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R-1で3位に輝いた寺田寛明さん 塾講師バイトでひらめくネタ

ピン芸人としての今後は?

現役塾講師のアルバイトをする寺田寛明さん=本人提供
現役塾講師のアルバイトをする寺田寛明さん=本人提供

目次

バイト経験をいかしたネタで、今年の『R-1グランプリ』で3位に輝いたピン芸人の寺田寛明さんは、現役塾講師でもあります。芸人業に役立つと考えて始めたといいますが、やりがいにハマって今では「塾講師は半分趣味のようなもの」なんだとか。塾講師の魅力と、寺田さんが考える今後のピン芸人の歩み方を聞きました。(ライター・安倍季実子)

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寺田寛明:お兄さんの影響で小学生の時からお笑いに興味を持ち、高校2年生の時に初めてお笑いライブに出演。以降、フリーのピン芸人として活動。2014年からマセキ芸能社に所属。2019年に『R-1グランプリ』の準決勝に、2020年から3年連続で決勝に進出し、2023年度の大会では第3位に輝いた。

今でも続く週2回の塾講師バイト

飲食店やショッピングサイトで行われている「レビュー」を、日本語に対してやった場合どうなるのか……?

フリップ芸で独特なネタを披露する芸歴9年目の寺田寛明さんは、言葉や慣用句をイジるネタで今年の『R-1グランプリ』で第3位に輝きました。

審査員からの評価は「着眼点が面白い」などと軒並み高く、ふだん子どもたちに国語を教えている現役塾講師の経験を存分にいかした結果となりました。

「授業中にネタのヒントを見つけることは、けっこうあります。生徒たちに説明しながら頭の中でツッコんだことや疑問に思ったことからネタが派生していってる感じです」

塾講師は単純に楽しく、半分趣味で続けているようなものだと寺田さん。

「塾講師で大して稼いでるわけじゃないんで辞めても特に支障はないんですけど、これからも続けたいと思ってます」

寺田寛明さん=マセキ芸能社提供
寺田寛明さん=マセキ芸能社提供

2020年の『R-1グランプリ』の決勝進出後、少しずつお笑いの仕事が増えてきたので、今では週2回3コマしか担当していないそう。

「学年にもよりますが、うちの塾は40分×2で授業1コマになります。時給も学年により変動しますが、大体2000円前後。平均的な月のアルバイト代は2~3万円くらいです。お笑いの仕事で授業を休むこともあるんで、『いつまで続けられるんだろう?』って考えることもあります」

塾講師はコミュニケーション能力向上のため

現在、寺田さんがアルバイトをしている塾は、実家の近くにある個人塾です。

中学・高校時代に通っていて、大学に入るタイミングで声をかけられました。アルバイトを決めた理由は、コミュニケーション能力を高めるためでした。

「僕はどちらかというと人見知りですし、感情があまり表に出ないタイプです。高校が男子校だったんで、卒業する頃には女性との接し方がわからなくなっていて……。芸人になるなら、誰とでもコミュニケーション取れるようになった方がいいだろうと思って講師のバイトを始めました」

アルバイト先はとてもアットホームで、学年によっては授業を少人数で行うこともあり、講師デビューはすんなり乗り越えられました。しかし当初は、授業の準備が大変だったといいます。

「教科書を読んだり、実際に問題を解いてみたり、関係する周辺知識を調べたり……。最初の年は、頼まれてもいないのに、テスト前に予想問題も作りました(苦笑)。大変ではあったんですが意外と楽しくて、徹夜で作ってました」と笑います。

「今では慣れたので、大変よりも楽しいの方が大きいです」=筆者撮影
「今では慣れたので、大変よりも楽しいの方が大きいです」=筆者撮影

また、塾講師のアルバイトは楽しいだけでなく、充実感もあるといいます。

「塾に通ってる子って、テストでいい点を取るためとか高校受験だとか、目標がはっきりしています。その目標を達成するために、僕たちもあれこれ考えながら授業をするんで、同じ目標に向けて自然と仲良くなっていくんですよね。受験は人生の大きな節目。そんな大きな出来事に関われるのも、塾講師ならではだと思います」

たまに、高校を卒業した後や塾を辞めた後でも、顔を出してくれる生徒もいるそう。そうやって、生徒の頑張りや成長を見守ることを「子育てに近い感覚なのかもしれない」と分析します。

そんなやりがいと充実感に満ちたアルバイトですが、「ほかの芸人にはおすすめしない」と寺田さん。

「今のバイト先は、個人塾でいろいろと融通を利かせてくれるから続いています。大手の場合は曜日が固定されて簡単に休めないので、芸人と両立するのは難しいでしょうね」

主に、小学4年生から中学3年生までの国語を担当しています。

「3月は高校受験があり、そちらに集中しないといけない時期でした。でも、他の先生たちが協力してくれたので、『R-1グランプリ』に力を入れられました」

ピン芸人同士のつながり作りが生き抜くヒント

現在は、月平均10~15本のライブに出演するほか、大喜利やトーク系のライブの主催、アイドル好きから派生したイベント登壇やウェブメディアでのコラムの執筆など、幅広く活動しています。

最も注力するのはネタ作り。芸歴10年目になる来年の『R-1グランプリ』は「ラストイヤー」。もちろん優勝を目指します。ただ、大会が終わった後のことが心配だとも……。

「ピン芸人って、誰かと関係性を作らないと詰んじゃうと思っています。特に僕のような見た目が地味なピン芸人って記憶に残りにくいですし、ネタ以外のトークをする場にポンとひとり置かれても、何も生み出せないというか……」

そんな危機感から、ネタのスタイルや見た目が似ていて、間違えられやすいピン芸人の「こたけ正義感」さんとキャラが被っていることを自らオープンにしました。

「彼は弁護士、自分は塾講師。お互いに、ちょっと賢そうな職業をしていて、同じフリップネタで、スーツで眼鏡をかけていて……いろいろと被りまくってるんです(苦笑)。そのうち誰かにイジられるでしょうから、先に自分でイジろうと思って『こたけ正義感』っていうネタを作りました」

『こたけ正義感』のネタ動画。「対立関係を作るとか、仲良くしたいっていう目的はなく、何かしらの関係性ができればいいと思って」

寺田さんのネタがYouTubeにアップされると、こたけ正義感さんも、すぐに『寺田寛明』というネタをアップしました。まさかのピン芸人同士のコラボに、コメント欄は驚きと喜びのコメントであふれました。

しかし、ピン芸人同士のイジり合いやコラボは、今にはじまったことではないそう。

「『M-1グランプリ』でのおいでやすこがさんの活躍や、お見送り芸人しんいちさんとZAZYさんの対立関係が注目されたことで、みんな『オープンにやっていいんだ』って思ったのでしょう」

ピン芸人同士で関係性が生まれれば、『R-1グランプリ』の開催中も話題になります。さらに大会終了後も、ひとつのネタとして使い続けられると考えているそうです。

「ネタを中心でやりつつ、大喜利とか色々なことをやっていきたいです」=マセキ芸能社提供
「ネタを中心でやりつつ、大喜利とか色々なことをやっていきたいです」=マセキ芸能社提供

「あと、僕はバラエティー番組に出るような一般的な売れ方は向いてないと思うので、ネタ作りと並行して、お笑い以外の仕事もしようかと思っています。今は、ありがたいことに趣味のアイドル関係のお仕事やコラムとかも書かせていただいているんで、そういうところも伸ばしていきたいですね」

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