連載
#17 特別じゃない日
子猫を見つけた青年、SNSに投稿したら… 「シャケ」との出会い
「特別じゃない日」をテーマにした単行本が発売された漫画家・稲空穂さん。ツイッターで発表して注目を集めた漫画「#猫」に込めた思いを聞きました。
道端で子猫を見つけた青年。
思わずスマホで写真を撮って、SNSに投稿します。
すると「かわいい猫ちゃん! お腹すいてるのかな?」「えっ、もしかして写真撮ってそのまま?」といったコメントが。
青年は子猫を自宅に連れ帰り、牛乳をあげることにします。
猫の写真を投稿するたびに、飼い方についてアドバイスのコメントがつくように。
最初は1桁だったフォロワー数は、1万を超えるまでになりました。
「飼い主さん、猫ちゃんのお名前は?」
そのコメントを見て初めて飼い主と自覚し、子猫を「シャケ」と名付けます。
投稿を見ていたバイト仲間は、青年のアカウントとは知らず、バイト中に感想を語り合います。
「初めのころは猫ちゃんが大丈夫か心配で見てたんですけど」
「わかる! でもなんか途中から応援したくなっちゃってさあ」
それを聞いていた青年が「それ俺のアカウント」とつぶやきます。
「ええっ! シャケちゃんいるの? 家に?」
人気アカウントの主が青年と知って、その場が騒然となったのでした。
触れ合ったことのない動物は、どう扱えばいいかわからないものですよね。
私自身、今年の初めに保護猫を引き取るまでは「猫=ひっかいたり噛んだりするもの」という漠然とした認識でした。
しかしいざ一緒に生活をしてみると、猫は猫なりにちゃんと手加減をしてくれて、こちらの様子を伺っているのが伝わってきました。
触れ合ったことがなく、どう扱えばいいかわからなかったのはお互い様なのだな、と感じました。
猫と一緒に生活を始めて半年が経とうとしていますが、今ではすっかりひっかかれたり噛まれたりするのにも慣れ、密な触れ合いを楽しんでおります。
思い切って一歩踏み出せばなんということのないことは、実はたくさんあるのかもしれませんね。
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〈稲空穂=いな・そらほ〉 静岡県出身・在住の漫画家。会社員を経て2017年に「おとぎ話バトルロワイヤル」(KADOKAWA)でデビューし、「特別じゃない日」で日常をテーマにした作品に挑戦中。老夫婦や女子高校生、主婦、バイトの青年……それぞれの小さな幸せがつながっていく物語を描いていて、実業之日本社から第1集が書籍化され、7月に第2集「特別じゃない日 猫とご近所さん」が発売された。Twitterアカウントは@ina_nanana
withnewsでは原則隔週水曜日に、稲さんの漫画とともに作品に込めたメッセージについてのコラムを配信しています。
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