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「政治に殺される」新聞広告に〝かつてない賛否〟宝島社の受け止めは

「より深く考えるきっかけに」

新型コロナウイルスにまつわる「緊急事態」に、警鐘を鳴らす新聞広告です
新型コロナウイルスにまつわる「緊急事態」に、警鐘を鳴らす新聞広告です 出典: 宝島社提供

目次

新型コロナウイルスの流行が収まらない中、新聞に掲載された企業広告が、賛否両論を巻き起こしています。あえて強い語調のコピーを配し、感染症に向き合う、為政者の姿勢を批判する内容です。「市民の努力にも限界がある」と語る、制作元の出版社に話を聞きました。(withnews編集部・神戸郁人)

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「この一年は、いったい何だったのか」

今月11日、朝日新聞・読売新聞・日本経済新聞の全国版朝刊に、見開きの企業広告が掲載されました。

模造型の武器を構える、体操服姿の少女たちが写った青写真。その中心に、CGで構成された、新型コロナウイルスのイメージ画像が配されています。

そして画面の右上方に、赤字で刻まれた「緊急事態」の文字が見えます。更に、左上方に目を移すと、こんなコピーが目に入るのです。

ワクチンもない。クスリもない。
タケヤリで戦えというのか。
このままじゃ、政治に殺される。

私たちは騙(だま)されている。
この一年は、いったい何だったのか。
いつまで自粛をすればいいのか。
我慢大会は、もう終わりにして欲しい。
ごちゃごちゃ言い訳するな。
無理を強いるだけで、なにひとつ変わらないではないか。
今こそ、怒りの声をあげるべきだ。
宝島社の新聞広告
11日付けの各紙朝刊に掲載された、宝島社の企業広告
11日付けの各紙朝刊に掲載された、宝島社の企業広告 出典: 宝島社提供

自粛ばかり強いられる現状に警鐘

発表したのは、東京都千代田区の出版社・宝島社です。1998年から、商品では伝えきれない「企業として社会に伝えたいメッセージ」をコンセプトに、新聞向け企業広告を手掛けてきました。

同社は今年の1月にも、感染症対策を題材とした新聞広告を公開しました。「ねちょりんこ、ダメ」との造語でソーシャルディスタンスを表現したり、机をぞうきんで拭く少女の写真に、「言われなくてもやってます」というメッセージを添えたりするデザインです。

ユーモラスに世相を風刺する二枚と対照的に、今回の作品では、為政者に対する率直な怒りが表明されています。

この差異について尋ねると、同社は「今年1月の広告を包括する意図はない。あくまで『今このタイミングで発信すべきメッセージ』と考えた」と回答。その上で、4月25日に3回目となる緊急事態宣言が発出されたことに触れ、次のように制作経緯を説明しました。

「新型コロナウイルスの蔓延(まんえん)から既に1年以上が経過しました。市民の努力にも限界があります」

「ワクチン接種の遅れ、医療従事者の負荷軽減、水際対策の不備、休業補償費不足などを尻目に、またも緊急事態宣言が延長されました。科学的根拠や安全保障に基づく戦略説明に乏しく、自粛要請を強いるばかりに映る政策に、警鐘を鳴らす必要があると感じたためです」

「ねちょりんこ、ダメ」という造語入りの新聞広告。右下に「濃厚接触による感染拡大は、個人の責任だそうです」の一文が見える。
「ねちょりんこ、ダメ」という造語入りの新聞広告。右下に「濃厚接触による感染拡大は、個人の責任だそうです」の一文が見える。 出典: 宝島社提供

「SNS上で、過去にないほどの反響」

同社によると、今回の広告について協議を始めたのは、4月上旬頃のこと。国産ワクチンの開発の遅れを始め、ウイルス収束に向けた対応が進まないまま、自粛要請が繰り返される現状への疑問がきっかけでした。

「経済への影響のみならず、国民の疲弊感やいらだちは募るばかりです。『先の大戦時に、非科学的な精神論で国難を突破しようとした歴史を繰り返しているのでは?』という声をもとに、企画を立ち上げました」

あえて語感の強い文言を並べたのは、「既に対策待ったなし」と思われる、ウイルスの流行状況を受けたものです。「緊急事態」の表記にも、危機感を込めたといいます。

また画面中央に、ピンク色のウイルスの画像を配したデザインについて、「日の丸を連想させる」といった指摘も上がりました。この点をめぐって、同社は「新型コロナウイルスを突く、といった紙面デザインの構成を優先したものです」としています。

広告を見た人々からは、「よく言ってくれた」「耐え続ける国民も、現状に責任を負っている」などの感想が寄せられました。反面で、「政治に責任転嫁するな」といった批判も少なくありません。

一連の反応に関し、同社はこうコメントしました。

「いつも多くのご意見をいただきますが、特にSNS上では過去にないほどの反響でした。広告を目にした方々に、何かひっかかりがあり、考えていただく機会になればと考えています」

「とりわけ今回は、緊急事態に気づいていただきたいとの企画意図があったため、お一人おひとりにとっての気づきや、より深く考えるきっかけになりますと幸いです」

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