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#34 イーハトーブの空を見上げて

稲垣吾郎さん・横浜流星さん…平泉にファン殺到 今年の〝源義経〟は

昨年の公東下り行列の様子。義経公役は犬飼貴丈さん
昨年の公東下り行列の様子。義経公役は犬飼貴丈さん
「イーハトヴは一つの地名である」「ドリームランドとしての日本岩手県である」。詩人・宮沢賢治が愛し、独自の信仰や北方文化、民俗芸能が根強く残る岩手の日常を、朝日新聞の三浦英之記者が描きます。
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イーハトーブの空を見上げて

岩手の「平泉」といえば…

岩手県南の観光名所「平泉」。

その名を聞いて大半の人が「中尊寺」を思い浮かべるのは仕方のないことかもしれない。

平安後期、奥州藤原氏3代が栄華を誇った後、鎌倉で政権を握った源頼朝に討たれ、松尾芭蕉が「夏草や兵どもが夢のあと」と詠んだ土地。

俳聖が「五月雨や降り残してや光堂」と記した金色堂を一目見ようと、中尊寺は国内外からの観光客で常時賑わう。

一方で、岩手県南を担当する新聞記者が多く取材に訪れるのは、金色堂を抱える中尊寺ではなく、同じく世界遺産に指定されている、実は「毛越寺」の方である。

年間通じて行われる多彩なイベント

毛越寺と書いて「もう・つう・じ」と読む。

二代基衡が再興した際に造った浄土庭園が有名だが、近世までにすべての堂塔が消滅してしまっており、中尊寺の金色堂のような派手さはない。

ではなぜ、新聞記者がこの寺に通うのか。

毛越寺では年間を通じて多彩なイベントが開かれるからである。

極寒の1月に下帯姿の男たちが長さ約2メートルの大たいまつをぶつけあう「二十日夜祭(はつか・や・さい)」。

国の重要無形民俗文化財に指定され、多くの観客を魅了する「延年の舞」。

濃緑の浄土庭園を背景に、紫や黄などの約300種計約3万株の花々が咲き誇る「あやめまつり」。

地元ファン「年に一度のイケメン祭り」

そして外せないのが、この寺に最も多く人が押し寄せる、5月の「春の藤原まつり」だろう。

特に毎年3日に実施される、源義経が兄・頼朝から逃れて平泉にたどり着いたときの情景を再現する「源義経公東下り行列」には、全国各地から多くの女性たちが殺到する。

なぜか。

白馬にまたがる義経役をその年に人気の俳優やタレントが演じるからである。

会場の毛越寺周辺には多くの女性ファンらが押し寄せ、歓声とともに行列の後を追う。

報道ブースで撮影していると、「撮影した画像データ、頂けませんか?」と声を掛けられる。

写真が載った翌朝の新聞は完売。

新聞社には「どこに行ったら買えますか?」との問い合わせの電話が鳴り続ける……。

地元のファン曰く、「年に一度のイケメン祭り」だ。

2024年の義経役は…寺田心さん

これまでに、坂上忍さん(1989年)、稲垣吾郎さん(93年)、藤原竜也さん(99年)、妻夫木聡さん(2000年)、横浜流星さん(17年)らが義経役を務め、その人気に応じて観光客数が左右するとも言われる。

最も観光客数が多かったのは、2005年の滝沢秀明さん(当日だけで約25万人)、続いて22年の伊藤健太郎さん(同約24万人)。

2024年5月3日の義経役は史上最年少、タレントの寺田心さん(15)に決まった。

今年はどんな賑わいになるのだろう。

(2024年3月取材)

三浦英之:2000年に朝日新聞に入社後、宮城・南三陸駐在や福島・南相馬支局員として東日本大震災の取材を続ける。
書籍『五色の虹 満州建国大学卒業生たちの戦後』で開高健ノンフィクション賞、『牙 アフリカゾウの「密猟組織」を追って』で小学館ノンフィクション大賞、『太陽の子 日本がアフリカに置き去りにした秘密』で山本美香記念国際ジャーナリスト賞と新潮ドキュメント賞を受賞。
withnewsの連載「帰れない村(https://withnews.jp/articles/series/90/1)」 では2021 LINEジャーナリズム賞を受賞した
 

「イーハトヴは一つの地名である」「ドリームランドとしての日本岩手県である」。詩人・宮沢賢治が愛し、独自の信仰や北方文化、民俗芸能が根強く残る岩手の日常を、朝日新聞の三浦英之記者が描きます。

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