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小4で「自分だけがおねしょ」自尊心の低下 治療が必要な〝夜尿症〟

6月3~9日は「世界夜尿症ウィーク」です

5歳で15%、7歳で10%が罹患しているといわれています(画像はイメージです)
5歳で15%、7歳で10%が罹患しているといわれています(画像はイメージです) 出典: Getty Images

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小学生になっても子どものおねしょが続いている……。もしかしたら、それは「夜尿症」かもしれません。日本では約80万人の子どもに夜尿症があるといわれ、子どもの自尊心や学校生活の質の低下につながると指摘されています。6月3~9日は「世界夜尿症ウィーク」です。

「なんかの病気?」

「前はおねしょをしていた子もいたけど、気づいたら友だちは誰もしなくなっていて『俺ってなんかの病気?』って思った」

小学4、5年生のときに夜尿症の治療を経験した男児(11)は、自分だけがおねしょをしていた状況にそう感じていました。

「どうやったら治るんだろう」と悩んでいたものの、「親に相談すると他の人にバラされるかも」と不安に思い、ひとりで抱えていたといいます。

母親によると、小学校に入学してもおむつが取れず、朝はおむつにおしっこがたまっている状態が続いたそうです。

かかりつけの小児科に相談したところ、「様子を見ましょう」という結果になりました。

定期的に受診していましたが、5年生で宿泊を伴う学習が控えていたため、4年生の3学期から本格的に治療を始めることに。日本夜尿症・尿失禁学会員の医師がいる小児科を受診し、5年生の終わりまで治療を続けました。

治療を終えた男児は、「やっと周りのみんなと同じになってめっちゃうれしかった。解放された感じ」と話します。

写真はイメージです
写真はイメージです 出典: GettyImages

5歳で15%、7歳で10%が罹患

おねしょに悩む子どもや保護者のため、国際小児禁制学会などが定める「世界夜尿症ウィーク」では、「おねしょは治療できる」と呼びかけています。

日本夜尿症・尿失禁学会理事長の大友義之さん(順天堂大学教授)によると、0~2歳の子どもは反射的におしっこが出ますが、脳の発達によりおおむね3歳半を過ぎると昼間のおもらしをしなくなり、4歳頃からはおねしょをしなくなっていくそうです。

5歳以上で月1回以上のおねしょが3カ月以上続く場合、夜尿症と診断されます。5歳で15%、7歳で10%、15歳以上で1〜2%に夜尿症があるといわれています。成長とともに治ることもありますが、おねしょの頻度が多い場合は自然には治りにくい傾向があるそうです。

日本夜尿症・尿失禁学会理事長の大友義之さん
日本夜尿症・尿失禁学会理事長の大友義之さん 出典: 夜尿症メディアセミナー運営事務局提供

治療には、生活改善や服薬、アラーム療法があります。

早寝早起きをして規則正しい生活を送る、塩辛いものはなるべく食べない、夕食後の水分はコップ1杯程度にして寝る前に必ずトイレに行くといった生活にすることで、1~2割の子どもはおねしょが改善するそうです。

生活を見直した上で改善が見られなかった場合は、服薬や、アラーム付きのパッドを下着に着けて眠り、おしっこが出ると知らせてくれるアラーム療法を行います。

治療を始めて半年までに、約80%の子どもの症状が軽減するという報告もあるそうです。

大友さんは「積極的に治療に入っていくほうが早く治るというデータもあります。小学生になってもおねしょがなくならず、本人や保護者が困っていたら受診をおすすめします」と話します。

夜尿症の人の生活改善のポイント
夜尿症の人の生活改善のポイント 出典:朝日新聞デジタル

親子関係が悪化する懸念も

夜尿症の子どもは、睡眠や学校生活の質が低下したり、自己嫌悪や劣等感を持つといった心理面への影響もあります。

夜尿症の子と親の心理を研究してきた元東京成徳大学教授で公認心理師の田村節子さんは、「学校では夜尿への援助がほとんど行われていない」と指摘します。「夜尿症は親の愛情不足」「おねしょは病気ではない」など学校側が間違った認識を持っていることもあるそうです。

子どもだけでなく親にとってもストレスや先の見えない不安につながり、「親子で追い詰められている」といいます。

子どもはおねしょをしても平気な顔をしていたり、親の顔色をうかがって本音を言えなかったりして、親子関係が悪化する懸念もあるそうです。

田村さんは、「9歳くらいから自我が芽生えて他人との違いを強く意識し始めるため、早めのケアが大切です。本人や親に相談を受けたら答えられるよう、周りの人にも夜尿についての知識を持っていただきたい」と話しています。

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