連載
#47 「きょうも回してる?」
ガチャガチャに「第4次ブーム」ギネス認定の巨大専門店、超高額品も
2021年を振り返ると、ガチャガチャが多くのメディアに取り上げられ、企業やガチャガチャに興味が無かった人からも注目を集めた年でした。
運まかせという特徴を表現した「親ガチャ」「上司ガチャ」などの「〇〇ガチャ」といった言葉がメディアをにぎわせ、LCC(格安航空会社)のPeach Aviation(ピーチ)が「旅くじ」の名前で5000円のガチャガチャを販売したり、東武鉄道が宿泊券や食事券を商品にした「ホテルガチャ」を販売したりするなど、ビジネスのツールとして活用される事例も相次ぎました。
さらに、このコラムでも取り上げた「街ガチャin 船橋」をはじめ、「大宮ガチャ」「浦和ガチャ」といった地域活性化のアイデアとしても、ガチャガチャは頼りにされています。
1965年に米国から機械を輸入して始まったガチャガチャは、登場から半世紀以上が経ちました。歴史の長いガチャガチャがなぜ今、注目を集めているのか。要因の一つは、ガチャガチャ専門店の台頭です。
3年前までほとんど見られなかったガチャガチャ専門店ですが、2020年~2021年にかけては新店舗のオープンが続きました。その一例を調べると、ルルアークが運営する「ガチャガチャの森」が20店舗以上、トーシンが運営する「#C-pla」も20店舗以上、ドリームカプセルが運営する「ドリームカプセル」は15店舗以上増えました。
とくにバンダイナムコアミューズメントが運営する「ガシャポンのデパート」は、2020年8月にオープンして以来、40店舗を超えるまでに拡大し、「ガシャポンのデパート 池袋総本店」は2021年3月に「単一会場におけるカプセルトイ機の最多数」として、3010面でギネス世界記録に認定され、話題となりました。
最近ではGENDA SEGA Entertainmentが、専門店「GORON!」の出店ラッシュをしています。東京を中心にJR各駅にもガチャガチャの機械が置かれるようになり、1日に一度は販売機を見ているのではないかというほど、ガチャガチャ売り場は日常の一部になってきました。
このような専門店が増えた背景には、新型コロナウイルスの影響を受け、ショッピングモールなどで空きテナントが増加したことや、わずかなスペースで展開できる手軽さがあると考えられます。また、コロナ禍で移動制限があるなか、ガチャガチャ売り場がエンターテインメントとして楽しめる場所であることを企業がビジネスチャンスと捉え始めたとも言えます。
ガチャガチャが誕生した第1次ブーム、キン肉マン消しゴムやスーパーカー消しゴムなどキャラクターや時代を反映させた商品が彩った第2次ブーム、「コップのフチ子」が大ヒットしたキタンクラブなどによって大人向けのオリジナル商品が脚光を浴びた第3次ブームに次いで、専門店の台頭は第4次ブームと区分けできるほど、大きなインパクトをもたらしました。
ただ、この専門店の出店ラッシュは過熱気味でもあります。ブームが収束したときに店舗の差別化ができないと、どれも同じに映り、客足は離れていく可能性があります。今後は、テナントの更新料を払うだけの売上をコンスタントに上げられるかどうかが課題になってきます。
売上は、販売する商品の魅力が直結します。近年は、漫画「鬼滅の刃」のアニメ化が大ヒットするなどキラーコンテンツがあったため、ガチャガチャ業界も盛り上がっていましたが、鬼滅のようなヒット商品がないと、市場が急速に縮小するのもガチャガチャの歴史を見れば明らかです。例えば、アニメ「妖怪ウォッチ」がブームになった時も、ガチャガチャの需要は急速に伸びましたが、ブームが去ったあとの落ち込みも速かったと記憶しています。
最近はアニメ「呪術廻戦」や「東京卍リベンジャーズ」の人気が高いですが、私の肌感覚だと、鬼滅の刃を超えるようなキラーコンテンツとしては、今はなっていないように感じます。
ただ、専門店が増えていくなかで、もともとガチャガチャが好きな人のみならず、興味がなかった人まで売り場に行く機会が増えたことも事実です。また、商品の7割近くがアニメやマンガのキャラクターといったIP商品が多いなか、専門店が増えたことで残り3割のオリジナル商品からも数多くのヒットが生まれるようになりました。
中小零細メーカーが圧倒的に多いガチャガチャ業界で、クオリアの「ネコのペンおき」シリーズが累計販売数100万個以上になったことは、21年の一番のトピックスです。アニメ「サザエさん」に出てくる猫のタマちゃんをモチーフにしたネコのペンおきは、海外で模倣される商品が販売されるほど影響がありました。
「リアルミニチュア系」「押しボタン系」「ぬいぐるみ系」など、今までオリジナル商品にはなかったジャンルも生まれました。
21年は商品価格の幅も広がりがみられました。1月にバンダイが高価格対応の自動販売機として、2500円までの商品を販売する「プレミアムガシャポン」を展開し、800円、1000円、1500円などの商品も誕生しました。
業界の商品価格は今まで200円が多かったですが、原材料の高騰などの外部環境の変化により、今は300円を中心に、400円、500円の商品も販売されています。
ガチャガチャの魅力は何が出るかわからない「ワクワク」という感情を味わえること。正直言って、商品の当たりやハズレは関係ありません。すべてが当たりであり、ガチャガチャをする空間も含めて価値があります。2022年はどんなガチャガチャが登場するか楽しみです。
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