おこづかい制度から卒業するためのキット「ユニコーンラボ」
おこづかい制度から卒業するためのキット「ユニコーンラボ」 出典: ユニコーンポポ提供

開発には小中学生20人以上と、保護者の協力を得ました。実証実験の結果、1カ月で48株育てた子どもは平均2000円の収入があり、おこづかいをもらっていたときの2倍以上に増加したそうです。

親も、月々のおこづかいをなくして子どもから野菜を買うことで支出を減らすことができ、「Win-Win」の関係になると永野さんは話します。

金融広報中央委員会の2015年の調査では、約70%の小学生、約80%の中高校生がおこづかいをもらっているという結果が出ました。月1回おこづかいをもらう場合の金額は、小学校低学年で平均1004円、中学年は864円、高学年は1000円。中学生になると2536円となり、高校生では5114円でした。

お菓子作りで収入を得た〝成功体験〟

おこづかいに頼らない発想は、永野さん自身の成功体験が原点となっています。

決まった額のおこづかいをもらったことがないという永野さん。代わりに趣味を活かして〝家庭内起業〟をしていました。

「お菓子作りが好きだったので、小学1年生くらいから母や祖母にケーキを作って、数百円で販売していました」

小学生時代の永野さん
小学生時代の永野さん 出典: ユニコーンポポ提供

新しいケーキの型や材料がほしいと思えば、家族に手作りのお菓子を販売して収入を得る。作る度にレベルアップし、凝ったお菓子を作るとより高い値段で買ってくれるーー。

お菓子を食べた家族から、「おいしい」「ありがとう」と喜ばれることもモチベーションとなり、相手の好みに合わせた〝商品〟作りも意識するようになったといいます。

「おばあちゃんは入れ歯があるから柔らかいお菓子を作って販売する。お母さんはチョコレートが好きだから、チョコレートのお菓子を売るようにしていました。振り返ると、家族の好みを考えながらマーケティングを学び、自然と分析をしていたように思います」

お菓子作りの腕を磨いた結果、今ではホールケーキやカヌレ、マカロンなどあらゆるお菓子を作り、「ぽぽてんスイーツ」のアカウントでSNSで発信しています。YouTubeやInstagram、TikTokの総フォロワーは60万人を超えました。

永野さんが作るお菓子
永野さんが作るお菓子 出典: ユニコーンポポ提供

「工夫次第」で何でもできる

昨年、自身の経験をもとにした「おこづかい廃止」のアイデアを、日本マイクロソフトなどが企画するビジネスコンテスト「IDEACTIVE JAPAN PROJECT」の「ひらめきアイデアコンテスト」に応募。見事、最優秀賞に選ばれました。

コンテストの実行委員長は、「単なる子ども向けサービスで終わらず、新たなビジネスの種を育むきっかけになる将来性を感じた」と評価したといいます。

製品化して今年6月に発売すると、想定の3倍を超える申し込みがあったそうです。「思った以上に多くの方が興味を持ってくださいました。子どもへの教育にもなりますし、野菜の値段も高騰しているので節約にもなると思ってもらえたのかもしれません」

野菜が苦手でも、自分で育てた野菜は食べられたという子どももいました。親に野菜を買ってもらうために、自分が「消費者」となってモリモリ食べるサイクルもできるといいます。

実証実験で子どもが売り上げをまとめたメモ
実証実験で子どもが売り上げをまとめたメモ 出典: ユニコーンポポ提供

実証実験に参加している子どもたちにヒアリングするなかで、お金の勉強や社会への関心の高まりも感じたという永野さん。近所のスーパーで野菜の値段を調べ、親にたくさん買ってもらえるように「スーパーよりも安い」とアピールする子どももいたといいます。

ネットショッピングもできる専用のアプリは、遠方に住む祖父母ともつながれます。祖父母が孫にキットを買いたいという問い合わせもあり、「コミュニケーションの新しいかたちになっている」と永野さんは話します。

ほかにも、野菜だけではなく、料理を作る「夕食券」をアプリで販売するのもいいと話します。アプリ内のコンテンツとしても、料理のレシピを掲載していくそうです。

「子どもたちに、社会は自分の工夫次第で楽しくなるということを伝えたいです。成功体験を積み重ねていってほしいなと思います」

「おこづかい廃止」のキット「ユニコーンラボ」の詳細は販売元ユニコーンポポのサイト( https://www.unicorn-labo.com/ )から。

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