連載
#78 「きょうも回してる?」
〝大喜利みたいなガチャガチャ〟「興味ない」…からの発想が逆に話題
「奇をてらわず、まだ開拓されてないものを考えたい」
「私が知っているクリエイターの多くはガチャガチャ好きな人が多かった。でも……」。ガチャガチャ評論家のおまつさんを驚かせたクリエイタ-が企画した商品が、SNSでも話題になりました。ガチャガチャへの鋭く、新らしい視点をおまつさんが聞きました。
ショッピングモールや量販店、駅など至る所に設置されているガチャガチャ売り場は、今年も日常の一部でした。
ガチャガチャブームは一旦落ち着くと思いきや、順調に回復するインバウンド需要もあり、専門店の出店が今でも続いているほか、ゲオホールディングスが「カプセル楽局」、カプコンが「カプセルラボ」を開くなど新しい専門店が次々とオープンしています。
専門店が増えていくなか、メーカーにとってはいかにしてお客さんに ディスプレイポップに目を 止めてもらい 、ついで買いをしてもらうかがとても重要になってきました。
50社以上あるメーカーのうち、ブシロードクリエイティブのカプセルトイブランド「TAMA-KYU(以下、タマキュー)」は「時代の最先端を華麗に刈り取り、次のムーブメントやバズを狙うこと」をコンセプトに展開。
このコラムでもタマキューを何度か紹介していますが、タマキューの凄さは、統括プロデューサーの成田耕祐さんの「時代」を感じ取るセンスと、商品化を決定するスピードの速さだと、私は思います。また、タマキューは様々なクリエイターとのコラボしたガチャガチャがあり、最近では「運命のコイン」などスマッシュヒット商品が多いのも事実です。
多くのクリエイターとコラボするタマキューですが、クリエイタ-エージェンシー「コルク」に所属するクリエイターのしんどうこうすけさんとのコラボも展開。
しんどうさんはユニークな人で、ブシロードクリエイティブとのコラボ商品としては、ボードゲームの「変顔ポーカー」や「確定申告が学べるゲーム」などがあります。
しんどうさんにガチャガチャの印象について尋ねると、「僕はガチャガチャに興味がないんですよ」と開口一番切り出しました。私が知っているクリエイターの多くはガチャガチャ好きな人が多かった。でも、しんどうさんは違いました。
「興味がない」理由についてはこう語ります。
「今のガチャガチャはアイディアが出来上がって、奇をてらったものが売れるじゃないですか。まるで大喜利みたいなアイディアは、人を喜ばせるのではなく、企画自体を考えることが楽しくなってきているように見えます」
さらにしんどうさんなりの課題意識を続けます。「作り手を見ていると、ガチャガチャを購入するお客さんの立場よりも、企画を立てることが楽しくなっているように感じます」
「これは、ニコニコ動画と似ている気がします。なぜなら動画を視聴するよりも、動画を投稿することが楽しみな感じと同じに思えたから。極端なことを言えば、誰でもできるような仕事に思えてしまい、ガチャガチャにますます興味がなくなってしまいました」
今年の最後は、そんなしんどうさんが企画した「人類の進化」を紹介します。11月下旬に発売されました。
人類の進化は「学べるカプセルトイシリーズ」第1弾として、誰もが教科書で見たことがある、あの人類の進化の図をガチャガチャにしてしまいました。人類の進化はしんどうさんにとって、初めての企画です。
商品化の流れも一般的ではありませんでした。
成田さんがしんどうさんに何度かアプローチしたところ、しんどうさんは「ひとつのカプセルで教育できる、学べるものがいいのではないか」と応じたといいます。
「奇をてらう方向ではなく、ひとつのカプセルで『わたし、九九を覚えちゃった』、『社会に興味がなかったけど、どこに古墳があるか覚えちゃった』と、気づいたら覚えちゃったという、ちゃんとした教育ものを丁寧に作るんだったらいいですよ」と答えたというしんどうさん。
「大喜利みたいな手法は作り手は楽しいけど、それは素人でもできる仕事。奇をてらっていなくて、まだ開拓されてないものを考えたい」という思いがその裏にはありました。
しんどうさんは、なんと企画書を作りませんでした。
成田さんに電話でこう伝えたといいます。「ガチャガチャの案ですけど、人類の進化っていいんじゃないかと思うんですよね」
突然案を伝えられた成田さんはうろたえると思いきや、「ああー、いいですね」と。これだけで商品化が決まりました。
その後、タマキューの担当者がしんどうさんの意図をくみ取って進めたそうです。
しんどうさんは人類の進化について、「教育物をカプセルにしていますが、シュールなところに落ちている。このシュールさがいい。僕が考えていることの面白さのなかに、シュールさもあるのかなと感じます。ただ、人類の進化をOKとする、成田さんの嗅覚は凄い。形ないものをよくここまで形あるものにしてくれました」と話します。
驚きは発売後も。
人類の進化が発売された途端、しんどうさんが想像もつかなかなかったことが起こりました。X(旧:Twitter)で人類の進化を購入した人の「猿人が4体被ったせいで原人にすら進化できず詰んだ……」というポストが8.9万いいねがつくほど話題になったのです。
今後について、しんどうさんは「進化シリーズとして、カブトムシの進化、地球の進化など、いろいろあるんじゃないですか。進化の軸でいうと、歴代総理を一代から現在までありえますよね。アイディアも奇をてらっていない。ありそうでなかった。まさに王道です。逆に、人類の退化として、逆向きにして内容物は一切変えない。ずーっと、これでこすりつづけるのも面白いかもしれません」と語って くれました。
余談ですが、人類の進化の原型をしんどうさんが見たとき、「ああー、やちゃったな、売れないな。売れる自信がない」と思ったそう。売れ行きが見えてくるのはこれからですが、「『今年もごめんね』と僕が自腹で成田さんたちと忘年会を開きます。いつもそれで許してもらっているんですよ」と笑って話してくれました。
ガチャガチャに興味がないしんどんさんだからこそ誕生した人類の進化は新しい試みです。第2弾が発売されて欲しいなと切に願っています。オリジナルのガチャガチャは、まさにクリエイティブとして自由だからこそ面白いのです。
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人類の進化は、猿、猿人、原人、旧人、新人の全5種類。1回300円。
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