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連載

#43 「きょうも回してる?」

ガチャフィギュアの精度こだわるあまり「原型会社作っちゃいました」

異端メーカーの社長、自信と戦略

クオリアが発売した「ねこ薬師如来と十二支ん将 其ノ壱 マスコットフィギュア」より、ねこ薬師如来のフィギュア=いずれも筆者撮影
クオリアが発売した「ねこ薬師如来と十二支ん将 其ノ壱 マスコットフィギュア」より、ねこ薬師如来のフィギュア=いずれも筆者撮影

目次

ガチャガチャメーカーのクオリアと造形作家の三条獅子さんのコラボで誕生した「ほとけものシリーズ」は昨年発売の第1弾から人気になり、9月には「現世にやすらぎを……」とうたった第3弾「ねこ薬師如来と十二支ん将」が登場しました。。三条さんの世界観を忠実に再現し、フィギュアの質を高めた要因の一つが、クオリアの設けた原型をつくる会社です。これまで外注していた部分を自社で担うようになった理由やその効果を、ガチャガチャ評論家のおまつさん(@gashaponmani)が取材しました。
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ガチャガチャ評論家おまつの「きょうも回してる?」

フィギュアの鍵となる原型

ガチャガチャのフィギュアは一般的に、企画が通ると原型制作、成形、塗装の順番で製造していきます。

原型とは、一番最初に作られるフィギュアの見本を指します。この原型をもとに鋳型を作り、同じ形状のフィギュアを生産していきます。

オリジナル商品は、もちろん企画が一番重要ですが、フィギュアの場合は、原型の出来がほぼフィギュアの出来になると言っても過言でないほど、大事なポイントです。

現在、ほとんどのメーカーは原型制作を外注しています。重要な役割を果たす原型だからこそ、企画・開発者は依頼をする際に、企画のイメージや雰囲気などが理想の形状になるよう、正確なディレクションをしなくてはいけません。

原型会社を自社で立ち上げ

イメージ通りでない場合には、予想以上に修正に時間がかかり、コストも膨らむ原型づくり。そんななか、「原型会社を作った方が早い。だから会社を作っちゃいました」と話すのは、オリジナル商品に定評があるメーカーのクオリアです。

クオリアの特徴は何と言っても「スピード感」があること。商品化を決める際に、代表の小川勇矢さんが良いと思ったらすぐに商品化してしまうほどの決断力の早さがあります。今回も、もっと良いものを作りたいという想いから、小川さんならではの発想です。

原型を作る会社名は、江戸時代に活躍した仏師や歌人の円空をオマージュして「Enku」に。Enkuを作ったことで、小川さんは「3Dデータを出力し、形状やサイズ感をすぐに確認、修正ができるようになりました。商品開発のスピードが格段に早くなりました。自分が描く理想の形状を作れるようになってきて楽しいです」と手ごたえを感じています。また、外注費も削減でき、全体的な商品のコストダウンにもつながっているそうです。

私の知る限り、ガチャガチャの商品だけを作っているメーカーのなかで、原型会社を作ったのは、クオリアだけです。中小零細企業が多いメーカーにとって、原型の会社まで新しく作ることは難しい。だからこそ、クオリアらしい決断だと思います。

原型会社「Enku」をつくったクオリアの小川勇矢代表
原型会社「Enku」をつくったクオリアの小川勇矢代表

造形作家とコラボ

この原型会社で初めて作った商品が今回紹介する、ほとけものシリーズの「ねこ薬師如来と十二支ん将 其ノ壱 マスコットフィギュア(以下、ねこ薬師如来)」です。
 
ほとけものシリーズはクオリアと三条獅子さん(@sanjyousisi)がコラボした商品シリーズです。三条獅子さんは、擬人化した動物フィギュアをモチーフに数多くの作品を展開している造形作家です。
「ねこ薬師如来と十二支ん将 其ノ壱 マスコットフィギュア」のラインナップ
「ねこ薬師如来と十二支ん将 其ノ壱 マスコットフィギュア」のラインナップ

