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ハンカチから将棋駒が生えてる! 超絶技巧のデザインにSNS騒然
2分で完売「映え」だけじゃない実用性も
私たちが毎日使うハンカチ。思わず二度見してしまうような、奇抜なデザインの商品が、SNSユーザーの度肝を抜いています。モチーフは、何と将棋駒です。職人技の粋を集めて開発したという、老舗レース店の幹部を取材しました。(withnews編集部・神戸郁人)
話題を呼んでいるのは、とあるタオルハンカチです。
四角く切り出されたベージュの布。その縁から、表面に「銀将」「歩兵」と書かれた、将棋駒風の刺繡(ししゅう)が飛び出ています。周囲を覆うように、びっしりと並んだ様は、圧巻の一言です。
駒の手前に目を移すと、何やら模様が施してあります。しかし、よくよく見れば、黒とベージュの糸で「王手」「OUTE」と交互にあしらわれていることに気付くのです。
更にタオル部分には、ステッチで方眼紙風の区切り線がつけられています。実はこれ、将棋盤を再現したもの。小さな将棋駒を用意すれば、実際に対局を楽しめるという、遊び心あふれるアイデアです。
4月中旬、ツイッター上に関連画像が出回ると、「デザインの本質に気付いたら鳥肌立った」「CUTEかと思ったらOUTEだったのか」と衝撃を受ける人々が相次ぎました。
見る人に新鮮な驚きを与える、今回の商品。販売しているのは、明治34(1901)年創業の老舗レース店・近沢レース店(横浜市中区)です。誕生の経緯について、執行役員の近澤柳(ちかざわ・りゅう)さん(41)さんに聞きました。
同社のタオルハンカチには、縁に刺繡で花柄などを刻んだオーソドックスなものに加え、毎月2種類の新作が登場する「シーズンタオルハンカチ」があります。職人の手業を活かした、精緻(せいち)で実験的なデザインが特徴です。
赤と白の糸を巧みに組み合わせ、レース部分に大量のまぐろ寿司が並んでいるように見せたり、人気キャラクターの姿を再現したり。気が遠くなる細やかさと、高い独創性を両立した仕上がりが、たびたびSNS上で話題をさらってきました。
将棋駒の一品も、そのラインナップに属します。同社のレースデザイナーが「将棋人気が高まっている今、商品化できるのでは」と発案しました。近澤さんも、将棋ファンの間で話題づくりに一役買うかもしれないと考えたそうです。
駒の種類は、マニア人気が高い銀将と歩兵に。実用に耐える強度を確保するため、銀将の間に歩兵を斜めに配置し、駒同士が接する部分を縫い付けました。またステッチで将棋盤を再現するにあたり、特別な工夫も施しています。
「通常はタオルのパイル地のループ部分をカットし、ベルベット調の光沢を出すんです。ただ、その質感だと、将棋盤をうまく表現できません。だから、普段と異なるメーカーの布を使おうと決めました」
開発段階では、市販のポケット将棋駒を使い、対局できるかどうか試したといいます。関わった社員にも好評で、売れ行きへの期待感が高まりました。
とはいえ、型破りなデザインであるがゆえに、まずは比較的少ないロット数で製造することに。しかし予約が始まるやいなや、すぐ予定販売数の上限に達してしまい、増産も視野に入るほどの盛況ぶりとなりました。
「当初は慎重にいこうということで、判断を保留したんです。ところが今年4月16日に発売すると、ネットショップでは2分たらずで完売してしまいました。全国に15ある直営店でも、その日のうちに売り切れた。ものすごい勢いでした」
レース部分の繊細な見た目に加え、何度も水洗いできるなど、確かな品質を誇る今回の商品。近澤さんは、予想以上の人気に驚きつつ、商品開発の方向性が間違っていないとの自信を深めています。
「シーズンタオルハンカチは、10年ほど前から本格的に作り始めました。SNS映えを意識しているのは、ハンカチがコミュニケーションツールになると伝えたいからです。ひざにかけていると、つい『それは何?』と言いたくなるような」
「そして、そのデザインを具現化できる職人さんは、国内でも10人いるかどうかというくらい少ない。ものづくりに関わる人口が減り続ける中で、今回の商品が、作り手の思いに注目が集まるきっかけになればうれしいですね」
将棋駒デザインのタオルハンカチは、一枚1100円(税込み)。今夏をメドに再販予定です。近沢レース店の公式サイトや、SNSアカウントにて、詳しい状況を確認して下さい。
※記事中の「明治43(1910)年創業」とあるのを、「明治34(1901年)年創業」と修整しました。(4月22日)
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