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マンガ

子連れで恐る恐るファミレスへ「あの、お客様…」次の瞬間、号泣

産後の孤独と〝外出の壁〟壊した一言

生まれて間もないわが子を抱え、出かける母親。育児に疲弊する中、訪れた先での出来事を描いた漫画が、共感を集めています。
生まれて間もないわが子を抱え、出かける母親。育児に疲弊する中、訪れた先での出来事を描いた漫画が、共感を集めています。 出典: るしこさんのツイッター(@39baby_com)

目次

乳児のわが子と一緒に、飲食店を訪れた母親。店員から受けた、優しさあふれる対応について描いた漫画が、ツイッター上で人気です。実体験を記録した作者の女性に、話を聞きました。(withnews編集部・神戸郁人)

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育児に時間を割き、食事を忘れた母親

「子どもと出かけるハードルを下げてくれた最初の出来事」。今月9日、そう題された4ページの漫画がツイートされました。

物語は、まだ乳児の息子を抱きかかえる母親が、買い物に出かける場面から始まります。

冒頭、げっそりとした表情を見せる母親。仕事が多忙を極め、勤め先に泊まり込む夫の状況や、離乳食を一日3回作らなければならないことなど、悩みの種が多かったからです。

「買い物来ちゃったけど おなかすいた…」「離乳食とミルクで手一杯で 自分の朝昼ごはん食べるの忘れてた…」

胸元で眠る息子の姿を見て、母親はなじみのファミリーレストランに入ります。座敷席に案内された後、座布団の上に、そっとわが子を寝かせました。安らかに寝息をたてる様子に、一安心です。

そして、久しぶりに注文した定食に口をつけると「うっっっま」。自分の暮らしを二の次に、育児に時間を割いてきたこともあり、思わず舌鼓を打ちます。

出典:るしこさんのツイッター(@39baby_com)

ホールスタッフの言葉に流した涙

もぐもぐと料理をほおばる母親。ふと気付くと、店員たちが、ひそひそと何か話し合っています。

「あの、お客様…」

ホールスタッフの一人が、にわかに声をかけてきました。そして、こう伝えたのです。

「そちらの定食 セルフドリンクが付くんですけど」「赤ちゃんの横 離れるの心配だったら お取りします」

少し間を置いて、母親は号泣します。自宅の外に出て、大人の誰かと会話し、人の作ったご飯をゆっくり食べる。その上、知らない人に突然親切にされる……。温かみのあるコミュニケーションが、彼女の胸を打ったのでした。

「同じ体験をしたことがあり泣けた」「お母さんにとって優しい世界はみんなにとっても安心なはず」。漫画には好意的なコメントが描き込まれ、21.5万超の「いいね」もついています。

出典:るしこさんのツイッター(@39baby_com)

ままならない現実に、疲弊しきった心

今回の作品は、育児体験を漫画化している、るしこさん(@39baby_com)が手掛けた一本です。どのような思いでペンを取ったのか、直接取材しました。

作中の時期は、現在2歳の息子が、まだ月齢8~9カ月だった2019年秋。るしこさんは当時、子育てに追われ、社会との接点がほぼなくなっていたそうです。

言葉が通じない相手と、一日中向き合い続けることの孤独感。息子の夜泣きに伴う慢性的な寝不足や、成長に応じて激変する生活サイクル――。ままならない現実に、ストレスは高まるばかりでした。

「健康な状態であれば、一つ一つの出来事はやり過ごせたかもしれません。しかし、それらがいくつも重なることで、追い詰められていました。今日は乗り切ったけど、寝たらまた朝が来る。嫌だな……と思っていたのを覚えています」

出かけることの心理的障壁も、出産前より、ぐんと高くなっていました。息子が突然泣き出し、周囲に迷惑をかけるかもしれない、との不安があったためです。公共交通機関での移動や、飲食店への訪問は、とりわけ遠慮しがちだったといいます。

移動中、危険な目に遭った時、わが子をどう守れるか。外出時は、その点について常に考え、気を回すようにもなったと振り返ります。

出典:るしこさんのツイッター(@39baby_com)

温かい接客が、外出する自信をくれた

そんな頃のある日。るしこさんは、買い物に出かける途中、スーパー近くのファミレスを訪れます。以前、夫と一緒に利用したことがある店舗です。

定食の注文時、メニューを見て、フリードリンクが付いていると把握していました。しかし息子が寝ていたため、席を立つわけにはいきません。何より、他人が作った料理を、久方ぶりに堪能しただけで満足できたそうです。

しかし実際には、漫画にもあるとおり、店員の計らいで食後のコーヒーまで楽しめました。予想外の事態ではあったものの、自らを気にかけてくれた事実に、いたく心動かされたといいます。

「赤ちゃんは、いつ起きて泣き出すか分かりません。緊張していた心に、気遣いがとてもしみました。店員さんの温かい接客を受け、息子が一緒でも食事ができたことで、自信も付いた。その後、段々と子連れで外に出るようになりました」

出典:るしこさんのツイッター(@39baby_com)

「赤ちゃん歓迎のお店もたくさんある」と伝えたい

一連の体験は、幅広い層の共感を集めています。反響を受けて、過去の自分と同じ境遇にある親御さんを念頭に、「たくさんの人がつらい思いをしていたのだな」と語りました。

「当時の写真や動画を見ると、息子がめちゃくちゃ可愛くて、今すぐ会いに行きたいくらい。でも思い返すと、二人きりで家にこもり、買い物と散歩くらいしか外出の機会が無かった。暗い気持ちが渦巻き一瞬でダメになりそうな精神状態でした」

「今は新型コロナウイルスが蔓延しています。あのとき以上に、孤独を感じながら赤ちゃんを育てている親御さんが、たくさんいるのかなと。毎日、本当にお疲れ様です」

今回の漫画を通じ、励まされた子育て世帯は多そうです。一方、ネット上などで「わが子が飲食店で泣き出し、白い目で見られた」といった声に触れる機会は、少なくありません。

るしこさん自身、そうした体験談を知り、出産後の外出を恐れたといいます。しかし街に繰り出せば、優しい出来事もたくさんありました。その点について伝えたくて、人のぬくもりを感じた体験について、漫画を描いていると教えてくれました。

「私は、静かで落ち着いた雰囲気のお店も大好きです。その中に、子どもを連れて欲しくないというところがあるのは、当然かなと思います。ただ、小さい子や赤ちゃんも歓迎してくれる場所もたくさんあると、産後に知りました」

「特に核家族における、乳幼児の育児は、孤独と密接していると感じます。親御さんが、子連れで足を運べて、ホッと一息つける場所が増えたらいいな。そう思っています」

【関連リンク】るしこさんの連載漫画(よもんが)

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