連載
#110 コミチ漫画コラボ
「ちゃんとのれるかな」不安だったけど…MVエキストラ参加の思い出
高校3年の夏休みに体験したこと
高校3年生の夏、大好きなシンガーソングライターのミュージックビデオ(MV)の撮影に参加した、みりこさん(@rkare_ota)。初めて行ったライブハウスで初対面の人たちと気持ちがひとつになった時間は、社会人になった今でも忘れられない思い出です。当時の経験をマンガにしてSNSに投稿しました。
中高生の頃、ある同世代の女性シンガーソングライターが大好きだった、みりこさん(31)。高3の夏休み、公式ホームページで、新曲プロモーション用のMV撮影のため、女子高生エキストラを募集していることを知りました。
大学受験を控えていたものの、めったにないチャンスで「行かなきゃ」と応募。後日、当選連絡が届きましたが、初めてのことにうれしさと不安が入り混じっていたといいます。
撮影当日、ひとりで電車に乗って郊外のライブハウスへ向かいました。学校へ行くルートと違い、初めていく地域で少し緊張感もありました。
しかし、会場に到着すると1人で参加する高校生も多く、「私も1人」「楽しみだね」「なんの曲が好き?」「新曲どんなのかな」と自然と会話が生まれたそうです。
アーティストが登場すると、みんなのテンションは一段と上がりました。新曲のため初めて聞く曲ですが、何度も繰り返して撮影が進むうちに気持ちも体もノッてきました。
撮影も終盤、会場の熱気は最高潮です。「サビ終わりWoW!のところでジャンプしようよ」。一緒にいた高校生の提案で、周りにいた4人が手をつなぎ、跳び上がりました。
終了後は、「楽しかったね~」「ジャンプしたの映るかな?」と余韻に浸り、みんなでメールアドレスを交換しました。
後日、CDを買って特典DVDをドキドキしながら見たみりこさん。ジャンプした姿は写っていませんでしたが、夢のような夏の思い出として心の中に残っています。
「大好きなアーティストが、高校生の私にいろいろな景色を見せてくれました」
当時を思い出し、みりこさんはそう振り返ります。みりこさんにとって、MVの撮影はファン同士でつながる初めての経験でした。
撮影に参加した人々は同世代という共通点はありましたが、名前も住んでいる場所も知りません。しかし、「好きなアーティストが同じ」という安心感があり、「気持ちのいいやりとり」ができていたといいます。
「ちゃんとのれるかな」という参加前の不安も杞憂に終わり、始まってみたら会場の熱量や一体感に刺激されて夢中で楽しんでいました。
みりこさんたちの姿はMVには映っておらず残念な気持ちはありますが、新曲を買った後にみんなとメールしたことはいい思い出だといいます。
小中学生の頃は、「周りの目を気にして自分のことは話さず、壁を作るタイプだった」というみりこさん。それまでの環境をリセットしようと、高校は地元から離れた学校へ1時間かけて通ったそうです。
高校では友人にも恵まれ、徐々に自分のことも話せるようになりました。しかし、好きなアーティストのアルバム収録曲など、マニアックな話は控えていたといいます。
MV撮影を経験して、みりこさんは「『好きなこと』がきっかけで、人とのコミュニケ―ションが生まれることがあるんだ」と学んだそうです。
現在は会社員として営業の仕事に就いていますが、自身の好きなアーティストの話題を会話の糸口にしているといいます。
今もSNSを通じて好きなアーティストのファン同士交流することもあり、高3当時の経験を思い出しながら初対面のファンとのつながりを楽しんでいるそうです。
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