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連載

#35 「きょうも回してる?」

「この先、炎上あり」「エゴサ禁止」工事の看板、ユニークなガチャに

「基本的にお客様の声はすぐ取り入れます」

工事現場の看板に似たエールの「デスクトップ看板」。文言は「この先、炎上あり」「エゴサ禁止」などユニークなものも=いずれも筆者撮影
工事現場の看板に似たエールの「デスクトップ看板」。文言は「この先、炎上あり」「エゴサ禁止」などユニークなものも=いずれも筆者撮影

目次

一見、街中で見かける工事現場の看板ですが、「この先、炎上あり」「エゴサ禁止」といったユニークな文言が含まれたガチャガチャがこの夏登場しました。ガチャガチャ評論家のおまつさん(@gashaponmani)が取材すると、「ばかばかしいことを真面目に」考えながら、時代の空気を表現するメーカーの姿がありました。
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ガチャガチャ評論家おまつの「きょうも回してる?」

オリジナルの先駆者「コップのフチ子」

ガチャガチャは、IP(知的財産)と言われるマンガやアニメ、特撮などのキャラクターとオリジナルの2種類に分かれており、市場の7割近くがキャラクター商品で占めています。

オリジナル商品の幅を広げたのが、大人向けオリジナル商品を手掛けるキタンクラブの存在です。2012年に発売された「―コップのフチに舞い降りた天使―コップのフチ子」を機に、業界ではオリジナル商品の認知度が高まり、メーカー各社が力を入れ始めるようになりました。

ガチャガチャの特徴は何と言っても、プラモデルなどの玩具に比べて低価格で気軽に買えることであり、メーカーの企画・開発担当者やクリエイターにとっては、カプセルのサイズと製作コストの条件を満たせば、自分の企画に合わせた商品を作ることができることです。

玩具というプロダクトのなかで、作り手にとってガチャガチャは表現の自由度が圧倒的に高いと言えるのではないでしょうか。なぜなら、オリジナル商品には「何が売れるかわからない」という要素があり、低価格で手軽に買えるからこそ、まずは既成概念にとらわれない作り手の想いがなければ、商品の良さは伝わらないからです。

オリジナル商品の先駆者となった「コップのフチ子」
オリジナル商品の先駆者となった「コップのフチ子」

時代の空気を反映

アミューズメント系メーカー「エール」は、オリジナル商品で勝負しています。エールの特徴は、動物系フィギュアをはじめ、ぬいぐるみ、ギミックもの、自社クリエイターの作品など、バラエティーに富んでいることです。

毎月約20~30アイテムを発売していますが、「アイテム数が多い分、似たような商品を出してしまうと売れません。お互いにかぶらないようにラインナップには気を配り、考えて抜いて決めています」と話してくれたのは、エールのカプセルトイ事業部の森国大輔さんです。

さらに、このコラムでも紹介しましたが、生産から販売まで一貫して内製化できるため、低価格で商品開発できることがエールの強みになっています。またオリジナル商品の特徴のひとつに、その時代の空気感や人の感情を表現した商品があります。

私が驚いたガチャガチャのひとつが、昨年7月に発売した「墓~供養~」です。日常生活で無くなってしまっては困る「日曜日」、「有給休暇」「センス」「HDD」などを供養するシュールなガチャガチャでした。withnewsでも紹介されていましたが、初めて売り場で見たときの驚きと面白さは今でも覚えており、たくさん買ってしまったガチャガチャのひとつです。

ガチャガチャを墓にする発想は今までありませんでした。誰が買うかわからないけど、面白く、時代の空気感や人の感情を表現したガチャガチャになっています。

商品を作るうえで、森国さんは「たわいもないこと、ばかばかしいことを真面目に考えることが大事です」と話し、良い企画について尋ねると、「まだ世に出ていない商品企画や、今までの経験からこれは売れるなというアンテナに引っかかった企画です」と言います。今思うと、まさに「墓~供養~」も、ばかばかしいことを真面目に追求したガチャガチャでした。

昨年7月に発売した「墓~供養~」
昨年7月に発売した「墓~供養~」

「エゴサ禁止」「自宅警備中」の看板

今回紹介するのは、7月中旬に発売された「デスクトップ看板」です。工事現場でよく見かける看板をモチーフに、貼り替えできるマグネットが2枚ついています。

マグネットには「エゴサ禁止」「自宅警備中」「この先、炎上あり」など時代を反映した言葉が書かれており、ネーミングセンスが抜群に良いのです。

工事現場でよく見かける看板をモチーフに、貼り替えできるマグネットが2枚ついた「デスクトップ看板」
工事現場でよく見かける看板をモチーフに、貼り替えできるマグネットが2枚ついた「デスクトップ看板」

このネーミングを決めるために森国さんはマーケティングを重要視し、100種類以上の言葉のなかから決めたそうです。

さらに、看板とマグネット2枚含めて1個200円というのは、十分に低価格で面白いと思うのですが、エールは違いました。看板はホワイトボード仕様にして、ペンとクリーナーも付けたのです。

看板のマグネットをはがすとホワイトボードになり、ペンで書き込むこともできる
看板のマグネットをはがすとホワイトボードになり、ペンで書き込むこともできる

これには、「墓~供養~」を発売した際に、「お墓の文字を自由に書きたい」という問い合わせが多くあり、そのニーズを反映して、デスクトップ看板は自由に書けるように、ホワイトボード仕様にしました。森国さんは「基本的にお客様の声をすぐに取り入れ反映させます。この柔軟性がエールの良いとこころです」と笑って話してくれました。

低価格を強みにしているエールですが、「ボリューム感」も大事にしています。森国さんは「お客様がカプセルを開けたときに、商品の大きさや『200円だけとこんなに入っている』というお得感などを味わってもらいからです」と想いを語ってくれました。

デスクトップ看板はマグネットを付けて相手に自分の状態を伝えたり、フィギュアと絡めて楽しんだりすることもできます。さらに、「只今、トイレ中」や「外出中」など看板に自由に書けるため自分専用としても楽しめ、種類を集めればいろいろと工夫ができるガチャガチャです。

ホワイトボード仕様の看板はペンで書き込むこともできる
ホワイトボード仕様の看板はペンで書き込むこともできる

エールの商品について、森国さんは「お客様がカプセルを開けた時に、がっかりされるのが一番ショックです。買っていただいたなら喜んでもらいたい。エールの商品はボリュームがあって、安いよねって言っていただけたら一番うれしいです」と話してくれ、消費者目線を大事にする姿勢が込められていました。

     ◇

デスクトップ看板はブルー、ホワイト、ブラック、イエロー、レッドの5種類。1回200円。

ガチャガチャ評論家おまつの「きょうも回してる?」
この連載は、20年以上業界を取材しトレンドをチェックしているおまつさんが注目するガチャガチャを毎週金曜日(原則)に紹介していきます。

     ◇
ガチャガチャ評論家・おまつ(@gashaponmani
ガチャガチャ業界や商品などをSNSで発信中。著書に「ガチャポンのアイディアノートーなんでこれつくったの?ー」(オークラ出版)。テレビやラジオなどのメディアへの出演や素材提供も多数ある。

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