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「しびれちゃうくらい反応がいい」 読み書きサポート文具の体験会

競合他社製品も展示。「いいものは紹介したいじゃないですか」

「できるびより 支援教材・グッズ体験会」の様子。読み書きが苦手な子どもに向けた文具が、自社他社製品問わず、置かれていました=10月4日、東京都
「できるびより 支援教材・グッズ体験会」の様子。読み書きが苦手な子どもに向けた文具が、自社他社製品問わず、置かれていました=10月4日、東京都

目次

読み書きが苦手な人のための文具を体験できる会がある――。「みんなと同じことができない」と思い悩んだ経験を、書字障害のある若者から聞いたことのある記者が、都内の会場に足を運びました。そこでは文具の「体験」にとどまらない場が広がっていました。

「だれにでも苦手なことはある」にひかれて

「だれにでも苦手なことはある。自分に合った、使いやすい教材や道具をみつけよう!」

X(旧ツイッター)のタイムラインに流れてきた、「できるびより 支援教材・グッズ体験会」のチラシには、こんな文言が書かれていました。

「だれにでも苦手なことはある」との言葉にひかれ、取材依頼を出すことに。
すぐに主催者にダイレクトメールを送ると「取材大丈夫です!」と返信が。電話で詳細を伝えて了解をもらいました。

紙に凹凸つける印刷技術を生かしたい

体験会の主催は、発達支援教材ブランド「できるびより」を展開する紙製品の製作販売などを手がける「オフィスサニー」です。

オフィスサニーは、紙の表面に凹凸をつける印刷技術「バーコ印刷」を使い、「革のような紙のブックカバー」などの商品を世に送り出してきました。

この印刷技術を他に転用できないかと思案している中、8年ほど前からは作業療法士・鴨下 賢一さんの監修で、子どもの発達支援教材を手がけるようになりました。

バーコ印刷を使った教材は「凸凹書字ドリル」などのシリーズで、ひらがなやさまざまな形の線などの輪郭をバーコ印刷の技術で「盛り上げ」たものです。

凹凸書字ドリルなど、できるびよりの商品ラインナップの一部
凹凸書字ドリルなど、できるびよりの商品ラインナップの一部

「はみ出すことが悪いのではなく、はみ出したことに気付いてもらう」

書字障害とは、発達障害のひとつである学習障害(LD)にあたる症状。文字や文章を書くことが極端に苦手で、文字を構成するパーツの位置関係や大きさを把握したり、パーツを組み合わせてひとつの文字と捉えにくかったりするケースがあります。

10代の生きづらさについての取材をする中で、書字障害の経験を語ってくれた人とも出会ってきた記者。「みんなができることができない」と幼少期のつらさを語ってくれた彼のことを思い出しながら、体験会で「凸凹書字ドリル」を体験してみました。

さまざまな線や、ひらがな、簡単な漢字、塗り絵などのドリルが体験できる中、私は渦巻き型を選択。

私にとって、渦巻きの形に合わせて鉛筆を動かすことは難しくありませんが、普通になぞるだけではバーコ印刷の良さが伝えられません。

わざと盛り上がった輪郭に当たるように鉛筆を動かすと、筆先が盛り上がり部分にあたり「おっと軌道を戻さないと!」という気持ちになります。

オフィスサニーの取締役・高橋晶子さんは、「はみ出すことが悪いのではなく、はみ出したことに気づいてもらうことが狙いです」と説明します。
代表取締役の高橋淳一さんも「上手に書けてダメなことはないので、そのための手助けになれれば」とドリルの目的を話します。

展示会の来場者に商品の説明をする高橋晶子さん(左)
展示会の来場者に商品の説明をする高橋晶子さん(左)

競合他社の製品も置く理由

オフィスサニーが、発達支援のための教材を体感してもらいたいと、誰でも参加できる体験会の開催を始めたのは今年8月のこと。

淳一さんは「しびれちゃうくらい反応がいい」と話します。

「岡山県LD発達障害親の会」が主催するイベントに参加したときには、「なにこれー!」と興奮した様子で凹凸書字ドリルを体験する子どもたちの、嬉しそうな表情を何度も見ました。鉛筆をうまく握ることもままならない子どもたちが、集中してドリルに取り組んでいたといいます。

体験会は、オフィスサニーの商品だけを置いているわけではありません。
持ち手がずれない工夫がされている鉛筆や、リコーダーの穴をふさぎやすくする補助シール、時計を使わなくても時間の感覚を得やすい砂時計やタイマーなどの製品も紹介されています。

いずれも発達支援文具のくくりでいえば、いわば競合他社の製品です。

これらを置く理由について淳一さんは「いいものは紹介したいじゃないですか」と一言。

消しゴムだけでもたくさんの種類を展示し、子どもの特性に応じて選べるように。
消しゴムだけでもたくさんの種類を展示し、子どもの特性に応じて選べるように。

親の悩み共有する場にも

これまでに5回程度の開催を重ねていますが、晶子さんは来場者の交流にも期待を寄せています。「体験会には、子どもの障害を周りに打ち明けられず勇気を振り絞って来てくれる人もいます。体験会後にSNSの反応で見かける中には『明るく話しやすい場でよかった』というものもありました。

実際記者が目にしたやりとりの中には、訪れた親同士が、展示されている商品について「(塗り絵で)はみ出しても、もはや諦めかけていますよね」と笑い合ったり「早くほしかったー」と、くだけた様子で言い合うなど、同じ悩みを持つ者同士がそれを共有し情報交換できる空間のように感じました。

淳一さんは、体験会が親同士の交流だけでなく、作業療法士と教員とがつながる場や、教育現場への情報提供の機会になることも期待しています。「学校現場で子どもたちに直に接する先生たちにも、こういう教材があることを知ってほしい」

体験会は今後も続けていく予定で、年内は関東を中心に、すでに6回以上の開催が予定されています。

     ◇
できるびよりのX公式アカウント(@outotsu_kyozai)からは、イベントの予定などを見ることができます。
会場設営から、体験会が優しく温かい雰囲気作りをしていることが伝わってきました。
会場設営から、体験会が優しく温かい雰囲気作りをしていることが伝わってきました。

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