連載
#84 コミチ漫画コラボ
「脳みその外側が少なくなった」2人が決めた〝我が家のルール〟
ふたりの大切な「約束事」をマンガに
私たちには新鮮な体験が足りていない――。そんな危機感から、ともに暮らす二人は毎週日曜日に「何か」を贈り合う「我が家のルール」を決めました。マンガの作者のヘケメデさんは、ときどき友人と「新鮮な体験」を贈り合ってきたといいます。「特に今はコロナ禍で、なかなか偶然の出会いが少ないですよね。こんなルールがあったら素敵だなぁと描きました」と話します。マンガに込めた思いを聞きました。
マンガに登場する老いたふたりは、「自分の脳みその外側のものがうんと少なくなった」「いかに余生といえどよくない」と考え、日曜日に「何か」を贈り合うルールを決めました。
たとえば、ある日曜日、贈られたのは「エンデ」と「入浴剤」。それぞれが、知らない、あるいは忘れているであろう体験を提供しあうのがルールです。
作者のヘケメデさんは大学時代から、似たようなことを友人としていたといいます。
「たとえば予算と日程だけを伝えて旅行を組んでもらうとか、そんな『新鮮な体験のプレゼント』を仲のいい友人にお願いしていました」
ある友人は、旅行の予算のうち交通費を含めたまるごとを「宿泊費」に割り振って、都内の高級ホテルに予約をとったといいます。
「自分で泊まろうと思わなかった場所。これまで泊まったホテルとはロビーも部屋も全く違って華やかで別世界でした」
お願いするのは決まって、日常生活のもろもろがうまくいって1カ月先の予定が見通せる、「停滞しているな」と感じるとき。「予定がうまくいっていると、せっかく楽しい予定さえも『予想の範囲内』になってしまうような思いがあったんです」と振り返ります。
「自分の興味のある範疇を広げても、どうしても知らないジャンルのことって学ぶことも知ることもできない。だからそんな時は『あなたのオススメなら絶対に読む・トライする』という冒険をします」
特に、この2年間はできるだけ外出を控えた生活で、「新しい驚き」に出会うチャンスが減っています。
ヘケメデさんは「今はもちろん、コロナ禍で日々の『安全』が優先されていると思います」としながらも、「知らない物を自分の中に飛び込ませるって難しいですよね。さらに近しい人にそれを贈るのであれば、『相手はこれに驚くだろうな』という想像力も必要です。相手のことを考える時間も増えるし、将来的に夫とやれたらやりたいです」と話します。
小さい頃から絵を描くのは好きでしたが、本格的にマンガを描き始めたのはコロナ禍になってから。ふだんは整体師として働きながら、隙間時間にiPadでマンガを描いています。
昔から自身のそばにいる河童のキャラクター「かぱちん」を世に出したいという気持ちからマンガを発信方法に選んだといいます。
#コルクラボマンガ専科 専科生さんたちがなさっている課題を、外野参加してもいいという企画を聞きつけて、参加してみました〜
— ヘケメデ (@hekemede) November 11, 2021
続き描くかはリアクション次第でふわっと決めます☺︎#無人島1日目 #漫画が読めるハッシュタグ #漫画 pic.twitter.com/vM5Takz7n9
「かぱちん」のキャラクターをもっと描きたいと、今年からは4コマだけでなくストーリー漫画にも幅を広げ、関係のないテーマのマンガにも「隠れかぱちん」を忍ばせているそうです。
ほかにも、「自分が100日後に死ぬとしたらどんな生活を送るのか?」を現実的に想像して描いた連載など、独特の世界観をつくりあげているヘケメデさん。
物心ついた頃から「死」についてよく考えていたといいますが、「死ぬのが怖いというよりも、締め切りが分かっていたら、自分の選択肢がもっとシンプルになるのにな……という気持ちです」と笑います。
https://t.co/cGiLKvCycI#コミチ#漫画が読めるハッシュタグ #漫画
— ヘケメデ (@hekemede) November 5, 2021
『LOST』最新話更新いたしました。
「『死ぬまでにやりたいこと』を考えるよりは、自分が死んだあとの後始末が気になるタイプなんですよね。とはいえ、死は『死に方』を選んでくれるわけでもない……。そんな悩みを、数は少ないかもしれないけれど、自分と似た人はいるだろうという気持ちで描いています」
今回の応募作は、ふたりが暮らす様子を描いた連載準備を進めていて、「ふたりならどんなルールを作るかなと考えたとき、『これはしないで』という禁止よりも、『これをやろう』という面白い約束事を思いつきそうだな」と着想したといいます。
「『同じ約束をやってみたい』という感想もいただきました。初めて会った人に『面白いなと思ったマンガや映画を聞いて絶対見てみる』など、やってみたらいいと思いますとお返事しています。ちょっと予測不能のことがないと、大人の2~3年なんてあっという間に過ぎてしまうんですよね」と笑います。
「絶対に変化しなきゃいけないとも思いませんが、自分の予想できない外の出来事が起こるのって楽しいこともあります。できる限り新しいものを入れて、小さいびっくりはしていきたいなと思っています」
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