連載
#80 夜廻り猫
「具なし味噌汁が〝普通〟だった」同棲相手の言葉に…マンガ夜廻り猫
「中身まで赤いオムライス、うまい」「すき焼きに肉入ってる」。パートナーと暮らし始めて料理を振る舞ったところ、ときどき〝不思議な発言〟を聞くようになって……。「ハガネの女」「カンナさーん!」などで知られる漫画家の深谷かほるさんが、ツイッターで発表してきた「夜廻り猫」。今回は「食」にまつわるエピソードです。
「彼と一緒に暮らし始めたんだ」
女性からそう聞いた猫の遠藤平蔵が「うまくいってる?」と尋ねると、女性は「時々、不思議な発言があるんだよね」と近況を語り出します。
オムライスを作ったところ、彼は「まなみちゃん、料理うまいね。中身まで赤い」と言います。
すき焼きの日には「肉が入ってるとうまいなー」。
ナポリタンを出したら「具のあるナポリタンうまいね!」と褒めてくれるのです。
女性が「普通だけどね」と謙遜すると、パートナーは「うち味噌汁も具なしがデフォルトだったからなぁ。本当に貧乏だったんだな」と自分の子どもの頃を振り返ります。
「亮くんのお母さん、それでも『できない』って言わずに作ってくれたんだね。それって愛じゃね?」と伝えると、パートナーは「まなみちゃんの、その見方が愛だ」と満面の笑みで答えました。思わず、女性は彼を抱きしめます。
空に向かって、「お母さん、ありがとう~。亮くんは私が守るからねー」と呼びかける女性。遠藤も、「安心してくだされー」と言葉を重ねるのでした。
作者の深谷かほるさんは、自身の子育て時代を思い返しながら、今回のマンガを描いたといいます。
ファーストフード店でハンバーガーを食べていたら、隣には赤ちゃん連れのお母さんたち。フライドポテトを持たせて、「離乳食はフライドポテト」と笑いながらおしゃべりしていました。
一瞬、「それで大丈夫なの?」という思いがよぎりましたが、「自分の子育て時代はもっとひどかったことを思い出しました」と話します。
息子がまだ歩けなかった頃。マンガの締め切りの日なのに、まだまだ作業が残っていました。
「どういうわけか息子が新聞をなめたがって、引き離すと大泣きします。仕方なく持たせたままにして、必死に仕事を終わらせようと専念しました」と振り返ります。
「終わってふと、かたわらの息子を見たら、機嫌よく新聞の半ページほどを食べてしまってました。幸い無事でしたが……」
「食事」は子どもにとっても本当に大事なものです。しかしそれも、生活の土台が整っていてこそ、大事にできるもの。
深谷さんは「みんなが健康で文化的な最低限度の生活ができますように」と祈っています。
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