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テレビの出演者〝中高年男性と若い女性〟の構図 「名前」表記にも差
NHK文研が調査、海外ではバランス意識する取り組みも
普段、何げなく見ているテレビ番組。実は、女性よりも男性の方が数多く登場していることが、NHK放送文化研究所の調査結果から分かりました。さらに、女性は肩書や名前が表示されない出演者が多かったことも浮かび上がりました。研究者は「テレビの世界が、実社会を映し出しているとは言いがたい」と指摘します。(朝日新聞デジタル企画報道部・山崎啓介)
NHK放送文化研究所は、国政選挙などの大きな事件やイベントがなかった2022年6月6~12日の番組を対象に調査を実施。NHKと民放キー局で、この期間に放送されたアニメや映画、海外ドラマ、再放送以外の番組に出演したタレントや解説者など、8704人の性別や年代、職業を調べ、結果を昨年10月に公表しました。
その結果、女性の割合は40.6%で、前年の調査結果の39.6%から微増したものの2年連続で半分以下だったそうです。
年代別では、男性は20,30歳代と年代が上がるにつれて出演者数が増え、ピークは40歳代。それに対し女性のピークは20歳代で、30~70歳代では女性は男性より出演者数が少なかったことも分かりました。
この結果は、女性が半数以上を占めている日本の総人口の男女比や年代構成とは異なっており、同研究所の小笠原晶子・主任研究員は「テレビの世界と実社会のジェンダーバランスには隔たりがあり、出演者は『中高年の男性と若い女性』という構図になっている」と話します。
番組ジャンル別では、「バラエティー」や「ワイドショー」で男女の偏りが大きく、「ドキュメンタリー」以外のジャンルで男性の方が女性よりも出演者数が多かったことも分かりました。
時事問題を扱うニュース番組は、他の番組と比べて幅広いテーマを扱っていると考えられることから、調査チームは22年6月と11月のそれぞれの5日間に放送された、延べ60本の夜のニュース番組の出演者を詳しく調べる調査も実施。
タレントや解説者などの著名人に限らず、インタビューなどでテレビに登場した一般人も含んだ、延べ2638人の出演者を調べました。
その結果、女性が734人で27.8%にとどまり、1793人(68%)だった男性の半数以下という結果に。
職業ごとに見てみても、政治家や大学教授などの学識者、医師といった職業での女性の出演者割合は男性より低く、各業界の幹部に女性が少ないことが要因として考えられるものの、実社会での女性割合よりも低かったことも分かりました。
さらに名前表記の有無では、「名前あり」で登場した男性の人数は、女性の約5倍と圧倒的に多かったそうです。
欧米では、英BBCが出演者の男女比を半々にする目標値を定めるなど、出演者のジェンダーバランスを見直す取り組みが進んでいるそうです。
BBCの取り組みには、世界30カ国の組織が参加していて、日本では、NHKが2021年から参加していたことを17日に明らかにしました。
小笠原研究員は「日本では、役員など社員のジェンダーバランスや多様性を見直す動きがあるが、出演者のバランスも見直そうとしているメディア企業は少ない。今回の調査結果が、テレビに映る出演者のバランスを考える動きにつながってほしい」と話しています。
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