ネットの話題
「ママの笑顔、そんなに大切ですか?」2児の母がコラムで訴えた理由
広島の〝ワーママ応援本〟炎上の背景とも通じるお話です
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広島の〝ワーママ応援本〟炎上の背景とも通じるお話です
子育ての問題はなぜ、「お母さんの問題」として扱われ、「お母さんのために」解決しようとされがちなのか――。2児の母親の岩城はるみさん(39)が、自身の違和感を地元タウン誌にコラムとして書いたところ、SNSで賛同の声が広まりました。あえて「ママの笑顔、そんなに大切?」と投げかけた理由。そこには、母親に負担が偏る「綱渡りのような」子育ての経験がありました。
奈良のタウン情報をまとめたサイト「ぱ~ぷる」に、こんなコラムが載ったのは11月2日のことでした。「あるあるあるある〜〜」「保育園や行政までがお母さんによびかけお母さん前提で動いてる」といった賛同の声がTwitter上に集まりました。
コラムを執筆した岩城はるみさんは、13歳の長男、10歳の長女、2人の子どもの母親です。夫(43)は会社員です。
岩城さんは元高校教員。数学を教えていました。2人目の出産を機に退職。現在は、ベビーマッサージなどの親子教室を開いています。これまで延べ6千組の親子と関わり、子育ての悩みなども聞いてきました。
高校教員を辞める前、仕事と子育ての両立に悩んでいました。長男が体調を崩し、保育園から「呼び出し」の日々。周囲は気遣ってくれましたが、精神的には追い込まれました。
「治ったと思えば、またすぐに『呼び出し』。同僚に『申し訳ない』という気持ちが募りました。職場にも、保育園にも、みんなに『ごめんなさい』と言っていました」。2人目の子どもの妊娠が分かり、「2人同時に『呼び出し』があったら対応できない、と考えました。綱渡りのような日々がいつまで続くのかも分かりませんでした」。こうしたことも退職を決断させました。
コラムで指摘した「子育てとお母さんが常にセット」だったのは、当時の岩城さん自身でもありました。岩城さんは「母親らしさ」にとらわれていた自身を振り返りながらコラムを執筆しています。
「夫もフォローしてくれましたが、『母親の私がどうにかしないと』という思いがあったのです」。親子教室を開いたのは約10年前。その時は「赤ちゃんとママのための」とうたっていたそうです。
コラムが始まったのは、今年10月。コラムは月2回、更新されます。「ぱ~ぷる」のサイトのほか、アプリでも配信しています。
11月22日に公開されたコラムは、「ママの笑顔、そんなに大切?」でした。
岩城さんは、「社会を変えるのではなく、お母さんを変えることで解決しようとしている」と言います。
「子育ては母親の役割」といった固定的な性別役割分担の意識が残るのはもちろん、岩城さん自身、「ベビーカーを蹴られた」といった相談を絶えず受けることから、子育てには社会的なハードルがまだまだあると感じています。にもかかわらず、「ママの笑顔」を求める風潮は、母親に帳尻合わせを押しつけているように感じています。
このコラムの配信後まもなく、広島県の冊子「働く女性応援よくばりハンドブック」に対し、Twittter上で批判が集まりました。
冊子は、関連する法律や支援制度をまとめたものでした。しかし、女性が仕事と家庭を両立することを「よくばり」と捉えたことや、共に子育てをする夫にも「感謝と配慮」を求めていることなどから、「女性は働くのは『オプション』であって、オプションをあえて選ぶのはよくばりチョイス!という考えが透けてる」などと批判されたのです。
「お母さん祭り」も、「ママの笑顔」も、冊子の炎上も、母親が重荷を負い、解決を母親に「丸投げ」しているようで、根っこは同じ――。岩城さんはそう感じています。
「ジェンダーにまつわる『当たり前』を疑っていくことが、社会を変える一歩につながる。そう思って発信を続けます」
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