連載
#76 夜廻り猫
「怒鳴るのも不機嫌なのも暴力だよ」父へ言い切った マンガ夜廻り猫
「定年後に捨てられる夫が増えてるって」。そんなテーマのテレビ番組を見ながら父に話しかけると、まったくの他人事のようで……。「ハガネの女」「カンナさーん!」などで知られる漫画家の深谷かほるさんが、ツイッターで発表してきた「夜廻り猫」。今回は、実家で暮らしていた娘のエピソードです。
きょうも夜の街を回っていた猫の遠藤平蔵。ひとり段ボールに洋服を詰めている女性の心の涙の匂いに気づきました。
わけを尋ねると、女性は「うちの父って、昔から怒鳴る人でさ」と子どもの頃を思い返します。
友達が来ていても、家庭訪問で先生が来ていても、「いつまでしゃべってる!」と怒鳴る。母と楽しそうにしていると急に不機嫌になる……。
リビングにいたその日の夜は、テレビで「定年後に捨てられる夫が増えている」というテーマの番組が流れていました。
父は「そういうやつは好き勝手してんだよ DV(家庭内暴力)とか」と言い捨てます。
あまりに他人事のようすに、女性は「お父さん、怒鳴るのは暴力だよ。不機嫌も、証拠が残らない暴力。それを子どもに見せるのも暴力。お父さんは立派な暴力男だよ」。たまりにたまった思いを伝えました。
突然のことに言い返せない父を前に、女性は「お母さんの味方しなきゃと思ってたけど、家を出るわ」と宣言します。
荷造りをしながら「絶対結婚しない!」と怒る女性に、遠藤は話を聞きながら「温和、優しい人もけっこういますぞ」と声をかけるのでした。
作者の深谷さんは「〝実は〟孤独なお父さん、という立場の人について見聞きすることがあります」と話します。
同居する家族が、お父さんの出張や単身赴任を待望している…
お父さんが帰ってくるとリビングに人がいなくなる…
子どもが家を出て、定年後の夫婦ふたり暮らしはケンカばかり……などなど。
「気の毒なようですが、お父さんが『家族に嫌われるようなことをやらかし続けている』ことも少なくないようです」と指摘します。
「家族だからと、怒鳴ったり物に当たったり、不機嫌になったりといった『暴力的な甘え方』はしないでほしいです。相手の話も聞いて、ありがとう・ごめんなさいをちゃんと言いさえすれば、楽しく暮らせると思いますよ」
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