連載
#18 「きょうも回してる?」
元ネタ知っている人は必ず欲しくなる…「座る変な猫」ガチャガチャ化
あまりにもシュールすぎて…
ヒットするオリジナル商品には、「コミュニケーションツールとして活用できること」と「被写体が映えること」の2つの要素のどちらかが必ず入っているのが最近のガチャガチャ市場の傾向です。
この2つの要素が最大限に活かされた商品が、前々回このコラムで紹介したキタンクラブの大ヒット商品「コップのフチ子(以下、フチ子)」です。フチ子はコミュニケーションツールとして活用できることはもちろんですが、映える要素を強く意識して作られています。フチ子を販売する2012年頃のSNSの状況は、会社で働く女性が食事や料理など写真に撮ってSNSであげることが多かったようです。
そこで、フチ子の原作者のタナカカツキさんは、SNSで赤の他人から見たらつまらない写真を何とかして面白くできないかというアイデアを、フチ子に込めました。その結果、フチ子がヒット商品となり、ありきたりだった食事や料理の写真にフチ子を加えることによって、映える面白味が増していったのです。
そのため、キタンクラブのオリジナル商品は、つい写真を撮りたくなるような「映え」を意識した商品が多いです。
最近では、キタンクラブから発売している「座る」シリーズは、日常的な風景が被写体として、より「映える」空間を演出した商品になっています。
座るシリーズの第1弾「座る猫」は、ちょこんと座る姿がかわいいとSNSで人気となりました。しかも、この座るシリーズはものすごい勢いでシリーズ化していきます。第1弾の猫から始まり、犬、蛙、熊、狐、兎、ヤドクガエル、狸などを展開し、しまいには土偶と埴輪まで座るシリーズとして商品化します。その結果、座るシリーズ全体で100万個以上のヒット商品となりました。
座るシリーズのきっかけについて「最初のアイデアは、猫が人間のように座っている画像を見る機会があり、『これをフィギュアにしたら面白いのでは?』というところからスタートしました」と語る開発担当者Tさん。そして「第1弾の猫のモチーフの評判が良かったため、その後、他の動物でシリーズ化が進みました」と話します。
確かに動物の商品は他社のメーカーでもたくさん商品化しています。ただ座るシリーズは、被写体として「映える」ことはもちろん、キタンクラブのものづくりへのこだわり、たとえば蛙なら特徴的なふっくらとしたお腹や手足の細部までとことんこだわり、忠実に再現してあるところが他社との差別化になっています。
この座るシリーズの最新作が、今回紹介する「座る変な猫」です。
「座る変な猫」のモチーフは、実際にSNSで注目を浴びた不思議な猫たちでした。この企画が通るのは、キタンクラブが従業員の企画を大事にしている社内の空気感があるからこそだと感じます。そして、いつも通りにクオリティについては一切手を抜いていないため、一般的な動物のフィギュアとは一線を画す猫になっています。元ネタを知っている人は必ず欲しくなるそうです。
また、この商品の宣伝はSNSを活用しています。
10年前でしたら、メーカーの新商品の営業資料が問屋さんに渡り、その中から商品を問屋さんが決め、初めて売り場でお客さんが商品を目にする流れが一般的でした。
しかし、SNSが広まってきてからメーカーの宣伝の手法も変化してきました。
製造業では一般的にありえない手法ですが、ガチャガチャメーカーは商品が発売する前に、SNSで製作工程をチラ見せし宣伝するようになったのです。先に商品の魅力をSNSで伝えれば、お客さんの購入する確率は高くなります。オリジナル商品は、売り場でいかに目に留まるかが重要になり、そこで目に留まらなければ、新しい商品へと変わってしまうからです。
座る変な猫も販売する前から、商品のチラ見せをSNSで挙げることで注目を集めていました。
今後の座るシリーズについて、開発担当Tさんは「スタートからしばらくは動物をモチーフに絞って商品化していましたが、『土偶と埴輪』あたりから始まった飛び道具的展開や、キャラクターモチーフでの商品化など、より多方向でのシリーズ化を目論んでいます」と期待を膨らませます。
今回取材にあたり、広報の斎藤雨汐さんは「当社から発売している『まわる!コーヒーカップ』と座るシリーズの相性が抜群です」と座るシリーズの遊び方を教えてくれましたが、あまりにもシュールすぎて笑ってしまいました。
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座る変な猫は、「二本歩行猫」、「たくましい猫」、「マスク猫」、「食パン猫」、「長い猫」の5種類。1回300円。
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