2020年1月に第1弾として、猫と釈迦如来を組み合わせた「ねこ如来マスコットフィギュア(以下、ねこ如来)」が発売されました。ねこ如来はすぐに完売し、20年6月の追加生産も即完売してしまうほど、人気商品になりました。そして21年1月に第2弾「ねこ菩薩マスコットフィギュア(以下、ねこ菩薩)」が発売され、ねこ薬師如来がシリーズ第3弾となります。
 
実は第1弾のねこ如来を作るときに、ねこ薬師如来の構想はすでにあったそうです。小川さんと三条獅子さんの間で「ねこ如来がたくさん売れたら、十二支(干支)シリーズをやってみたい」という想いがあり、ねこ如来もヒットし、ねこ菩薩も好調だったため、当初の想い通りに実現しました。
 
これは、三条獅子さんの造形力の高さを小川さんがガチャガチャとして忠実に再現したことと、小川さんの今までの経験値から得たお客さんが喜ぶツボがうまくマッチした結果だと感じました。

「ほとけものシリーズ」の第1弾となった「ねこ如来マスコットフィギュア」
「ほとけものシリーズ」の第1弾となった「ねこ如来マスコットフィギュア」

流麗な彩色、緻密な造形

ねこ薬師如来の特徴は、オリジナルだからこそできた十二支をモデルにした個性豊かなキャラクターをはじめ、流麗な彩色があることです。しかも「これが400円!」と驚愕してしまうほどの造形の緻密さは、目の肥えたファンでも納得の仕上がりになっています。

さらに手に取ってもらえればわかりますが、「これがガチャガチャ?」というボリューム感も見どころです。

「ねこ薬師如来と十二支ん将 其ノ壱」より戌神将のフィギュア
「ねこ薬師如来と十二支ん将 其ノ壱」より戌神将のフィギュア

「普通に作ったら、500円以上かかってしまいます」と話す小川さん。私が「500円かかったなら、1000円で販売して利益をとりますよね?」と尋ねると、「僕らのなかでは、400円のものを300円で売りたい。500円のものを400円で売りたい。そこは企業努力でカバーしたい。原型会社を作ったからこそ、出来ること。この商品はクオリアしかできないです」と笑って話してくれました。

一見、採算度外視のようにも見えますが、小川さんは「400円にしても、1回目の受注で収支はとんとんで、そして再販がかかり2回目の受注で数が増えたら利益が出るイメージがあります」と確固たる自信と戦略があり、実際、販売したら戦略通りになりました。それは「売れそうだからという商品を作るよりも、良いものを作りたい。お客様の期待を良い意味で裏切りたい」というクオリアのものづくりが伝わった結果だからだと思います。

ねこ薬師如来は、原型会社を作ったことで、ディレクションの精度が高まった結果、誕生した商品です。ねこ薬師如来は其ノ壱となっており、其ノ参まで発売する予定です。全部集めると十二支ん将が集結します。

其ノ弐は来年の発売に向けて動いており、制作状況をチラッと見せてもらいましたが、其ノ壱を超えるような驚き満載のクオリティです。発売まで待っていても損はないほどの仕上がり。乞うご期待です。

     ◇

「ねこ薬師如来と十二支ん将 其ノ壱 マスコットフィギュア」は、ねこ薬師如来、子神将、寅神将、亥神将、戌神将の全5種類。1回400円。

ガチャガチャ評論家おまつの「きょうも回してる?」
この連載は、20年以上業界を取材しトレンドをチェックしているおまつさんが注目するガチャガチャを毎週金曜日(原則)に紹介していきます。

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ガチャガチャ評論家・おまつ(@gashaponmani
ガチャガチャ業界や商品などをSNSで発信中。著書に「ガチャポンのアイディアノートーなんでこれつくったの?ー」(オークラ出版)。テレビやラジオなどのメディアへの出演や素材提供も多数ある。
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