連載
#11 「きょうも回してる?」
「疲れきったハト」ガチャガチャに 商品化決意した忘れられない光景
仕事で企画を考える上で、インターネットの中だけで考えていませんか。もちろんリサーチやマーケティングを駆使することは重要ですが、リアルな日常から企画のヒントを得られることも多いのも事実です。
ガチャガチャのオリジナルを作る人は、自分の感性や嗜好を掘り下げるめに、24時間片時も欠かさず、何か面白い企画はないかとを考えています。
なぜなら、毎月60タイトル以上の新商品が発売されるなか、宣伝も予算的にできないオリジナルは、売り場が勝負の場。そこでお客様の目に留まらなければ、日の目を見ないまま商品は消えていきます。だからこそ、感覚を研ぎ澄まされた企画力は「絶対」です。さらに、商品タイトルやラインナップのバランスもカギになります。
キャラクター商品はタイトルや登場人物も決まっているので、オリジナルに比べると方向性が見えます。
しかし、オリジナルはゼロからの企画です。タイトルやラインナップのバランス次第で再販できるか、それとも売り場から無くなってしまうかが決まるので、メーカーは必死の想いで商品を作っています。
日常から企画のヒントが生まれ、商品タイトルとラインナップのバランスの重要性を教えてくれたのが、東京のJR大塚駅近くに拠点を構える株式会社Qualia(以下、クオリア)代表の小川勇矢さん。
小川さんは「クオリアでしかできないアイディアで勝負したい」という想いで、五感を研ぎ澄まし、様々な企画のヒントを拾っています。
今回紹介するのは、小川さんが日常からアイディアを生み出し商品化になった「つかれきったハト マスコットフィギュア」。
商品化のきっかけについて、「大塚駅に疲れたおじさんが座っていたんです。その横にハトがいたんですよ。そのハトも疲れているように見えたんですね。その感じがいいなと思った」と語る小川さんはそのハトを見た瞬間、商品化に動き出しました。
どういうタイトルで、どういうラインナップにすれば面白くなるのかが瞬時に見えたそうです。
確かに今までハトの商品はありましたが、「疲れた」ハトを商品化するというアイディアは、インターネット上では見つかりません。まさに、日常から常に考えている小川さんだからこそ生まれたアイデアになりました。
見どころは、脱力感溢れるハトの疲れ具合のポージングとクタっとした表情などの造形です。
初めて試作品のハトの造形を目にした時に、どうしてもハトの疲れた感がでていなく、改良に苦労したそうです。ハトの疲れた感を出すために、ハトを研究し、なんとハトの死体の様子まで知り尽くしてできあがったのが、「つかれきったハト」。小川さんは「ハトの死体の様子まで、とことん調べるくらい振り切らないと、お客様に伝わらない」と意気込みを語ります。
また全種類を揃えると、ハトがだんだん疲れていく様子が楽しめるというラインナップのバランスが考えられており、「誰もそこまで期待していないよ」と思われるほど細部まで表現しているところがすごいのです。
そして、一般の人は「そこまでする?」と思うかもしれませんが、商品タイトルにもこだわりが。
小川さんは「『つかれたハト』ではダメなんでよね。『つかれきったハト』の方がニュアンスが伝わる」と話し、お客様をタイトルで引きつけるぞいう意気込みと、 魅力的な見た目を追求する熱量が伝わってきます。
ちなみにこのハトですが、手に取った瞬間「でかい」と思ってしまうほどのボリューム感があります。お客様がカプセルを開けたときの驚きを味わって欲しいというのがその理由だそうです。
一般的にオリジナルを販売する際に、共通して言えるのが「この商品は誰が買うのか」と言うこと。オリジナルは万人受けをするようなものではありません。作り手の感性や嗜好が反映された商品がお客様の心に響くかにかかっています。
この商品に関してはそう、今読んでこの商品を面白いと思ったあなたです。あなたの心に少しでもハトがひっかかったら、ぜひ売り場でガチャガチャを回しに行ってください。ハトがあなたを待っています。
ただ残念ながら、昨年販売を開始してから受注数量はあまり多くないようです。そのため、このハトを見つけるのは少し難しいかも知れません。
ただ、小川さんは「たとえ数量が少なくてもバズれば再販する。売れなくても『クオリアが面白いものを作っている』とお客様が思ってくれればいい」と諦めません。
なんと、疲れきったハトの第2弾が現在制作進行中。これだから、ガチャガチャは面白い。
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「つかれきったハト マスコットフィギュア」のラインナップは、「つかれたハト」、「くたくたに疲れたハト」、「つかれきったハト」、「へとへとにつかれたハト」、「つかれたはてたハト」の全5種類。価格は1回300円。
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